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異世界でもチートがあれば幸せになれるのか?  作者: 立花
1 エゴイスティック≒ヒロイック
6/10

6.貴族と平民は平均身長からして違うと申しますし

「サク、昨日の話なんだが」


朝食の席でアルが切り出した。

異世界2日目の朝ごはんはフレンチトーストとサラダ、ソーセージ。

僭越ながら私の作です。

フレンチトーストは砂糖を多めに使ってじっくり焼いたので外がカリッとしている。悪くない出来だ。一晩じっくり液につけられなかったので中がふわとろではなくふわふわ止まりなのは残念だが、アルに褒めてもらえたのでよしとしよう。


「アルの知り合いと会わせて貰えるって話?」


最後のソーセージを咀嚼し終わったタイミングで尋ねる。


『会わせたい人がいる』

護衛として雇ってほしいと押し切った昨日の夜、彼は言った。

恋人を家族に紹介する時によく聞く決まり文句だがもちろんそんな意図ではなく、非常時にアル以外に頼れる人がいるようにとの配慮から来た発言である。


「ああ。急な話で悪いが今日もうすぐ顔を出すらしい。会えるか?」

「平気。ありがとう」


確かに思ったより早い。

王宮の件といいアルの手配の早さからして昨日のうちには連絡を取っていたのだろうけど、相手の方も中々にフットワークが軽いようだ。

まあ予定があるわけではないし早くたって全く問題ない。


「彼女は物事をはっきり言いすぎるきらいがあるが、懐に入れた人間に対しては特に面倒見がいい。きっと良い関係を築けるだろう。もちろん実際に会ってから信頼に足るか判断してくれればいいが」

