えげつないほど大変な建設計画 2
結局町子ちゃんの本は参考にならないので見る事をやめた。
そして明日で建てる建物、場所、設備代までの全てを決めないといけないことに今更ながら気がつく。
「どうして途中で読むのやめたんですか!参考にならなかったのですか?」
……あれで参考になると思った八千代の考えが凄いと思う。
「八千代この本の中身本当に見て持ってきたの?」と試しに聞いてみることにする。
「そういえば見てないですね。町子ちゃんが目にくまを作りながら渡してきたんですよ。だから本より町子ちゃんの心配をしていて全く見ていませんでした。題名すら読んでなかったです」
……目にくま?もしかして町子ちゃん何日か徹夜してこれ作ってきたんじゃないか?もしくは深夜テンションで書いたとかも十二分にありえる。
しかもよく見たら「日記で感想待ってますよ」とか書いてあるよ完璧期待してますよね?やばいよどうしよう。
「なぁ……八千代中身見てみ?」といって本を渡すとここぞとばかりに各箇所を重点的にみて、読み進めるにつれてわかりやすいほどに顔色を桃色から苺色へと変えてゆく。
「こんなの卑猥です!誰ですかこんなの書いた人は!」と自分の同僚を批判、そのあげく記憶から抹消しようと、いつ覚えたのかわからないインフェルノとかいう強そうな魔法で本を燃やし、あげくどこかで買っただろう可愛らしい熊の縫いぐるみに頭を何回も打ち付けている。
相当こたえたのだろう、俺の顔を見る度に「卑猥です」といい顔を何度も紅潮させている。
そして一部始終を見ていたセシリアは、(クソに群がるハエ)失礼、珍しいものを見た子供のように俺の周りをぐるぐる回って、どんな内容だか聞きたがっているという非常にカオスな状況が町子ちゃんによって間接的に展開された。
しばらくして今はそんな悠長にしている暇はないぞと我に帰ると、この国には公園が無いのを思い出す。
何も建物を建てることをばかりに気を取られていたが、普通にみんなが遊べる公園などでもいいのでは無いだろうか?
敷地を囲える柵、木を生成する魔法、砂を発生させる魔法、そして水を溜めておける水道、遊具さえあればいいんだ。
簡単には言っているが、公園だけでもこれだけの物が必要なんだ。普段俺たちが置かれていた環境はかなり素晴らしい物だった。
だがしかし、立派な建物を建てるのには、これ以上もの物や技術が必要なわけで、日本で汗水垂らしてまで働いている土木作業員の人たちに、これまでないほどに感謝の気持ちを感じる。
そして公園がいいなと感じたのにはもう一つある。
アルトリアの人々は普通に過ごしているが、この国は八千代共々暮らしていた日本に対して、子供の数が非常に多い。
その上子供たちは日頃何をするわけでもなく街中で喋っている。
遊具と言えるものは日本と同じゲームくらいで、中高学生向けの物が多く、幼稚園生くらいの子から小学生くらいの子には理解できるゲームもなく、自由に外で遊べる場所がないようだ。
そしてそれを示唆するかの様に一般的に大人の数が子供に比べて少ないのは街を見渡しただけで容易に想像がつく。
余談だがこないだロリコンの尊師、暦坂ロリ人とか子供達に呼ばれた。
どこからロリコンという言葉を聞きつけて使ってるのか知らないが、連れているのは19歳の自称皆んなのお姉さんだぞ、小ちゃいくはないぞ。
そして公園を作ることを目標として始めたのはいいが公園の柵や木や砂、他にも水道などの物を作らなきゃならないわけで。
それをできるものは俺たちの知り合いには一人もいない、ついでに1日だけ日を伸ばすことも渋々セシリアに相談してものの……。
「まぁいますわね。それに日にちも2日くらいなら伸ばせますわよ?
