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この国の王子はクズですね!

作者: あゆ

1日でばーっと描き終えたので誤字脱字あると思います

なんとなく思いつきで書きました。

短編なのでさくっと読めます



「本当にどうしてこの学園にこんな方がいらっしゃるのでしょう」



「普通は来れないわよねぇ」



「恥知らずもいいとこ」




このくらいの侮辱には慣れた。

冷えた瞳をそっと伏せて机を見つめる。

しかし、机の上にもらくがきがされておりはっきりとそこには尻軽やら国の恥やら書いてて恥ずかしくならなかったのかと疑問に思うばかりの文字。


そんな低俗ないじめを行なっている学校はさぞ偏差値が低いんだろうと思うがここは貴族のみが通うことが許される由緒正しき学園だ。

貴族たちは幼い頃から英才教育を受けており偏差値はトップクラス

煌びやかな学園と豪華な教室、設備。

ここには様々なお金持ちが集まる。もちろん、この国のトップなのだから皇族も通う場所だ。


そんな素晴らしい学園で行われる低俗ないじめ。

それを受けるのは平民の私だ。


何故ここに平民がいるのかって?



それは簡単だ。歳の離れた姉が、聖女に選ばれたからだ。

勿論姉も平民だけど、20歳になった日彼女は不思議な力に目覚めた。


その日のことはよく覚えている。

彼女が触れるものがキラキラと黄金に光り輝き、まるで魔法使いみたいだねって笑ったことを



それからはあっという間だった。

すぐに神官と国の人間がきて、貴方は聖女ですなんて言われてあれよこれよと王宮に連れてかれて気がつけば私は特別待遇でここに入学されられた。


だから私はただのおまけ。

なんの才能も能力もないのにここに入れられて他の生徒は面白くないってわけ。


すごいのはお姉ちゃんだしね。

そこに異論はない。



貴族様に噛み付いて国のために頑張ってる姉に迷惑をかけるわけに行かない。


今日も耐えてれば、今日は終わるんだから。










目の前で、教科書を引き裂かれた。




「貴方の姉、わたくしの婚約者に色目を使ってるらしいわね」



「……はい?」



キラキラした黄金の髪を綺麗に巻いており、宝石が散りばめられたアクセサリーがちらりと制服から覗く。

私の教科書に握りしめるその手には婚約を意味するシルバーリングが光っていた。


エメラルドグリーンの瞳の彼女はよく知っている。

この貴族学園のトップを君臨する皇太子の婚約者エシュール様だ。


取り巻きらしき他の女がクスクスと笑っている


「そこまで卑しい女だとは思いませんでしたわ。貴方にここの授業を受ける資格はございません。あぁ、教科書がこれでは意味がないわね……お姉様に治して頂いたら?さっさと田舎に帰ったほうがよろしくて?」


「ほんと、妹も色んな男に色目を使ってましたけど姉まで…姉妹揃って…」


「聖女とか言われていい気になって…」


「エシュール様から奪おうなんて身の程知らずの女…」



























破られた教科書と千切れた紙切れをベンチに投げ捨てる。


「ふざけんなよっ!あの縦巻きロール女!!!!!!」


学園から少し離れた下町で思わず私は叫んだ


あー、本当にストレス溜まる!!!

貴族ってなんでこう下を見つけると偉そうにしてくるかな!!


「あんなのが未来の妃候補なんてこの世も終わりね!」


「本が真っ二つだね、すごい怪力だね」


「は!?」


「ん?」


学園で言えない愚痴を大声で言ってたら突然隣から穏やかな声がするから驚いてきょろきょろした


周りに誰もいないと思ってたから言ってたのに…!



