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インターバル

「……さすが、強豪ってだけあるな」


 第1クォーターが終了して、2分間のインターバルの最中、晃晴は得点を見ながら零す。


 現在の得点は12対20で、8点差で負けてしまっている。


 最初は咲を主軸にした速攻で得点を奪い取った晃晴たちだったが、そのあとはどうにも流れを掴み切れず、相手に得点を重ねられる形で離されてしまった。


 ただ、要所要所では点が取れているので、思ったよりは食らいつくことが出来ているのが幸いといったところか。


「そうだね。けど、第1クォーターは多分様子見に使われてるだろうから、こっからどんどん厳しくなると思う」


 タオルで汗を拭いていた宗介が、こっちの呟きを拾い、意見を述べる。


 その意見には晃晴も概ね同意だった。


 別に手を抜いていたわけではないだろうが、最初の10分はまだ身体を温めている最中で、その傍ら未知の相手の力量を探っている段階だと見てもいいはずだ。


「ま、それはお互い様だよね」


 喉を鳴らしてスポーツドリンクを飲んでいた颯太が、口元を腕で拭いつつ、相手のベンチをちらりと視線をやる。


 恐らく、頭の中では第2クォーターからの立ち回りを考えているのだろう。


「で、こっからどうする?」


 相手のベンチを真剣な面持ちで見据える咲が颯太に尋ねる。


「……ぶっちゃけ、おれたちは急造チームで5人揃って練習したことなんてないし、チームとしては断然向こうの方が上だよね」

「そりゃそうだな」


 冷静に意見を述べる颯太に、大樹が首を手で摩りながら相槌を打つ。


「けど、個人の能力だけなら、こっちも言うほど負けてないと思うし、ここからは個人の武器をより活かしていくスタンスで組み立てていこうと思うんだけど、どうかな?」

「僕はそれでいいよ。颯太のゲームメイクは信用してるから」

「右に同じ。お前が活躍して女子から黄色い声援を浴びてるのは反吐が出るが、悔しいことにお前の司令塔っぷりがあるのとないのとじゃ、プレーの気持ちよさが違う」


 小さく笑みを向ける宗介と鼻を鳴らす大樹の態度は対照的だが、プレーヤーとしての颯太の腕を認めている、というのは共通していた。


(確かに、球技大会の時から思ってたけど、桜井の上手さは個人技よりも味方を活かすことなんだよな)


 もちろん、個人技も相当に上手い。


 だが、それよりも周りへのアシストで、周りの良さを引き出す能力が群を抜いているように思える。


 颯太とは数えるくらいしか一緒にプレーをしていない晃晴がそう思えるということは、普段から一緒にプレーをしているチームメイトからすれば、その能力は疑いようがないのだろう。


「オレもそれで異論なし」

「俺も大丈夫だ。桜井に任せる」


 自分より圧倒的に試合慣れしていて、周りの活かし方が分かっている颯太に現状でこっちから提案出来る作戦はない。


 意見もまとまったところで、インターバル終了までもう少しというところになった。


「おっしゃ、気合い入れていくぜ!」


 迫力のある顔に覇気を漲らせ、大樹がいの1番に立ち上がり、コートの中に入っていく。


「ねえ、颯太。そろそろ大樹のエンジンかけといた方がいいよね?」

「うん、そうしよっか」


 そんな大樹の後ろ姿を見ながら、宗介と颯太がなにやら話し合っていた。


(……? エンジンをかけるって一体なにする気なんだ?)


 2人の会話が聞こえてきた晃晴は、わずかに眉を寄せつつ、コートに出ながら、それとなくチームメイトの動向をうかがう。


「大樹、ちょっといい?」

「あ? なんだよ?」

「正面側の観客席の右端から3番目の子、見える?」


 颯太は急になにを言い出したのだろう、と思いながら、反射的に大樹と同じように観客席に目をやる。


 座っている位置は分かっていたので、そこには侑たちがいるのは分かっていた。


 ということは、颯太が今話題に上げたのはひまりのことだろう。


「……浅宮さんと……!? 誰だ、あの子!? めちゃくちゃ可愛いじゃねえか!」

「……浅宮の従姉妹だ」

「なんだと!? 浅宮さんと有沢と一緒にいるってことは、あの子もお前の応援か!?」

「……まあ、そうなるな」

「ちっくしょォ! なんでお前ばっかあんな可愛い子に応援されんだよ! 顔か? やっぱり顔なのか!?」

「お、おい、朝日奈」


 膝から崩れ落ちる大樹に、戸惑いつつ声をかける。


(これじゃどう考えても逆効果だろ……桜井はなにを考えてるんだ?)


 発言の意図がまるで読めず、颯太の方をうかがうと、目論み通りと言わんばかりに笑みを浮かべた颯太が、続けて発言した。


「――さっき、あの子が大樹のことカッコいいって言ってたよ」

「シャァッ! ガンガン俺に寄越せェ!」


 大樹が崩れ落ちた状態から、飛び上がるように立ち上がり、吠えた。


 その表情からは今日1番の覇気が垣間見える。


 自分の持ち場に勢いよく駆け出していく大樹の背中を呆気に取られて眺めていると、


「ごめん、日向。日向の知り合いを利用するようなこと言って」

「い、いや……それは別にいいんだけど……」

「この手は大樹を乗せたい時によく使うんだよ。で、特に可愛い子ならやる気も段違いで跳ね上がるんだ」

「会場に来ている中じゃ、ぱっと見だと浅宮さんと有沢さんが目立って可愛いんだけど、応援する相手はもういるし、大樹をカッコいいって言うのは不自然だからね。だから、それ以外の選択肢だったらあの子が1番目立って可愛いから」


 意図を説明してくれる宗介と颯太に「そ、そうか……」と相槌を打ったところで、インターバル終了のブザーが鳴り響いた。


 本当にそんなことで大樹のエンジンがかかるのか、ということに一抹の不安を覚えながら、晃晴はディフェンスの為に自陣のゴールへ向かうのだった。

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