そして王女は……
「そして勇者は……」の国王と宰相と騎士団長の会話の直後です。
こちらを読まないと理解できない内容があります。
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「残酷な描写」は保険です。
「陛下、質問なんだけど…」
遠く離れた土地で勇者が『勇者』でなくなった日、
休憩中の茶を嗜んでいたところに、唐突に宰相が口を開いた。
本来であれば宰相といえども不敬罪待った無し…な口のききかたではあるが、気心の知れた仲であることから、部外者がいない場合に限り、国王からお願いしていたのである。
ちなみに同じような状況で「相応しい口調」であるときは、
国政に関わる話か、宰相がブチキレているときである。
「なんだ?兄者」
また、国王も宰相を兄のように慕っているため、
この時は「宰相」とは呼ばない。
「なんでマイケル王子の遊び相手に『彼』を選んだんだ?」
国王には30人の子供がいる。
そして30人目にしてやっと授かった男の子である。
そうでなくとも王子の遊び相手には高位の貴族令息・令嬢、或いは王宮に勤めている者の子供が選ばれる。
アルスは「認定士」であることを省けば、孤児院育ちの平民である。
幸いにもそこの院長が元教師であったため、院の子供達は優劣の差はあれ、下級貴族に負けずとも劣らない知識を有している。
院出身には、伯爵嫡男の教育係になったものもいる。
そんな環境で育ったアルスを慕っているためか、マイケルは年のわりには高い知識を持っていた。
当初、アルスを遊び相手にしたことを非難してきた貴族達は、自分の子供の馬鹿さ加減の現実に口をつぐんだのである。
しかしそれは結果論であり、やっと産まれた男の子の遊び相手に、後ろ楯もない平民を選んだ国王に苦言した貴族たちには何の落ち度もない。
「しかも決めたのが誕生前だっただろ?
王子が産まれたからよかったものの、たしか鑑定士は女の子だと言って……まさか!?」
そう、マイケルが産まれる半年前に鑑定士が見た結果は女の子だったのだ。
であれば、遊び相手には令嬢を選ぶべきであるが、国王が連れてきたのはアルス。
「……宰相……」
国王は窓に近づき、庭で騎士団長に稽古をつけてもらっているマイケルを見下ろしながら言った。
「あの子が産まれたとき、多くの民が祝ってくれた……
王妃も側妃達も喜んでいた……
騎士団長も我が子のように可愛がってくれておる……
昨年亡くなった母上も
『あの人にいい土産話ができました』
と泣いて喜んでくれていた……
王女たちも可愛がっておるよ……
少々度が過ぎるがね……」
年の近い王女は
「マイケルは私と結婚するのー!」
と言い、嫁にいった元王女は
「娘と結婚させますわ!」
と宣っている現実を思い出して国王は苦笑した。
「鑑定のことは儂と宰相しか知らぬ……」
国王は鑑定士に毎年安くない口止め料を払うつもりでいたのだが、マイケルが産まれた半年後に寿命で亡くなっていた。
「なによりあの子は健やかに育っておる……
何の問題もない……」
「……そろそろ仕事に戻りましょう」
宰相はメイドを呼んで片付けを命じ、マイケルが善き国王になってくれることを願った。
王子の生母は側妃ですが、
妃たちは超仲良いです。
とある侯爵が平民出の側妃を侮辱した結果、
社交界で村八分されました。
第二十王女が産まれた頃、
「床が下手だと女の子が産まれやすい」
というハウツー本を読んで落ち込んだ国王ですが、
王妃と側妃に全力で否定されました。
「「「「少し手加減してください!」」」」