名無し
俺は遺書を書きません。
両親は早くに死んでしまって、
正直俺は幸運だと思いました。
なぜなら俺のあと残る人間なんていないからです。
俺が死んだ後、泣いてくれるほど情のある人間は、
どこの世にもいません。
消えたいです。
この世のどこにも、俺の名前なんて残さず、
灰になって、
なんとなく、死んでいきたいのです。
俺は幸運だと思います。
俺は食うものにも住むところにも悩まず生きてこれました。
両親に迷惑はかけましたが、なんとか頑張って進学して、
まあ結局こんな会社に勤めることにはなってしまいましたが、
生きるのには困っていないんです。
けれども、生きていれば、どうしても悲しいんです
苦しいのです。
怖いのです。
ある日、抑えきれずに漏れ出した嗚咽と涙が、
いつか俺を、本当に狂った人間にしてしまうんでしょう。
普通に頑張って生きてきた、俺の平凡な人生を、壊していきそうな、
この、苦しみは、
どうしようもなく、どういう訳もなく、
生きていれば、自然と生まれてくる筈の時限爆弾だったんでしょう、
けど、俺にその解き方は分からない。
夜な夜な酒を飲んで、泣いているんです。
人には言えません。
自分に問いても、これが何なのか、わかりません。
普通に生きたい
心臓を幾度も刺そうとするナイフが、
いつ俺を本当に殺してくれるんでしょう
夜中に酒瓶抱いて寝てしまって、
いつ俺の目に白布をかけてくれるんでしょう
誰にも知られず、死んでいきたい。
これだけ苦しんでいるんだ、
苦しまずに、死んでいきたい。