表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/41

005:旅立ち

 昨日は酒場でエリスに会わなかった。俺は今日も早起きして浜辺を散歩している。今日は日の出を拝めそうだ。


 広場のベンチに座りパンを食べる。

「今日は次の街だか村に移動するけど遠いのか?」

「ハイラルまでは途中で1泊。野宿かのう」

「そこそこの距離か。食材や調味料を買わないと野宿は難しいな。エリスは野宿でも大丈夫なのかなぁ」

 エリスは野宿でも良いのか。そして料理はできるのだろうか。ラノベ展開だと一緒に旅する相方は大概、料理ができない、出来ても不味いのが定番だけどな。俺は1人暮らしが長かったから、煮物は無理だが炒め物は、そこそこ食えるものは作れる。


 ここで・・・俺はふと思い出す。

「なぁ、クロスケ。何故、俺を転生させた?何かやらせたい事があるんだろ」

「・・・察しがいいな。お主を転生させたのは偶然じゃ。お主が死ぬ場面にワレが偶々《たまたま》居合わせた。死んで直ぐの魂は転生させやすい。だから声を掛けた。お主が転生するか、しないかは5分5分じゃった」

「つうことは・・・俺じゃなくても良かったってことか」

「そういう事じゃな。ただ、お主はあのままであれば地縛霊としてあの場に縛り付けられ成仏は出来んかったじゃろ。して、やらせたい事じゃが・・・お主にはワレに呪いを掛けこのような姿に変えた魔女、ベルフィーラを倒してもらいたい。ベルフィーラが死ねば、ワレは元の姿に戻れるはずじゃ」

「魔女ねぇ・・・そいつは強いんだろ」

「強い。今のお主では無理じゃ。少なくとも闘技祭で優勝できるだけの実力は欲しい」

「んじゃ・・・俺じゃなくて、闘技祭の優勝者に倒して貰えばいいんじゃね?」

「あぁ。それは既に試した。こちらの世界の者では魔女は倒せん。魔女より強くても無理じゃ。だから転生者を・・・この世界と関係のない者を選んだ」

「ふーーーん。まぁ良いけど。俺は元の世界じゃ死んじまったから、第2の人生で、ここで生きるのも悪くないと思っている」

「では、倒してくれるか?」

「出来るかは約束できないけど、闘技祭には興味があるからなぁ。考えておく。クロスケの元ってなんだったの」

「・・・今は内緒じゃ」

「あっそ・・・」

 俺の使命は魔女を倒すことのようだ。強い魔女ねぇ。どちらにしても俺の今の実力じゃ無理なんだよな。取りあえずの目標は闘技祭の優勝かな。


 そんな話をしているとエリスが広場に入って来た。俺は右手を上げて合図する。

「おはようごいます。ボンさん」

「あぁ。おはよう」

 エリスは旅支度で右手に杖を持ち、大きな鞄を背負っていた。エリスは鞄を下ろしベンチに腰掛けた。

「今日はハイラル?に向かうが、途中で野宿になるようなんだが、エリスは野宿は大丈夫なのか?」

「はい。大丈夫です。ここに来るのにも野宿をしながら来ましたから」

「そうか。料理は?」

「鞄に料理道具が一式入っていますので大丈夫です。あぁ、でも、ボンさんの分を買って行かないとですね」

「自分の分は買うよ。何が必要か言ってくれ。金はあるから。あーと、俺の相棒を紹介するよ。クロスケ」

「相棒?」

 クロスケは俺の右肩の上に姿を現した。いつもは俺以外には見えないようにしているらしい。エリスは俺の右肩を見つめ、口を開けて固まったようだ。

「エリス・・・」

 俺はエリスの目の前で手を振り、肩を揺すった。この世界じゃ『セクハラだ!』とか言わないだろうと思う。エリスが返って来たようだ。

「な、な、な、何ですか?これ?」

「声がでけぇよ。静かに。俺ら以外には見えないはずなんだから」

「す、す、すいません。驚きました。精霊ですか?」

「精霊?知らん。クロスケって言うんだ。よろしく頼む」

「お主は・・・そのような紹介があるか!ワレは黒の精霊。名前は無いがこ奴はクロスケと呼んでおる。お主も好きに呼べばよい」

「えーーー喋った!・・・エリスティナ・ホランです。よろしくお願いします」

「エリス。気をつかう必要なねぇぞ。俺もクロスケも、いい加減な性格だから何も気にしねぇからな。あと基本的にこいつは出てこねぇから、用がある時は呼んでくれ」

「は、はい」


 俺たちは雑貨商で必要なものを買い込んで街道を歩き始めた。歩くだけで特にすることはない。俺はエリスと会話することにした。

「エリスは誰か探してるって言ってたな」

「はい。父の・・・父は亡くなったんですが、父の錬金術の師匠を探しているんです」

「探してる?」

「はい。旅をしている錬金術師みたいでして。父も偶々、オルデラ村・・・私の生まれた村です。で、その方を見つけて滞在する場所を提供するから教えてくれと頼み込んで弟子にしてもらったようです。私の生まれる前なので父に聞いただけですけどね。それで、その方は2年ぐらいオルデラで過して父に錬金術を教え旅だったそうです。父は特級錬金術師になるのに研鑽していたんですが、魔物に襲われて亡くなりました。私は父に付いて錬金術を学んで上級になりました。父は死ぬ間際に師匠の話をして私に『探し出して弟子になれ』と言い残したんです。それで私は旅にでる決心をしました」

「ふーーーん。いろいろあんだな。その師匠はどこにいるのか分かってんのか?」

「いえ。分かりません。旅を続けているのかも分かりません。名前はアラン・ドーソンと言うらしいんですけどね」

「中々、探し出すのは難しそうだけど、見つかるまで付き合うよ。俺も修行して強くなんなきゃだしな」

「ボンさんは何を目指してるんですか?」

「ん・・・ん。大陸最強かな・・・」

「最強ですか?昨年の闘技祭ではボリス何とかって方が優勝したみたいですね」

「詳しいな・・・」

「えぇ。娯楽の無い村だったので酒場に瓦版が張り出されるんですよ。どこの街で何とか、村で何があったとか。年に1回の闘技祭ですからね。盛り上がりますよ」

 何年か後には俺の名前も瓦版に載るのかなぁと漠然と思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