7/40
皮膚とこころ / 五分
「皮膚とこころ」
虫がこの両手を這って、そして繋いだ貴女の手にも感染っていく
手首の骨の出ている部分から左手の薬指、に、触れ
皮膚に落ちて融ける白雪。
美しいこと、日々を生きるだけのこと。
白い肌の手、指。喉仏に触れる
驚いた眼、ヒュッと言葉を失った貴女の声、漏れる息
キレイなひとだと、ああ…
心臓の音さえこの空間に響かない
貴方は一言。そして、何も言わない。
良い人だ。他人を慮り自らを卑下する、優しさに満ちていて
恋とは相手ではなく自分自身に酔っているのだ
自分を想えない人間同士。いずれ、判ることでしょう?
「五分」
ふっと現れて消えて
なんで時計の針は進んでしまうんだろ
疲れきり、何となく酔っている
そうして、今日も同じような夕暮れ空の色に恋をして
一体全体何が見えてるんでしょう
浮かぶ明星の美しさなんてよく知れてるんです
それも陳腐なほど、
それは誰かの人生が美しかったからなんでしょう
月を愛でるのは、誰かの人生が愛おしかったからなんでしょう
なぞって、かいて、
今日も白い息が何となく面白く感じて
氷柱から垂れる水滴を面白く感じて
寂しげな花が好かった
あのひとみたいに