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第2クォーター

 結論から言って、心配は杞憂だった。


「——オラァッ!」


 今も大樹が裂帛の気合いと共にリバウンドをもぎ取り、シュートを決め、ゴール下の争いを制した。


 第2クォーターが始まって数分、既に幾度なく目にした光景だ。


 そんなエンジンのかかった大樹の活躍はそれだけではなく、ディフェンス面でもいかんなく発揮されている。


「——フンッ! 颯太ァ!」


 自分よりも上背のある相手のシュートを見事な身体能力でブロックしてみせた大樹が颯太にパスを出す。


 合わせて走っていた咲にボールが渡り、そのままドライブで中に切り込んでシュートを決めてみせる。


 これで点差は20対24と4点差に縮まった。


「……すごいな」


 大樹と颯太と咲の3人がカウンターで速攻をしかけるのを状況を見て攻守どちらも参加出来るようにハーフライン付近で待機していた晃晴はポツリと呟く。


 爆発力のあるタイプだとは聞いていたが、まさかここまでとは思わなかった。


 明らかに大樹が乗っている時はチーム全体が勢いづいているのが分かるくらいだ。

 

「うちの切り込み隊長だからね。乗ってる時の大樹は見てて気持ちいいでしょ?」


 同じくハーフライン付近で待機していた宗介がその呟きを拾い、声をかけてくる。


「ああ。なんか負けてられないって気分にさせられる」

「うん、ガンガンシュート狙ってよ。ゴール下は任せて。まあ、大樹みたいに派手なプレーは出来ないけどね」


 そこで会話を切り、戻ってくる仲間を労いつつ、ディフェンスに集中していく。


 しかし、さすがに何度も止めるのは無理で、スリーポイントを決められてしまい、点差が7点差に開いてしまった。


(クソッ、相手は相手でやっぱさすがだな……)


 決して余裕のある体勢ではなかったのに、シュートを決めてみせたあたり、やはり相当上手い。


 ワンプレー中のちょっとした動作で相手がどれだけ研鑽を積んできたかが分かる。


(……けど、やられたままにはさせない)


 リスタートした颯太がボールを運んできて、ハーフラインを超えたのを確認すると同時、パスをもらう為に動き出す。


 当然、相手もこっちの動きに合わせて動いてくるので簡単に振り切れはしない。


 普通なら自由に身動きが出来そうにないところだが、


「……ッ! スクリーン!」


 こっちの動きを察した宗介が晃晴にディフェンスでついている7番の進行方向に立ち塞がり、パスをもらうための時間を稼いでくれる。


 宗介のマッチアップ相手である8番が慌てて声を上げるが、出来た隙を見逃さずに颯太が出してきたパスを受け取った。


 そのままドライブで切り込もうとするが、宗介についていた8番がカバーをする形で、ディフェンスについてくる。


「日向君、こっち!」


 ディフェンスにスクリーンをかけていた宗介が中に向かって動き、パスを要求してきた。


 宗介のピックアンドロールに8番が一瞬パスを警戒する素振りを見せる。


 その隙をつくように、晃晴はステップバックでスリーポイントラインの外に下がり、シュートモーションに入った。


 すぐに8番が距離を詰めてこようするが、ドリブルを警戒し下がっていたことと、パスを警戒したせいでこっちがシュートを打つ方が早い。


 ディフェンスが目の前に迫っているプレッシャーはあったが、放たれたボールは思い通りの軌跡を描き、

リングにかすることなくネットを潜り抜けた。


 これでまた4点差だ。


「ナイッシュ、日向君」

「三橋のサポートが上手かったからだ。お陰で動きやすくなったしな」


 それに、例え外しても宗介と大樹がゴール下の競り合いを制してくれると思ったから、思い切りよく打てたのだ。


 リバウンドが強いプレーヤーがいると、安心してシュートが打てるので、確率の低い場面でもどんどんシュートを狙っていける。


 とはいえ、いつもなら無理に狙わない場面だったので、入ってくれてよかった。


 差し出された宗介の手をパチンと軽く叩いて応じ、ディフェンスに戻る。


「日向、その調子でガンガンお願い」

「ナイス晃晴」

「やるじゃねえか。けど絶対俺のが目立ってやるからな!」


 言葉をかけて、次々と自分を追い越していく仲間たちに、「ああ」と返事をした晃晴の口角は自分でも気づかない内に少し上がっていたのだった。






 


「……今の晃晴、凄いいいプレー」


 一連のプレーを観客席から眺めていたひまりが感心したように呟く。


「え、えっと……すみません、いいプレーというのは……? シュートが決まって凄いということは私にも分かるのですが……」

「今のは確かにシュートを決めたこともそうだけど、相手に主導権を渡さない点数以上に価値のあるプレーだったんだよ、お姉ちゃん」


 心鳴の呟きに首を傾げた侑に、ひまりが説明してみせる。


「主導権、ですか?」

「うん。相手が格上な以上、点差が開きやすいのは間違いないだろうし、点が取られればそれだけ流れが持っていかれるってことになるからね。そうなったら焦りが出たりして、プレーが上手くいきにくくなるんだよ」

「……だから、すぐに点差を縮めてみせたことで流れも渡さず、チームの士気を上げた今の晃晴のプレーは点数以上の価値があるってわけだね」

「……そうなのですか。スポーツって見えているものだけじゃなくて、見えていないものにも駆け引きがあるのですね」


 ほー、と侑が興味深いというように頷く。


「さすが経験者は違いますね」

「……まあ、わたしはプレーの方は正直からっきしだけどね」


 侑とひまりが姉妹で会話を交わしている中、


「……」


 いつもは率先して会話に参加する心鳴は、ひまりの解説に補足だけ入れると、すぐにコートに視線を戻していた。


 今日の心鳴は試合が始まってからずっと、ところどころで会話を振られたら反応はするものの、まるでなにかを考え込むように静かになることが多かった。


(——もしかしたら咲は……)


 コートの中に落とした心鳴の真剣な瞳の中で、試合は止まることなく動いていく。

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