ベンチの背もたれから乗り出しているようにこっちを見ているのは黒髪の男だ。


え……本当に誰…



「この学園の生徒なの?なんで教科書がこんなボロボロに?」


「えと……貴方は…?」


「あ、ごめんごめん。びっくりさせたかな?僕は怪しくないよ。女の子一人で叫んでたから気になって」


「あ…ごめんなさい。うるさかったですか?」


「いや全然。面白そうで声かけちゃった。第一この辺りに貴族がいることが珍しいしね」


制服を指差す彼に納得した。

たしかに、貴族達は滅多に下町には降りてこない。

平民のことなんてどうでもいい奴らばっかりだ


だからこそ安心してたんだけど


「いや、私は貴族じゃなくて…ひょんなことからここに通ってるんです」


「へぇ、そんな子がいるんだ。学園生活はどう?」


「さいっあくです!」


「へ?」


きょとんとした彼を放置して捲し立てる。

学園では誰が見ているのかわからないしストレスが溜まってるのだ


「まず、貴族だけ受け入れるとか意味のわからない方針が腹が立ちますよね。貴族だけが頭が良くて平民は頭が悪いって言ってるようなものです!あれはいつから学習したかの差なだけよ。途中から学園に入った平民の私が追いつけたんだから間違いないわ!みんな秀才だと自分たちを過剰評価してるの!」


ほう、と彼が反応する。

どうせ行ってないんだからわからないんだろうけど

聞いてくれるなら有り難い。私はどこも敵だらけなのだ



「閉鎖的すぎるから生徒はみんな傲慢だし止める者はいないし立場が上な生徒は教師すら何も言えない!一体何を学園で教えてるのかわかりません!こんな人たちがマナーが〜とか言ってる意味がわからない!!!

社会のことや、将来のことを学びにきてるとか笑わせるわ、ただ歪んだ自尊心を育ててるの間違いだわ!」


だんだんと彼がにこにことして頷いて聴いてる


「一番気に入らないのがこの国のトップよ」


「ほう?どうして?」


「私のクラスには皇太子様の婚約者がいるんですけどまぁ性格が悪い!」


「どんなふうに?」


「他の生徒が私をいじめをしてそれをクスクス笑って楽しんでいるし、変な噂を勝手に流してあたかも自分は正しい!ってアピールしながら教科書を破いてくる!!

国のトップ候補がこれならもう最悪よね。きっと皇太子も最低よね。類は友を呼ぶということわざがあるもの。

周りの生徒も彼女もその婚約者も先生もみんな最低よ。


こんな国のために姉が頑張っていると思うと反吐が出るわ」



その瞬間、彼が笑い出した。

ぎょっと隣を見ると彼はいつのまにか隣に座って教科書を膝の上に置いていた。

まじまじと彼を見るとさらさらの黒髪は綺麗だし笑うとクールそうな目が可愛くてちょっとドキッとした。

意外と美形…?

でも変なところで笑うし変な人なのかも


「変な噂も腹が立つのよ、皇太子様に姉が色目を使ったって…」

「ぷはっ」


……。そんなに笑わなくても


肩を震わせて笑う彼はちょっと怖い。

そんなに面白いことを言った覚えはないのに


「たとえその噂が本当だとしても、皇太子様への侮辱になるって気づかない彼女も頭が弱いし、皇太子様が他の女に現を流すクズな男ですーって言ってるものよね」


「くくくっ、そりゃ傑作だな。相当クズだな」


笑いすぎたのか口調が少し崩れてきた。


「まぁお姉ちゃんは美人だし本当ならセンスはいいわね」


「納得するんだ?」


「そんなクズな男こっちから願い下げだろうけどね。あんな婚約者を野放しにして放置してるんだから」


そう、そのいじめの主犯格はエシュールだ。

表面上滅多に前に出てこないが周りにやらせて楽しんでいるのはみんな知っている。

見せ物みたいに、私が反抗できないのを知っていて


時々飽きてこんなふうに自分は正しい!ってアピールしながら危害を加えてくる。


ずる賢い女。





「君は?」



「え?」



「君は、変えようと努力はしたの?」




その言葉が突き刺さる。

目の前の彼は微笑むように穏やかに言った。



私は、



貴族がこわいって言い訳をして


我慢して、何もしてない。



耐えて耐えて、私ばっかり、耐えてる。


入学当初に自己紹介中に平民のことを馬鹿にされて笑いものにされても

カバンを隠されて、必死に探す姿を見て新しい鞄は平民は買えないと言われたり

ご飯にゴミを入れられて無理矢理食べさせようとしたり

恵んであげると生卵を投げつけられても必死で耐えて、殻にこもって



みんなを楽しませるおもちゃとして。





「貴族相手に…できない…ましてや、この国からいられなくなる…」


お姉ちゃんはこの国のために頑張っている。

聖女と判明してからほとんど顔を合わせられていない。

ずっと仕事だ。私がこんなことになってるってわかったら国出るとか言ってくれるのかな。

でもそこまで迷惑かけたくない。聖女になった以上彼女はこの国から出られない。

出て行くことになるのは、私一人。

もしかしたら両親も出て行かされるの?

