表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘れじの戦花  作者: なよ竹
第3章 少年と新設の魔法師団
28/141

第28話 三国と開戦

「うはー、壮観だ」

「......」


 戦場を一望できる崖。

 その崖の上に彼らはいた。


 他国とは違った特徴を持つ“刀”、色彩鮮やかな装備。

 それは、千日紅国の軍人を意味する。


 そんな彼らは戦場を見下ろす。

 視界に入るのは2つの敵国が率いる軍。

 どちらも特徴的な装いをしているため、一目見ただけで判別がつく。


 いかにも王様を守る、といった鎧・剣を装備している騎士の軍隊がキングプロテア王国。

 いかにも人外が混じってるのがルピナス王国。


 ルピナス王国は他の五国と違い、文字通り人外が存在する。


 ワーウルフと呼ばれる人型の狼。

 戦鬼と呼ばれる人型の鬼。


 人型で同じ言葉を使うといえど、人外と呼ぶ他ない。

 側から見れば、騎士の怪物退治にしか見えない光景を2人の少年が眺めていた。


「ルピナスの連中があっちで、キングプロテアがそこ......おい秋仙、ちゃんと見てるか?」


 花のように明るい黄色髪と同じく、身に付けているものまで、一面黄色に染まった少年が話しかける。


「見とる」


 それに全身、紅葉のような赤を基調とした装備を纏った少年が答えた。


 人外は兎も角、眼下に広がる兵の大半は、一般兵。

 注視すべきは魔法使いだ。

 自国もそうだが、魔法使い自体、数は限られている。

 その為、何処かに魔法使いだけで固まった精鋭部隊のような一団が見えるはずなのだが......