「アルの紹介してくれる人だもん。そこは大丈夫だよ」

「……多少は疑ってかかってくれ。誰に対しても。…しかし彼女を含め当面の間君の出自については伏せた方がいいかもしれないな」

「ん、そうする」


これから来てくれる人は最初に私がお世話になる予定だった、公爵家のご令嬢なのだそうだ。

いつかは話さなければならなくともわざわざ今、そんな年若い彼女を無闇に混乱させる必要はないだろう。

……というのは表向きの理由。

相手は歳が近い同性なのだ。変なバイアス抜きで接して貰いたい、あわよくば友達になりたいというのが本音である。狡いとは思うけどね。


そんなこんなで軽く設定を擦り合わせたところでノッカーの音が響いた。


「出てくる」


短く告げてアルが席を立つ。

立って出迎えるべきか座っているか悩んでそわそわと動いている内に、早くも足音が戻ってきた。

…出迎えは立ってすることになりそうだ。


まず入ってきたのはアル。

うん、今日も麗しいですね。

昨日に引き続き緩く結んだ髪が今は朝の気怠げな色香と合わさって、これぞ絶世の美人さんって感じだ。

しかし後に続く方もこれまた壮絶だった。

一言で形容するなら、天使。

透き通る金糸のような髪は揺れる様さえ光をはらんで絵画のように美しく、愛らしい唇やすっと通った鼻筋など全体が完璧に均整が取れていてまさに黄金比。

つんとした印象を受ける瞳の色は薄い紅だ。

宝石のようなそれはアルの深い青色と対になっていて2人並ぶとまるで、


「ギリシャ神話みたい……」

「?」

「なんでもないです」


2人にわからない例えしか出せなかったあたり、語彙力のなさが出てしまった。

アルには不思議そうな、少女には怪訝そうな視線を向けられる。

気を取り直そう。

アルに目で天使の紹介を頼む。彼はすぐに察してくれた。


「彼女はネメリア。ネリー、既に連絡したがこの子がサクだ」

「初めまして。秦野朔と申します。お会いできて光栄です」


慇懃に頭を下げる。

肩書きが(押し掛け)護衛の私の方が身分が下なのは明白なので先に名乗ってみた。アルからもネメリアさんからも特に指摘はないので間違ってはいないのだろう。

常識がそんなに変わらなくて助かるな。


「ご丁寧にどうも。ヴァルタイル公爵家長女のネメリアよ」


凛とした綺麗な声だ。

発音もはっきりしていて大変聴き易い。公爵家では話し方も教育されるのだろうか。

……それにしてもネメリアさん、さっきから私の一挙一動を観察している。人の視線が苦手なわけではないけど、流石にここまで堂々と見られると緊張してしまう。

若干体を硬くした私を気にすることなく頭からつま先までじっくり見つめた後、ネメリアさんは大きく溜息をついた。


「見損なったわ、アルフォンス…いえ、貴方の事だもの。派遣したのは兄の方なのでしょうね。だとしてもこんな子供を危険に晒すなんてどうかしています」

(…………うん?)


瞬間、様々な言葉が私の頭を駆け巡る。

心配してくれてありがとうございます。

でも自分で決めたことなのでアルを責めないでください。

ちなみにお兄さんは関係ないです。


……だけど、とりあえずこれだけは言っておこう。


「私、18歳です」

「は」


声を出したのはアル。

いやいや目を逸らしても遅いですよ。まさか貴方に真っ先に驚かれるとは。

ネメリアさんも声こそ出さなかったものの目を見開いている。


「わたくしより年上……?嘘でしょう……」


なんでなのでしょうね。

私は多少童顔ではあるかもしれないが、日本人の平均的な顔のつくりから大きく外れてはいないはず。

それに今日の服装はネイビーカラーのシャツワンピースだ。

飾り気が少なくそれでいて野暮ったくない上品でシンプルなデザイン。

生地もしっかりしたもので、ネメリアさんのシルクサテンと思われるドレスには及ばないものの庶民の私には十二分の高級感がある。…我ながら普段より大人っぽく見えると思うのだけれど。

黒髪か?黒髪が童顔を助長しているのか?


「雰囲気のせいかしら……」


それはもうどうしようもないね!


「……とにかくだ。事情があってサクには今私の他に頼れる人間がいない。だからネリー、有事の際には彼女に力を借して貰えないだろうか」

「わたくしと貴方の仲ですもの。検討は致しましょう」

「仲……?2人はもしかして恋人……?」

「違う」

「違います」


ごめんなさい。アルが本題を切り出してくれたというのについ違うところに気を取られてしまいました。昨日の反省は無残に生き絶えた様です。

しかもそっと口に出してみたら相当食い気味で否定が返ってきた。


「元許婚に過ぎませんわ」

「それも兄のな」


ネメリアさんの発言をアルが間髪入れずに訂正。

大変に息が合っている。

特別な関係じゃないにしても結構仲が良いんじゃないだろうか。

アルは困ったような、ネメリアさんは苦虫を噛み潰したような顔をしているけど。


「ふっ…ふふ…っ」

(これ、今、仲良しですねなんて言ったらまた凄い勢いで否定されるんだろうな)


2人が同時に不満を露わにする様子を想像したらなんだか可笑しくて思わず笑いが溢れると、同じタイミングで対の目が怪訝そうに細められてもっと声が出てしまう。

堪えきれず笑い続ける私を見た2人は一瞬視線を合わせて、それから毒気が抜けたように溜息を吐いた。


「……わかりました。では貴女は今日一日、わたくしに付き合いなさい。申し出については貴女の働きを見て決めます」

「へ?」


それは一緒にお出かけってことですか?

今度は私が驚く番だ。

構わず彼女は続ける。


「さぁ、準備して。アルフォンス、彼女を借りるわよ」


突然の提案に目を瞬かせる私をよそに、立場を逆転させたネメリアさんは勝ち誇った様に早速、するりと髪を解いた。
















私は人の視線苦手なので我が子ながら朔ちゃん凄いと思います。


前話の観覧ありがとうございます!

次もなるべく…1週間以内には…上げたい(遅筆並感)

これでも推敲大分減らして早さ重視にしてるのに…なんで……。

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