第5話 炎の転校生
「はい、みなさーん。今日から皆さんと一緒に勉強する新しいお友達ができました。百舌鳥門エリカさんです。皆さん仲良くしてあげてくださいねー」
「はじめまして。百舌鳥門エリカです。鳥のモズに、門松の門、日本語習いたての外国人さんでも読めるよう配慮したカタカナのエリカで、百舌鳥門エリカといいます。友達からは『モズのはやにえ』って呼ばれています。転校してきたばかりで、分からないことがたくさんありますので色々教えてくださいね。」
落星台女学院横浜分校3年B組。
校舎はクラシカルな欧風の二階建て。都心部にあって小さな森に囲まれたどこか神秘的な空間。
エリカは今までミッション系スクールには縁はなかったものの、また学校という場所に帰ってきたんだなぁという実感を味わっ
ていた。
普通サイズの教室に机は5つだけ。過疎地の小学校のような寂しい光景だ。
シキがノリノリで茶番劇を始めたので、エリカも何となくそれに付き合った。
孤狼を自認するエリカだが、他人に気を遣わないタイプというわけでもない。むしろ、他人との距離感を測ることにストレスを感じるはゆえに孤独を好むのかもしれない。
「はい、私たち3年B組一同は百舌鳥門さんを歓迎するよ」
さっそく席を立ち笑顔を振りまいてきたのは、銀縁の眼鏡にショートヘアの女の子。化粧っ気は無く真面目そうな印象。
「私はクラス委員長の瀞脇星螺よ。分らないことがあったら、何でも聞いて頂戴」
「あーその件ですが、クラス委員長は百舌鳥門さんにお願いします」
「えーやだよ」
「はわわ、はわわ、はわわ」
突然の事態に動揺する瀞脇。
「ほら、とろわきちゃん、めちゃクラス委員長やりたい子じゃん。委員長顔じゃん、彼女がやればよくね」
「ダメです。百舌鳥門さんには特別に自覚を持ってもらうため、クラス委員長に任命させていただきます」
「前職して……全力でサポートするよ、百舌鳥門さん……」
それは息も絶え絶えになっているとろわきちゃんだった。
「じゃぁ、次はぁ私が自己紹介だねぇ。犬走みいこだよ。よろしくねぇ」
次に起立したのは、ぽっちゃり系の女の子。カバンにはおびただしい数のマスコットが結び付けられていて、私はカワイイ物が大好きですと全力でアピールをしている感じだ。
「こんなかんじで一人、また一人ってぇ仲間が増えていくのは楽しいねぇ」
(こっちは、いきなり新キャラ4人で覚えるだけでいっぱいいっぱいだよ)
エリカが残りの二人に目を向けると、三人目の少女が嫌々ながらに立ち上がる。
「椎葉ナイルだ」
発せられたのはただそれだけ。そのまますとんと再び席につく。
髪の毛を編み上げたコーンロウといわれる奇抜な髪型をしている。
(あ、ダンサーがしがちな髪型)
椎葉ナイル、彫りが深くいわゆる男前の顔立ち。愛想が悪く他人からは挑発的だと捉われがち。女子ダンスグループの中で踊りの技術はピカ一だけど人気は3番目、そんな感じの少女だった。
そして、最後の一人。机に突っ伏したまま居眠りをしている少女は、最後の最後まで立ち上がることはなかった。