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異世界でもチートがあれば幸せになれるのか?  作者: 立花
1 エゴイスティック≒ヒロイック
4/10

4.甘くない異世界と私の魔法

※子供に対する暴力的な描写があります。苦手な方は非観覧推奨。この話を飛ばしても大丈夫なように次話の冒頭に簡単なあらすじ載せる予定です。

快晴の下、街を歩く私の足取りは弾んでいた。

穏やかに降り注ぐ日差し、活気のある異国風の街並み、綺麗に結ってもらった髪、大道芸人の奏でる音楽に心が浮き立つのは仕方ないだろう。

あ、そうそう。ちなみに街、清潔です。

なんせ下水が通ってたからね!

正直ぱっと見た文化レベル的に産業革命期のイギリスのイメージでいたから、ちょっと不衛生な感じを想像してました…ごめんなさい。

流石に現代日本ほどの衛生状況ではないけれど、それでも下水があるなら感染症のリスクはかなり下がるので安心して楽しく散策ができる。やったー!

まあ着てる新品の空色のワンピースには罪悪感が募るけれど。

加えて念のためと言われてもう何着か買ってもらってしまっているので更に罪状倍プッシュだ。


「気にしなくていい」


超能力者か。

なんでわかるの?


「顔に出てるよ」


私の思考を読んでアルはまたくすくすと笑う。

今の彼はよそ行きモードらしく髪を緩く結び雰囲気が家にいる時より甘いが、笑い方はあまり変わらない。

その笑顔に少なくとも今だけは気に病むのはやめようと思い直し、改めて感謝を伝えた。


「ここから大通りに出て馬車を拾おう。更に人が多くなるから腕につかまっておいで」


差し出された腕に自然と捕まる。

エスコートがスマート過ぎて一周回って怖い。

えっなんで今私腕につかまったんですか?照れとかなかったんですが?

一応そういうの免疫ないはずなんだけどなぁ。

彼のさらっとした気遣いは変に色気を感じさせずとても心地いい。体に要らない力が入らないっていうか。

さっき服選んでたときも過剰でなく、ちゃんと私が自信持てるような褒め方してくれたもんなぁ。

場所も洋服屋さんもあまり高くなくてそれでいてドレスコードにもひっかからない、庶民がちょっと背伸びして買うお店(つまるところ私があんまり萎縮しないお店)を選んでくれた。

凄いわ。経験値が違う。いや人柄もあるのだろうけど。

私なんてお姉ちゃんに「あんたちょっとは気遣いができるようにならないと社会でやっていけないわよ」って散々しごかれて、それでも…いや、ちょっと思い出すのはよそう。

まあとにかく彼のこういうところ本当見習いたーー



「おい!!ガキ!汚ねぇ格好でここを彷徨くんじゃねぇ!!!」


突然の怒号にびっくりして私とアルは思わずそちらへ顔を向ける。


道を挟んだ向こう側。

貴族だろうか。

派手な身なりをした恰幅の良い男性が自分より二回り以上も小さい少年を蹴飛ばしたのが見えた。

当たり前のように振るわれた暴力を見た衝撃で思わずアルの腕を掴む力を強める。

全身が、逆立つような感覚がした。


あの人、何をやっているんだろう。

細身の少年は栄養失調ギリギリといった細さで服もぼろぼろ、吹けば飛んでしまいそうな子だ。

そんな子をなんであんな思い切り蹴っているのだろう。

だって身体が蹴られた衝撃で浮き上がるほど軽くて小さいのに。子供なのに。

なんで、そんな、あ、また。

後ろに引かれた足が勢いをつけて少年の身体に吸い込まれる。

お腹を蹴られたその子が堪え切れずに吐く。

それを見た男は更に逆上する。

ああ、また!!

私の口の中で声にならない悲鳴が生まれて消えた。握りしめた手が少年が蹴られる度に跳ねるように震える。

なんで、なんで。おかしいよ。おかしいのに。


なんで、みんな、そんな当たり前みたいな顔をしてるの。


「っ!」


蹴るのをやめ、今度は杖を振り上げた男を見てはっとしたアルが足を踏み出す。

だけどきっとアルは間に合わない。


(じゃあ、私(・)な(・)ら(・)?)


