君をタスケルタメノコエ
※前作君からのタスケゴエの「君」視点となっております。どちらから読んでいただいても構いませんが、前作から読む事を推奨します。
前作です。⤵︎
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壁掛け時計の秒針の音だけが響くシンと部屋で私はスマホの電源をつける。
深夜一時二十三分、そろそろだろうか。
LINEを開き、少し下の方にいる君とのトーク欄までスクロールする。前にLINEをしたのは大体1週間前、タイミングはちょうど良さそうだ。
トークを開き、少し考えながらスマホに文字を滑らせる。
「もう無理、タヒにたい」
久しぶりに簡潔な文でもいいだろうと思い、送信ボタンを押す。既読は一瞬でついた。君と出会った頃は一週間経っても返ってこないことがざらにあったというのに、最近は返信が数分後には返ってくることが当たり前になっていた。
君から来た私を励まし褒め称える声に対して「いつもありがとう。こんな事相談できるのは君だけ」と返信を打ちながら、私はまたいつかの日の光景を思い出す。虚な目をしてフェンスの向こう側で今すぐにでもこの世から消えようとする君。その時君は乾いた唇をそっと開いて自分はもう空っぽだと言った。数年前の出来事でも君が消えようとしたことは今だに怖く感じる。きっともう君には〝生きて〟と言葉だけで伝えても届かない事はあの日の光のない目からなんとなく察していた。だから私は君が安心できるように、君が必要だと伝えて、君の空っぽを埋めてゆく。きっと君に光の言葉を伝えても辛いだろうから、と病みを偽った私はあの頃からいくつの嘘を君についてきただろう。でも幸い、このやり方は間違いではないようで。事実まだ君は生きている。
全ては君に生きてほしいから。
だから今日も、病んでもいない私は鬱のふりをして君にLINEをする。
こんな動機の鬱のふりは本当に辛い人に失礼だろうか。
君に数えきれない嘘をついてきた私は詐欺師だろうか。
詐欺師は君の隣にいてもいいだろうか。
私なんか消えた方がいいんじゃないだろうか。
私なんか、私なんか、私なんかわたしなんかワタシナンカ.......
LINEで君とのトークを開く。
君に伝えたい辛さを言葉にしながら文字を打ち込むと、先ほど送った言葉が目に入る。
あれ、あの言葉は本当に嘘だっけ。
今作を最後までお読みいただきありがとうございます。
前作を投稿してから後付けした話なので少しばかり強引な設定だったりする気もしますが見逃してください。
ではここまでお疲れ様でした。またどこかで。