両親はお姉ちゃんが聖女として国のために働いてることや私が貴族専用のトップ学園に入学したことをとても誇りに思ってるのに、

私はいじめられてるとバレるのか怖い。

耐えれば、みんな幸せだと信じていた。


私はこの世界ではちっぽけだ。

こうやって愚痴ってまたいつのもの日常に戻るしかない。




「君は気づいてないかもしれないけど、その着眼点や冷静さを欠かないのは魅力的だね。ましてや聡明な女性はいい」



ふっと彼が笑いながら椅子から降りて目の前にひざまづく。

その一連の動作が優雅で自然でまるで物語に出てる王子様のようだ


手をそっと持ち上げれるとよく彼の手が見える。

細くて白い手だ。



「僕と友人(とも)にならない?」


「とも…?」


「色んな視点の人間がほしいんだ。客観的なね。君は客観視するのが上手みたいだから」


「わたしが?」


「友人になってくれたら、君に貴族と戦える力をあげる。大丈夫。君に足りないのは勇気だよ」


「勇気でどうにかなるかな?でも、貴方が褒めてくれるのは少し嬉しい。うん、いいよ。また愚痴聞いてね」


「喜んで」


そう言って彼が手の甲にキスをした。

ぼっと顔に熱が集まる。


「なっ!?!?ひゃ!?」


急いで手を引っ込めると彼がまたクスクスと笑う


「君の照れるところ、初めて見れた」


青い、キラキラとした瞳だった。聖女になった姉と同じ青い瞳。
















「あーら、よく学園に来れましたわね。お姉様に会えましたか?」


「姉妹揃って下品な女…」



登校すればいつもの悪意のある言葉たち。

あぁ…私のことを言いたくても平凡すぎるもんね、婚約者が直接攻撃するには、皇太子と共に国のために働く姉を攻撃するしかないもんね。



すっと冷えた瞳で彼女たちを見る。

周りの男子生徒とニヤニヤしてこちらを見ている。下品な視線だ。


「貴方のその目がとても嫌いよ、あの女を思い出す」


エシュールも目をすっと細めて言い放つ。


「貴方も色目を使うの?やだ、こわい…」


ニヤニヤした男がぐっと羽交締めしてきた。

これはいつもと違う。嫌な予感がした。


「いやっ!離して!」


「この悪女め!成敗してやる!」


はぁーーーー!?!?

何が悪女よ!成敗!?!?


男に組み敷かれそうになると本能が赤信号を出す。

あの悪口を本当にさせようとしてる…!?

そう思った瞬間、ぷちんとなにかがキレる音がした。


耐えて、耐えて、私は本当に、幸せになれるの?


″君は、変えようと努力したの?″




耐えた結果が、これなら、私が最後に出来ることは




「この性悪女!いい加減…っ」


「しょ、性悪…!?!?なんて下品な…っ」


「あんたなんかと婚約出来た男に私の最高の姉が惚れるわけないでしょ!どーせその程度の男だったって言ってるのよ!あんたは!」


「な、な、な…」




「ぷはっ」



友人がせっかく冷静な所がいいって言ってくれたのにぷちんときて貴族様相手に言ってしまった。

彼女は怒りに顔を真っ赤にしてる真後ろであの声がした。


噴き出したような笑い方。




みんなが振り向くとそこには黒髪に青い瞳の男性が立っていた。

周りに騎士のようながっちりとした男が二人立っている。



「わ、わたくしに会いにきてくださったんですね…!」


すぐに表情を作ってエシュールが黒髪に近寄ろうとすると騎士に止められた。


「ちょっと…!」


「愛しいエシュール、顔が真っ青だね。これは、どういうことかな?」


にこにこと微笑む彼は昨日のままだ。

見覚えがあるし、昨日私に接した時と同じような口調でエシュール様に話しかけてる。



…え?私と同じような?