……まぁでも私に徳がないと中々了承しかねますねぇ。この世は与える物と与えられる物がいます。貴方は言われなくてもどちらかお分かりでしょう?」
と対価を要求してくる。……まじかよこいつ面倒くせぇ。
「この前宿屋にあった本」
「持ってますの、そんなのいらないですわ」
「お菓子」
「私のところでは有名なパテシエさんさんを何人も雇ってますわよ!他にはなくて?」
「しゃあない、うちの妹が隠れて読んでたBL雑誌、それで勘弁してくれ、それしか後がない。」
八千代に目配せすると、「ダメでしょ」って言う言葉が顔から伺える。
「BL雑誌とはどんなものなのかしら?八千代さんは知ってらして?」
「ダメです〜!セシリアちゃんにはまだ早いですよ!」と言い熊ちゃん人形で顔を隠す。
女は古来より男のイチャイチャが好きと相場が決まっている。意外とセシリアなら乗るぞ。
八千代が顔をわざわざ隠したを察したらしく、何かと八千代に対抗心を燃やしてるセシリアは、予想通りこちらの手の平に乗ってくれた。
「八千代さんが見れて私だけが見れないのはおかしいですわ。
凪人さん!是非私にBL雑誌とやらを持ってきてらして、これはですわよ!いいですわよね?」
ちょろいちょろい。後には引けなくなったと八千代も腹をくくり、明日までに俺が隠してある場所を知っている妹の二十本棚、その一番後ろの比較的読みやすいBL雑誌と公園の簡易的な遊具等なんかを持って来るみたいだ。
後日、簡易的と聞いていたのだが、あまりに重たそうな遊具や柵を軽々と持ってきて、俺の目の前に持って来る八千代。
セシリアはというと俺の約束を守ってくれたらしく、友達らしき子たちを連れてきてくれた。
予め設計図を1日目で作れていたので、作業は途中ぐだぐだだったが、なんとかまとめてそれらしき物は出来た。
最初にエウリアさんにも協力してもらい一般人を近づけなくしてもらいとりあえず場所を作ることはできた。
まず八千代と俺で政府支援の柵を組み立て、どこで覚えたのかわからない八千代のロックという魔法である程度の穴に埋め固定をし設置していく。
そして砂場の方では、セシリアの友達が頑張って既存性の砂と、(彼女が)土魔法で作った砂を混ぜ、それをセシリアの執事の旧友である大工おっちゃんが、持ってきてくれたレンガブロックで囲み、中に砂を平らに敷き詰めてゆき完成間近に差し掛かっていた。
八千代と俺が組み立てた柵の手前には、一定間隔で、これまたセシリアの所属している学校の友達複数人が木と植物の魔法でいくつか立派なものを建ててもらってる。
一番の難所だった水道は八千代が持ってきた日本の水道器みたいな物を作業開始から4時間かけて俺がひたすら説明書を読んで大工のおっちゃん達と作った。途中水をどこから供給するか目処はたっていたが、自分たちの独断では出来ず、エウリアさんに相談したとこら僅か1時間ほどで割と近くの貯水湖からつながる井戸ににこの世界にも存在はしていたパイプ見たいなもので職人さんと一緒に繋げて作ってくれた。
そんなこんなで朝七時辺りから作業して10時間半、なんとか暗くなる前には公園が完成した。
水道水の方がいささかが心配だが、その分水道の施行日を遅らせてもう少しエウリアさん側でなんとかしてくれるらしい。遊具も八千代のおかげでいっぱいあるのでうまい具合にできたと思う。
この後俺はいつのまにか決まっていたセシリアの執事として夜の9時半まで働かなきゃならない。面倒くさいしサボろうかなと思っている矢先、わざわざこっちまできてBL雑誌とやらの代わりにと称して俺に1日だけ休みをくれた。
日にちを伸ばしてもらい、なんとかノルマ達成はできたが、後に知った、この世界に俺が最初に文明をもたらしたものが、公園より先にBL雑誌と聞いた時、心底このくだらなく、そしてえげつのない世界を深く恨んだ。