するりとなにかが擦り寄るような感触。

ああ、ずっと私の中にあったのに、色んなことに気を取られていたから今まで気付けなかった。


(ずっと?いつから?)


いや、そんなことはいい。

とにかくあの子を助けないと。

……そうだ、蝶だ。蝶がいい。虹色の、蝶。

どうかあんな怖いところから連れ出してあげてーー


パンと少年が弾けて光の粒子に変わる。

視界の端で風圧で仰け反った男がそのまま転倒し、強かに体を打ったのが見えた。

無数の粒子は徐々に蝶に形を変え、変わったものから私の方へ次々と飛んでくる。

まるで、虹がかかったような光景だった。

ざわめきはない。

七色の橋はその場にいた全員の言葉と視線を奪った。

蝶は私の前でまた粒子に戻り、集まってはひとつに溶け合っていく。

そして最後の一粒が溶けたところで、光はより一層瞬き、次の瞬間少年の姿に戻った。


(怪我は)


ぐったりした少年の身体を極力動かさないようにしつつ確認する。

内出血が始まっているところが何箇所か。

それ以上の外傷はないように見えるけど、髪や服で隠れている場所があるからまだわからない。

それに栄養が足りてない人は骨が折れやすくなってるはずだから多分、どこか折れてるんじゃないだろうか。肋の2、3本…で済んでいることを祈ろう。

加えてもし内蔵の損傷があったらそれ以上に厄介だ。命に関わる可能性はもちろん、後遺症も心配である。怪我を負ってから時間が経つほどこういった可能性は高くなるから、少しでも早く処置をしたい。

かといって医学の知識もない私が無理やり治したらきっと大変なことになってしまうだろう。


(そうだな、それなら……)


“戻そう”

5分くらいでいいか。

それくらいならきっと想(・)像(・)がつくと思う。


少年の身体の近くに光で時計を描く。

時計といっても文字盤はなくただ円の中に針があるだけの簡素なものだ。

ちなみにこれ、あくまで私が目安にするためのものであって本物ではないので時間は不正確である。


「よっし」


気合いを入れて呟くのと同時に時計の針が進み始める。

1回…2回…3回。

針が回る度に少年が“戻って”いく。

今度は先程の蝶のように鮮やかな変化があるわけではない。

近くにいる私ならわかる、というくらいのものだ。

それでも確実に痛々しい内出血は1つずつ消え、肌に赤みが戻り、目は閉じたままだが顔が幾分穏やかに変わる。

逸る気持ちを抑え、なるべく正確に等速で針を回した。


(4回…5回)


数えた瞬間手を振って光の時計を消す。

その時にはもう、少年の身体に傷は跡形もなくなっていた。


「……っはぁ」


無意識に止めていた息を吐く。

不思議と大丈夫だという確信があったが、実際はなかなか緊張していたらしい。

当然だろう。小学生の頃の喧嘩がせいぜいの平和な世界で生きてきたのだ。

意識を失うほどの暴行を受けた子供の治療なんて、こんな特殊な力を使わなかったとしてもイレギュラーな出来事過ぎる。

上手くいって本当に良かった。

安心するとじわじわと喜びが湧き上がってきて、思わず手を握りしめる。

けれど、


「っサク!?」


結局、我に返ったアルの声に私の感慨は一瞬で吹き飛んだのだった。
















観覧ありがとうございます!


一応シリアス回でした。

シリアスというよりは胸糞回かな…。

今後もこんな感じでお気楽回多目(当社比)ですがシリアス回もガンガン入る作品になると思うのでよろしくお願いします。


注意書きを入れるかは悩んだのですが、今回は子供に対する暴行ということでかなり繊細な話題であると判断し入れさせていだだきました。

主人公他の暴力的なシーンについては多分入れないと思うのでご了承下さい。


そして前話のブックマークありがとうございました…!

見て下さる方がいるおかげで早く更新しようって気持ちになります…!感謝です!!


次話で序章終わります。

こちらも早めに公開できたらいいな…。

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