「この学園にね、僕の友人が通ってるみたいだから、久々に母校を見ていこうと思ってね。

あぁ、君。僕の友人に何をしてるのかな?」



にっこりと微笑む彼の服装はとても上質で王子様のようにマントを羽織っている。その胸元には皇室を表す銀色の龍の紋章


…ん?え?頭が追いつかない。

母校って言った?貴族様?昨日あんなに普通の服を着て普通に下町にいたよね?

いや、動作が嫌に優雅で王子様みたいとは思ったけどどうなってるの?



「いやですわ、言ってくれたら学園を案内しましたのに

今、彼女がわたくしに襲い掛かろうとして怖くてあの方が守って下さったの。わたしくしを心配してくださったの?」


さすが未来の妃候補。すぐに取り繕って無害そうなにっこりとした笑顔を取り繕う。黙って笑っていれば彼女は美人だ。そこらへんの男だったらきゅんとしてしまうのではないのか?

私は嘲笑ったとこしか見ていないが。


「でも彼女も反省してますし、そろそろ離してあげてください…。可哀想ですわ、きっとこの学園が少々合わない…」

「あぁ、もういいよ。エシュール」


よくもまぁ、ぺらぺらと私は優しいですぅって感じに言えるよと呆れてたら彼が穏やかに止めた。


ずっと彼はニコニコしている。



「彼女は僕の友人なんだ。さっさと手を離せ、場を弁えろ」


「っ」


穏やかな口調が少し厳しくなった瞬間、殺意というものを初めて感じた。ぞくりとする背筋が凍るような気持ちだ。

青い瞳がすっと細くなる。


急いで羽交締めしていた男子生徒が離した。

それを確認するとまたにっこりと笑う。



「い、いつの間に彼女と友人に…あ、聖女様繋がりですわね!私もあの方と一緒に早くお仕事したいわ」

「エシュール」

「あ、そろそろお父様にも会いに」

「もういいよ、エシュール。全部ミたんだ。彼女の教科書を通して」

「!?」


その言葉で彼女が顔色を変えた。一瞬で青白くなる。

私たちを含む周りは一切わからないが時間が止まったかのように誰も動けない。



私の疑問に思う気持ちが視線に出ていたのか彼と目が合うと説明してくれた。


「あぁ、友人には話してなかったね。皇族は基本、時々能力がある子供が生まれるんだが僕には物の記憶を読み取る力があってね、別に秘密にしてるわけじゃないんだけどあんまり人に話してないかな。エシュールは知ってたみたいだね」


その言葉にびくりと彼女の肩が揺れる


「僕に記憶のあるものを触らせてくれなかったね。さすが未来の妃候補だよ、徹底的だったね。僕もそこまで君に興味なかったから問題さえ起こさなければいいと思っていたんだけど、これはダメだね」


彼はそっと私に手を差し伸べる。まるで本当にヒーローだ。王子様みたい。いや、本当なんだけど

私が立つのを確認すると彼女たちに向き直る。


「学園を私利私欲のために利用に賄賂と権力に溺れ、剰え差別と暴力、軽犯罪にまで手を貸そうとするとは」


「犯罪なんて…なんのこと…」


「恐喝、賄賂、暴力…これらは一般的には犯罪と言われることを学園では学んでこなかったのかな?

君たちがしてきたことは立派な犯罪だよ。親がなんとかしてくれるなんて甘えた考えしてないよね?僕は王子だよ。弱みを見せる相手を間違えたな、お前たち。

そして、エシュール。権力を持つ者の立ち振る舞いを学園で学べない者は国を統べることは不可能だ。僕は聡明な人が好きなんだ。この意味、わかるよね?


