第45話 クロピオでの労働生活④
リヴァイアサンとシヴァと一緒に、夜のクロピオの街中を歩いて帰る。
「そういえば、ケントくんさぁ。雷魔法を防ぐのに地魔法を使ってたわよね?」
「ああ、あれしか方法はないと思ったからな」
俺も雷魔法をビリビリと受けるのは嫌だ。
「ひどいじゃない。なんで氷魔法を使わないの?」
「え、氷魔法って雷魔法を通さないの?」
「雷魔法が一番苦手なのは、氷魔法よ」
「そうなんだ……」
氷って電気を通さないんだっけ?
……まあ、いいや。
原理はよくわからないが、氷魔法は雷魔法に有効らしい。
でも、いいことを聞いた。
さっきの土壁も雷魔法から守ってくれたけど、なんせ俺の視界も奪われてしまったからな。
氷の壁なら周りも見えるし、状況把握もしやすいことだろう。
「それに比べると、水魔法は大活躍だったね! こう、バシャーって水をかけてさ」
リヴァイアサンが俺に向けて右手をかざす。
さっきの俺の真似をしているらしい。
「貴様も天の裁きを受けてみろ、ってね!」
「嘘をつくな、リヴァイアサン」
絶対、台詞を変えてるだろう。
俺は、人のこと「貴様」とか言わないし。
……え? そんなこと言ってた?
そういえば、ちょっと調子に乗っていたかもしれない……。
「大丈夫よ、ケントくん。そんなこと言ってないわ」
シヴァが俺の肩をポンと叩く。
狼狽えてるのが、顔に出ていたか。
シヴァがふざけない精霊王でよかった。
「あははは!」
リヴァイアサンは口を開けて大笑いしていた。
ふと、ある物が目に留まる。
さっき、エーミルさんに教えてもらった、あれだ。
雷玉だ。
雷玉って普通に市場に売ってる物なんだな。
「ちょっと見ていこうか」
俺は二人を連れて、店を見ていくことにした。
「お兄さん、お兄さん! 雷玉、今なら安いよ! 一式つけて、銀貨4枚。二つ合わせてなら、銀貨7枚だ!」
銀貨4枚。
日本円にすると4千円ぐらいのイメージだ。
照明1個にこの値段はかなり高いな。
ちなみに、今日の俺のトンネル現場の稼ぎが、銀貨9枚。
日本円で9千円ほどだ。
「これって、一回買ったら、ずっと使えるのか?」
「お兄さん、雷玉は初めてかい。いい商品に目をつけたねぇ。雷玉の根元にね、雷素を含んだ石が付いててね。明かりをつけっぱなしの状態で、10日間ぐらいは持つけどね。明かりが切れたら、雷魔法で雷素を補充しないといけないよ」
「雷素の補充はどこでやってもらえるんだ?」
「雷玉を売ってる店なら大体どこでもやってるよ。最近は雷魔法使いも増えてるからね、価格も安くなってて、一回の補充で、銅貨1枚ってところだね」
銅貨1枚。
日本円にすると100円ぐらいか。
しかし、電球のようなものが存在するってことは、この世界でも雷は電気って認識があるのかな。
電気工学でも勉強していれば活躍できたのかな?
現代の知識で、異世界の産業革命をやっちゃいました的なね。
……電気工学で合ってるかな?
そんなこともわからない程度に、俺はゴリゴリの文系なのだ。
結局、俺は雷玉を2つ購入したのだった。
「全然わかんなかったんだけど、このガラス玉って結局なんなの?」
リヴァイアサンが袋に入った雷玉を見ながら聞いてくる。
「帰ってからのお楽しみだ」
そう言うと、リヴァイアサンは首を傾げていた。
***
「よし、こんなもんかな」
俺は、得意の日曜大工作業を終える。
雷玉を取り付けたのである。
俺が取り付けた場所は……。
もちろんサウナの中だ。
天井近くの壁に2箇所取り付けた。
サウナの中で、一度、雷玉の明かりを点けてみたところ、結構明るさが強めだった。
そこで、俺は少しずつ隙間を開けた数枚の板で雷玉を囲うことで、直接目に強い光が入らないように工夫した。
2つの雷玉は間接照明になり、サウナ内部はいい雰囲気に仕上がったと思っている。
早速、俺たち3人はサウナに入る。
リヴァイアサンとシヴァが、新しくできた照明を見上げる。
「ケントくん、夜でも私の水着姿が見たいからってこんなもの……」
「ははは……」
俺は曖昧に笑う。
そんな理由ではない、とはっきり否定できないのが苦しいところだ。
「サウナは雰囲気が大事だからね。強すぎない照明。私は評価するよ」
おお……。
リヴァイアサンがまともなことを言っているぞ。
俺たちは、その後もサウナを楽しむ。
--ゴロゴロ、ゴロゴロゴロッ!
突然、外から大きな雷鳴が聞こえた。
俺はサウナの扉を開けて、外を見る。
しかし、外は特に変わったことはなかった。
俺は再びサウナの中に戻る。
「そういえば、雷の精霊って現れないよな」
今までなら、サウナに入っていると興味を持った精霊が現れていた。
精霊というか、全員、精霊王だったが。
「知らないけれど、別にどうでもいいんじゃないかしら?」
「私も、雷の精霊に興味なし」
二人とも冷たいな。
まぁ、俺も別にいいんだけどね。
雷の精霊王トールって戦闘狂らしいし。
今日会ったトニーも危ない奴だったし。
雷の精霊に対する、俺の印象はあまり良くないのだ。
--ゴロゴロ、ゴロゴロゴロッ!
その後も、サウナの外では雷鳴が響いていた。
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