「可愛い女の子いた?」

「主は何を探しとる」

「可愛い女の子」

「で、めんこいのは見つけたか?」

「だめだめ。むさいおっさんばっか」


 そんな台詞を吐きながらも2人の目線は、しっかりと目標を捉えていた。


 1人は自分たちと同じように、鮮やかな装備をした男。

 もう1人は自分たちと同じように、刀を帯びた男。

 王を守護する騎士様とは、かけ離れた格好の人物だ。


「“黄金の英雄”と先代の“天”じゃな......今の名前はなんじゃっけ? えすぺ......?」

「エスペルト。まぁ、今回は彼らとは戦わないから、どうでも良いけど」

「何を言うとる」


 秋仙と呼ばれた少年は、立ち上がる。

 それに呼応して、赤い甲冑を纏った一団も統率のとれた音と共に立ち上がった。


「え、嘘だろ? 今回の目的はルピナスの邪魔であって、キングプロテアの連中はーー」

「なに、我らの元大先輩に会って挨拶の1つもせんで帰ったら、“天地様”にどやされる。ぷろてあに寝返った裏切りもんは粛清よ」


 振り向かず歩き出す秋仙に、もう1人の少年は焦りながら、


「いやいやいや、ルピナスどーすんだ?」

「ぬしに任せた。大先輩の相手、嫌なんじゃろ? ほら、狼どもがこっちに気付いたぞ。直に来る」

「おい、丸投げすんなっ!」


 黄色の少年の叫び声を背に、秋仙そのまま崖を飛び降りた。



 ◆


 ルピナス王国の正面で睨み合いをして、早一日。

 ついに彼らが動きだした。

 ワーウルフは、千日紅国めがけて崖を駆け登り、戦鬼は、こちらに向かって来るようだ。


「それでは予定通り行きます。私は戦鬼と当たりますので、貴方は邪魔が入らないように援護してください」

「わかった」


 ライオールの返事を聞いたエスペルトも、行動を始める。

 ワーウルフが千日紅国を目標にしたのは、嬉しい誤算だったが、代わりに千日紅国が、こちらに仕掛けて来るらしい。


 すでに先頭では一般兵が、戦い始めている。

 限られた時間で、己が目的を達成する為に、エスペルトは駆け出した。

 その後ろに続く部隊が1つ。


 文官だらけの彼の師団では心許ないため、グラジオラスの師団から借りた部隊だ。

 彼の元に居ただけあって、司令1つで気持ち悪いほど統率の取れた動きを見せる。


 途中、真っ赤な団体が視界に入る。

 千日紅国の横槍であろう。

 あの軍は、ライオールが引き止めるはずなので、無視する。


 先頭に近付くにつれ、怒号や悲鳴が聞こえるようになった。


 2年ぶりの戦場。

 自身の身体が鈍っていないことを確認しながら、魔法で強化する。

 と、言っても先日の一件で戦ったばかりではあるのだが。


 先頭に到達した瞬間、自身の目の前に、人の半身が飛んできた。

 エスペルトは、飛んで来たそれを無慈悲にも斬り裂き、来た方角を見やる。


 人より大きな体躯、隆々とした筋肉、特徴的な角。

 戦鬼だ。

 真っ黒な鬼がキングプロテア兵を掴んでは千切り、投げていた。


 鉄の鎧など紙切れのように引き裂かれていく。

 その鬼に何人も群がって、剣を突き立て、弓を浴びせ、死に至らしめる。

 何度も見た光景だった。


 一般兵と人外の間には、圧倒的な力量差がある。

 それを数で補う、単純な話だ。

 もっともこの戦法が通じるのは、戦鬼・ワーウルフ含め、彼らの総数が少ないからであって、もし多かったのであれば、別の打開策に悩まされていただろう。


 が、それはあくまで一般兵に限る。


 戦場をぐるりと見回したエスペルトは、手前の戦鬼に跳躍する。

 振り下ろされた斧を、空中で回転し躱すと、戦鬼の首に刀を滑り込ませた。

 途中、戦鬼の硬い骨格に当たる感覚がしたが、構わず振り切る。


 それだけで、戦鬼の首が飛んだ。

 後続の魔法使いも、似たような芸当を見せた。


「ウォォォォオオ!!!」


 それを見た一般兵が歓声を上げた。

 これで士気が上がるのだから、安いものだ。

 戦況の盛衰を決めそうな場所を見極め、もう3体ほど斬り捨てる。


 3体目の戦鬼が崩れ落ちたところで、エスペルトは団員に指示を出す。

 予め決めていた位置に移動させ、戦線の維持を任せる為だ。

 やはり彼らは優秀で、エスペルト自身の手足のように動いた。


 今度は、目的の人物を探す。

 戦場の中でも、人気(ひとけ)のない場所を目指した。

 当然、周囲の人間はどんどん減っていく。


 彼を人物と言うべきか、などと考えているのと、それは現れた。

 只でさえ大きな戦鬼の中でも、一際大きい戦鬼。

 角・形相・筋肉、全てが他の戦鬼を凌駕していた。


 その戦鬼が、笑みを浮かべながら口を開く。


「......待っていたぞ、“天眼よ”」

「おや、これはこれは奇遇ですね、戦鬼の長」

「白々しいやつだ。貴様が俺に会いに来たことはわかっている」


 少数であるが、周囲でも互いの兵たちが殺しあっていた。


「周囲が少し騒がしいな」

「ははは。それが戦場ですよ」


 両者ら対峙する。

 騒音の中、2人だけが不気味な程静かだった。

 その静けさや殺気にあてられたのか、周囲の兵士たちが注目し始めた。


 七栄道の一角と、戦鬼の長の一騎討ち。

 戦場を大きく左右させる要素として申し分のないものだ。


「俺の周りには、それなりの重臣がいる。今日の為に用意した。意味はわかるな」

「あぁ、なるほど。必死さが伝わります。やはり貴方がたは、本気で決行するのだと」


 その言葉を皮切りに、2人は動きだす。

 周囲の誰もが一騎討ちをすると信じていた。

 が、両者は通り過ぎる。


「......えっ?」


 2人の刃が交差することなく、互いの兵士に降りかかったーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