僕は国のことを蔑ろにする他の女に現を流すクズ男らしいな?」



最後の言葉は低く、彼女の耳元で小さく囁けば倒れ込んだ。それを彼は平然と笑顔で見つめる。

彼女を助けるものは誰もいない。もう、彼女は皇太子様の婚約者ではなくなったからだ。

私をいじめてきた人たちも狼狽えている。今まで皇太子の婚約者という絶対的後ろ盾があって自由に私をおもちゃにしていたのに今、それを罪だとして皇族に弱みを握られている状態なのだ。


将来、この事実がどう影響するのか今から不安なのだろう。



「お、お、王子だったんですか…」


背を向けている彼にあわあわと口をひらけば彼はおかしそうにくるりと振り向いた。


「王子の顔を覚えていないのはこの国の民としてどうなんだ」


とてもおかしそうに笑っていた。

その場は結局騒動になり駆けつけた教師が絶叫していた。

そうだね、人は倒れてるわ、皇太子はいるわ、全クラスですか?のレベルの人だかりだし。

騒動について皇太子が教師と話していると思えばニコニコして私の腕をひっぱり校庭のベンチに連れて行かれた。


その顔はとても楽しそうだ。


「やっぱりあの青いキラキラした瞳は能力を使ってたんですね」

「さすが聖女の妹だね、気づいていたか」


聖女の能力を使った姉の瞳が青くキラキラして宝石みたいだったのをよく覚えている。


「君のお姉さんからよく話は聞いてるよ。自慢の優秀な妹だって。よく仕事で一緒にあちこちに行ってたからね」


姉の仕事は世界各地の浄化と祈り。彼女には触れたものに祝福を与えることができる。だから世界各地を回る必要があるのだ。その聖女の同行を国の威厳を象徴するため皇太子が行っていた。


そのせいか、皇太子は忙しく飛び回っておりなかなか顔を見ることができなかった。

皇太子は聖女と常に一緒にいて都市にはほぼいなかったし半分元婚約者の嫉妬もはいっていたんだろうな。


「まぁ、君のお姉さんは綺麗だけどすでに婚約者いるし、よくもまぁこんな噂を作れるな」


「寂しかったんじゃないんですか?きっと。知らないですけど。…って、このことだったんですね、力をあげるって。助けてくださりありがとうございました。」


ぺこりと頭を下げればそんなのはいいと手で静止された。このために私と友人になろうと提案したということか。

ならばもう私は必要ないな


皇太子と平民が友達ってすごいパワーワードだしファンタジーだ。

あってはならない。

皇太子と聖女ならまだしも



「助けたというか友人なら当然だろ?」


「少しの間だけでも皇太子様と友人になれて夢のようでした。ありがとうございます。では」


「え、ちょ、少しの間?」


「え?」


「言ったでしょ、僕は聡明な人が好きって。この前話した君の観点は面白かった、詳しく教えてほしい」


「いや、おかしいですよ、このためだけですよね?」


「はぁ、僕がすごい悪いやつみたいじゃない?君のこと面白くて気に入ったんだけど、だめ?」


うっっっっ

なんだこの心臓に悪い生き物は…っ


大の大人がこんな首を傾げるのがこんなに可愛いなんて…

あ、皇族に可愛いなんて不敬罪になりそう。

でもだめだめだめだめ、貴族と平民はしっかり線引きしないと厄介なことに



「ほら、僕のことクズって言ってよ」


「本当にすみませんでした。是非友人でお願いします」



私も彼に弱みを握られていたのをすっかり忘れていた。


勢いで頭を下げて手を差し出す。


「名前は?」


「あ、アリサ…」


「そう、僕はヨル。よろしくね、友人のアリサ」


そう言って手を握るのではなくあの日のように軽くひざまづいて手を握り手の甲にキスをする彼に思わず赤面してしまった。



な、慣れない…!


「ほら、君を選んだ僕はセンスがいいだろ?」











これはこの国の歴史に残る、平民と皇太子の友人になるきっかけのお話


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― 新着の感想 ―
[一言] こういったお話だと安直に二人がくっつく場合がありますが、 友人で終わったのがとてもいい所ですねw ざまぁもちょうどよく、能力を使っているから否定もできない辺りがいいですね お姉ちゃんもみた…
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