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003:ゴブリン

 港の倉庫で目を覚ました。港の朝は早い。倉庫を出て、まだ薄暗い浜辺を歩いた。

「あぁ、眠い・・・まだ日の出前じゃねぇかよ」

 こんな時間に散歩するのは何時いつぶりだろうか。学生時代の朝帰り以来かもしれない。

 水平線から太陽が顔を覗かせた。ゆっくりと日の光が海から浜辺へと迫ってくる。何だかとても感動的だ。俺は思わず手を合わせ『今日も一日、死にませんように』と祈った。


 散歩を終え、広場のベンチで昨日買っておいたパンと水という朝食を済ませた。

「今日の予定は?」

「今日はゴブリンと城跡に居る兵隊崩れの盗賊退治じゃな」

「ゴブリンか・・・この村にはいつまで居るの?」

「そうじゃな。レベル20を超えるまでじゃな。2日くらいじゃろ。頑張れば今日超えるかも知れんな」

「今、レベル13だから頑張ってみるか・・・」


 俺たちは村を出てゴブリンの生息する草原を目指し山の方へ歩いて行く。道は獣道よりは広いが田舎の畦道あぜみちぐらいだ。所々に水たまりや穴があって歩きにくい。

「そうじゃ。お主にプレゼントじゃ」

 クロスケは何処からか巻物を取り出し渡して来た。

「何の巻物だよ?」

「召喚ペットのスクロールじゃ。召喚すると剥ぎ取りをしてくれる便利なペットじゃ。エサは必要じゃがな」

 俺はスクロールを開いて魔力を込めてみた。スクロールが淡く光り、足元にネコが現れた。

「成功じゃな。取りあえず名前を付けるのじゃ」

「名前か・・・じゃ、タマで」

「安易な名前じゃな。魚を咥えて逃げるドラ猫のようじゃな」

「何で、んな事知ってんだよ」

 この辺がクロスケの不思議な所だ。こっちの住人のはずなのに俺の元世界の事も知っている。


 草原になる手前の木の陰からゴブリンの様子を窺う。

「ゴブリンの数が多いな。囲まれたら俺、ダメなんじゃね?」

「ゴブリンはそれ程、強くはない。お主のレベルなら大丈夫じゃ。時々、デカいのがいるじゃろ。あいつは強いから全力で行け」

 俺は骨武器を構え、木の影から飛び出し、ゴブリンの集団に突撃していった。

「オラオラオラァ!!!」

 俺は骨武器を振り回す。まぁ武器の型もスキルも何もない。ただ振り回す。それでもゴブリンに当たれば倒れる。これは楽だ。ただ強いゴブリンは避けるし武器で防御する。くぅ、小癪な。

 それでも俺は強くなるために戦い続ける。同じルートを幾度も周り、再生した端から倒していく。2時間ぐらい経っただろうか。少し疲れてきた。

 俺は最初に隠れていた木の陰まで後退した。

「ふぅーーー」

「随分と頑張るな。戦闘も様になってきた。この調子なら闘技祭にも出れそうじゃな」

「闘技祭?」

「年に1度開催される大陸一闘技祭。簡単に言えば誰が1番強いか決める大会じゃ。お主の今の力量だと初心者の部だがな。強い奴の戦い方を見るのも勉強じゃよ」

「いつ開催されるんだ?」

「来月末にカルオローラの闘技場で開催される。あちこちで修行しつつカルオローラに向かうぞ。レベルが上がれば中級者の部でも良いぞ」

 闘技祭か。俺は元々戦いには興味は無かったが、転生してからは・・・この体になったからか分からないが戦うことが楽しい。レベルという分かりやすい指標も大きいと思う。


 もうひと頑張りしようか、村に戻って戦利品を売ろうか、と悩んでいると悲鳴が聞こえた。

「キャーーー!」

「何だ?襲われているのか?」

 俺は声の聞こえた方へ走り出した。街道脇の木々の間でゴブリンに囲まれ杖を振るう旅の女性がいた。俺は武器を構えゴブリンを打ち倒していく。

「ありがとうございます。助かりました」

 女性は俺の格好を見て『ビクッ』としたが気持ちを切り替えたように礼を言った。俺の装備は骨の蛮族装備だし仕方ない。

「ベリカ村に行くのか?こっから先は大丈夫だと思うけど、気を付けて行けよ」

「あ、あのう。お礼を」

「礼は・・・いい」

 俺は女性を置いて、先ほどまでいた木の陰に戻ってきた。

「良かったのか?結構カワイかったぞ」

「いいんだよ。こういうハプニングの出会いは長続きしねぇんだよ」

「ほう・・・」


 俺は日が傾くまでゴブリンを狩り続けた。レベル20を越え21となっていた。鞄もパンパン。今日は頑張ったと思う。昨日のカワイイ雑貨商で戦利品を売り、酒場へとやって来た。相変わらず混んでやがる。

 今日も昨日と同じ、エール、肉、シチューを注文した。エールが来て飲み始めると声を掛けられた。

「今日はありがとうございました。お陰で助かりました」

 顔を上げるとゴブリンに襲われていた女性がそこに居た。服を着替えたようで一瞬誰だっけと思ったのは内緒だ。

「いいよ。大したことはしてねぇしな」

「お礼にここの食事代は私が持ちます。お礼をさせてください」

「いや・・・悪いな。ありがたく」

 お礼でご馳走か・・・。何だか女性に出させるのはちょっと抵抗があるんだが、あたがたく受け取ろう。

「ここ、座ってもいいですか?」

「ん?いいよ」

 女性は俺の前の席に座り話し始めた。名前はエリスティナだがエリスでいいらしい。職業は錬金術師で伝説の錬金術師を探して旅をしているらしい。伝説ねぇ・・・。


「ボンさんは強いんですね。もし良かったら私の護衛として一緒に旅をしませんか?」

「旅?俺も修行で旅をするけど、カル何とかの闘技祭に行く予定なんだ」

「カルオローラですね。じゃぁ、あちこち廻ってからカルオローラに行きましょうよ。護衛の料金も支払いますし。ね、いいでしょ」

「・・・」

 何だ?この押しの強い女性は・・・今まで会ったことのないタイプだ。

「いつ出発します?」

「明日は城村に行くから明後日だな」

「分かりました。明日は私も錬金術師の情報を探してみます。この村にも功名な錬金術師がいるようですからお話しを窺ってきます」

 俺は、あの爺さんの事だと思った。

「ボンさんも、この宿に泊まっているんですか?」

「俺は港の倉庫で寝てるよ。宿は金が掛かるからな。貧乏人だし屋根がある所で寝れるだけマシだ」

「・・・」


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