2.私の中のお兄さんの好感度が急上昇していく件①
「……は?」
思わずと言った感じで起き上がったお兄さんはしばらく硬直してから、なんとかその一言を絞り出したようだった。
あり得ないって一蹴せずちゃんと理解しようとしてくれたあたり、私のお兄さんへの好感度はまた上がりました!
「……ちょっと待ってくれ」
額に手を当てて考え込むように目を瞑ったお兄さん。
もしかして今ちょっと素が出てたりします?
「なかったですか?そういう事例。一度も?」
「……70年ほど前に」
なんだあるじゃーん!とにっこにっこしてる私を横目に、お兄さんの眉間の皺はどんどん深くなる。
あ、もしかして異世界人たる証拠が必要だったり?
携帯……は、電池切れてるや。今日は1日外にいたし、うっかり使い過ぎてしまった。間が悪いなぁ。
でもそれならそれでよかったかも。
お兄さんを信じるって決めたから見せたって別にいいのだけど、この世界にない技術を勝手に持ち込むのはなるべく避けたい。
通信機の小型化技術って利用の仕方によっては世界に革命起きちゃうもんね。
通信技術は戦時下でより発展したって話もあるくらいだ。軍事利用されてしまうこともあり得る。
そもそも通信機があるのかもわからないし。なかったら当然大発明だし。この世界の方が科学技術が発達してる可能性もあるけども。
……うーん、じゃあ日本語使ってみるとかかな。異国の言語程度でどこまで信用を得られるかわからないけど、そこは佐藤先生の教えを胸になんかいい感じに雰囲気で押し切ろう。
ここはやっぱり和歌か。和歌なのか。優雅に古文の授業で身に付いた和歌詠んじゃったりするか。
日本が千年以上かけて練り上げてきた文化なら国どころか世界越えても通用する……気がする!音の綺麗さとかこうフィーリングが!ね!
「…正直、君の言うことが信じ切れたわけではない」
さあさあいざいざ!と張り切って頭の中で和歌を厳選していたらお兄さんの方が先に結論を出したらしい。
真面目に切り出したお兄さんの様子に私も姿勢を正す。
「だが本当に異世界から来たのだとすれば、安全面から考えて国に保護されるのが最善だろうな。……君の方に差し支えがなければとりあえず明日、王宮へ連れて行く。君が、少なくとも悪い人間でないということはわかるから。」
ええっ見ず知らずの人間の為にそこまでしてくれるんですか!?
いやー正直カミングアウトしてみたはいいけど一晩泊めて貰えたらラッキーくらいの期待値でした…まさかそこまで世話を焼いてもらえるとは……!
これ普通に変質者として通報してもいい案件だよ!?いやされたらされたで困るけども!!
お兄さんこそいい人すぎるもしかして神様なのでは!??
「ありがとうございます!!」
飛び上がらんばかりに喜ぶとお兄さんは苦笑する。
「なんだか君と話していると毒気が抜かれるな……今晩は客間を使うといい。鍵もかかる。…ああ、自己紹介が遅れていたね。私はアルフォンス。リンガード公爵家の次男だ」
「何から何までありがとうございます、アルフォンスさん!」
「アルでいい。呼び捨てで、口調も。あまり堅苦しいのは好きじゃないんだ」
「ありがとう、アル!」
よし、とお兄さん……アルは、気の抜けた顔で笑った。
公爵って言ったらかなり偉い家だよね。貴族の中では確か1番上の階級なんじゃなかったっけ。急なことにも拘わらず王宮なんて凄いところに私を連れて行けるくらいだし。
…でもアルの住んでいるところは綺麗で、決して狭くはなさそうなのに他の人の気配がない。使用人とかいてもおかしくなさそうだけど。
どうしてだろ…と考えかけて首を振って思考を止めた。恩人の穿鑿よくない。
それから部屋に案内された私は、鍵の掛け方を念入りに教わって(見ず知らずの私を泊めるアルの方がよっぽどちゃんと鍵をかけた方がいいと思う)、そのまま直ぐベッドに潜り込んだ。
短くてすみません…!
切らなくてもいいかなと思ったのですが場面転換多めになってしまったので一応分割します。
続きはすぐ投稿します!




