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第69話 苦痛派VS断食派⑧


 ダミアンは右手に炎の剣、左手に雷の剣を持って俺に向かってくる。


 2属性の魔法使いだ。


 見たところ、恐らくどちらの属性も上級魔法だろう。


 炎の剣と雷の剣。


 実際のところ、炎と雷の組み合わせの相性はかなり良いと言える。


 元々、対人間という意味で、炎と雷は非常に有効な魔法であることはもちろん。


 炎の苦手な水は、雷でカバーできる。

 雷の苦手な氷は、炎でカバーできる。



 俺は魔法障壁を展開しているので、ダミアンの斬撃をくらっても大丈夫だとは思う。

 しかし、無駄に斬撃を受けて魔力を消耗することもないだろう。



 向かってくるダミアンの炎の剣に向かって、俺も魔力を集中させる。


 ーーカァァンッ!


 俺は剣を振って、ダミアンの攻撃を跳ね返した。


 トゥルク連峰の麓で、イフリートと練習した炎の剣だ。


 水の剣と氷の剣を作って応戦しようとも思ったが、そうすると結局は苦手属性の潰し合いになる。


 俺が水の剣で炎の剣を攻撃すれば、雷の剣で応戦してくるだろうし、氷の剣で雷の剣を攻撃すれば、炎の剣で応戦してくるだろう。


 剣技はダミアンの方が上だろうし、二刀流を扱う自信もない。


 であれば、多少は使い慣れている炎の剣を強化して、一本で勝負するというわけだ。



 炎の剣を跳ね返されたダミアンは驚いた顔をする。


「ケントさん、5属性の強力な魔法を使うだけではなかったんだな。その炎の剣……、魔法の扱いも大変上手だ」


 ダミアンは自分の右手に持っていた炎の剣をチラリと見る。

 俺の炎の剣の斬撃を受け、その刀身は大きく削り取られている。


「ああ、俺もけっこう練習したんでね」


 俺は炎の剣を構える。


 この炎の剣には上級魔法を超える魔力を込めている。

 ダミアンの2本の剣は上級魔法で作られているだろうから、正面からぶつかりあえばこちらの剣の方が強い。



 その時、1人の男がダミアンに向かって声をかけた。

 俺たちの戦いに巻き込まれないよう、少し遠くから大声で話す。


「ダミアン支部長! 雷雲の制御、完全に失いました。いかが致しましょう!」


 男の話を聞いて、ダミアンは雷雲に目を向けた。


 俺もつられるように雷雲を見る。


 ーーゴロゴロゴロゴロッ!!


 雷雲はますます黒く巨大になっている。


 雷雲にまとわりつくように、常時、雷がほとばしっているのが見える。


「大丈夫だ。すぐに決着はつく」


 ダミアンはそう言うと、再び俺の方を見る。


「ケントさんは魔法が上手いだけで、剣技は素人同然だっ!」


 ダミアンはそう言い放つと、俺との距離を一気に詰めて襲いかかってくる。


 言ってくれるじゃないか。

 そのとおりではあるけどなっ!


 ーーカァァンッ!


 俺は再びダミアンの炎の剣をはじき飛ばすが、その間、ダミアンの左手の雷の剣が俺の魔法障壁をえぐる。


 俺はすぐに雷の剣をはじき飛ばす。


 しかし、すでにダミアンは炎の剣を修復しており、今度は右手の炎の剣が俺の魔法障壁をえぐる。


「ダミアン、確かに強いなっ!」


 俺は風魔法で加速して、後ろに跳ぶ。


「逃がさんっ!」


 ダミアンはすぐに距離を詰め、様々な角度から連撃を繰り出してくる。



 乱戦だ。


 俺は魔法障壁を展開しているため、少しぐらいダミアンの斬撃を受けても大丈夫だ。 


 こうなれば、もう地力の強い方が勝つ。


 魔法使いにとっての地力とは。

 ……すなわち、魔力量である。

 

「怪我しても知らんぞ、ダミアンっ!」


 俺はもうダミアンの剣をはじき飛ばすのはやめた。


 この上級超えの炎の剣で、直接ダミアンの身体を切りつけてやる。


 俺は風魔法で炎の剣の斬撃を加速させる。


 そして、ダミアンの肩口から袈裟斬りにする。


 ーーズバァン!


 剣先から、大きな音が鳴った。


 しかし、ダミアンの身体を切った感触はない。


 ……魔法障壁だ。

 

 俺は再び風魔法で後ろに大きく跳び、ダミアンと距離を取る。



「ダミアン、魔法障壁か」


「攻撃魔法を使いながら、魔法障壁を展開できるのは自分だけだと思わない方がいいんじゃないか?」


 ダミアンはそう言いながら、ボロボロになっている両手の剣を修復する。


 ダミアンが言う「攻撃魔法を使いながら、魔法障壁を展開する」というのは正確な表現ではない。


 炎の剣も雷の剣も一度作ってしまえば、壊れてしまったり魔力が拡散してしまわない限り、継続的に魔力を込める必要はない。


 一度魔法の剣を完成させ、自身は魔法障壁を展開しながら戦うという方法をとっているわけだ。


 個人の魔力量には限りがある以上、このような戦法は、非常に長期戦に向いているものだと思う。 


 ……俺のように桁違いの魔力がある場合は、別だけどな。



 それよりも気になる事が一つ。


 俺の炎の剣は()()()()である。


 その斬撃を魔法障壁で防いだということは……。


「……3属性使いか。お前、水魔法も上級クラスだな?」


「……さぁ、どうかな」


 ダミアンは表情を変えずに言った。



 ーーゴロゴロゴロゴロッ!!


 ーーズドォォン!!


 後ろから雷が落ちる音が聞こえてくる。

 

 広場のどこかに落雷したのだろうか。

 

 人々の悲鳴も聞こえてくる。



 ……シヴァ。


 トールの説得は、難航しているようだな。



「いい加減、決着をつけよう。いつまでもここで戦ってはいられない」


 俺は炎の剣を消すと、空に向けて右手を挙げる。


 こいつら全員、戦意喪失するぐらい派手な魔法の剣を。


 ……見せてやるよ。


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