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えげつない作戦会議と一滴きの可能性 3


「おいセシリア早く起きろ」


「………ZZZ」


「おい元鳥頭のゴスロリ幼女、さっさと起きろって」


バキッ!ボカ、ドス。

寝てるにもかかわらず的確に狙ってくるあたり、本当は起きているんじゃないかと思ってしまう。

「頼むから起きてくれ」


「…………後少し、5分ほどくださぁ…ぃましぃ」


そう言われてから早10分、待ったのに起きてくる気配が一向にない。

かと言って『ふざけんなさっさと起きろ』って布団を引っ剥がすものなら、これまた器用に寝ながら4の字固めをされる始末。

結局のところ起きるのを待つしかないのかもしれない。


「ふぁぁ〜。私はなんて夢を観ていたのかしら、あのアークネスと凪人が密会なんてないないないですものね」


「あっ!やっと起きたッスか?」


「………ひいっ。いやいやいやこれは夢ですわ、そうだもう一度寝て起きたら全て元通りですわよね?さぁ寝ましょう、おやすみなさい世界」


…………。


「おはようございますですわ。右よし、左よし、上よし、やっぱり夢ですしたわ…」


「バァ!下ッスよ〜。ダメですねーちゃんと下も見ないと」


「ヒギェッッ!ア、アークネ、夢じゃな……い?」


今度ばかりは気絶はしないものの、アークネスによって驚かせられて勢いよくベットから転げ落ちていった。


「と、とりあえず落ち着けよ」


「凪人がいる……やっぱり夢じゃない。じゃあ私が人間と魔族のハーフって話……」


こんななりでも一国の主的なポジションだからどうなのか、肝心なところはしっかりと聞かれていたらしい。


「一旦落ち着いて聞いて欲しい。アークネスについては置いといて、これからその件について知っているアークネスに話してもらうから目を逸らさないで聞いてくれ」


周りにいる八千代や町子ちゃんを見て冷静になったのか、ちゃんとした姿勢を向けてアークネスを見ている。


「うっ、なんか見られると緊張するっスね。まぁいいや。とりあえず今私が見て言えるのは嬢ちゃんには見間違いじゃなく本当に血が混ざっているということ、そして、その血が昔に比べてだんだん強くなってきていることぐらいっスね」


「私に……魔族の血が?」


「そうらしいです」


「じゃあ皆より魔力が強かったのも……」


「十中八九魔族の血が関係してると思いますよ?」 


状況が飲み込めてないのか、唖然とした表情をしているがそれも仕方ないだろう。

今まで人間のように育てられ、振る舞われ、急に魔族の血が混じっているなんて言われた手前、ほうけた表情の一つも出てしまうが……。



「……それはどのくらい強くなっていますの?お願いします教えてください。

私達の国には貴方の使えている魔王に親しみを持ってくれている(たみ)もいますわ、でもそれはほんの一握りにだけ。

彼らは未だに第6、7魔王さんのふたりどちらかに良くしてもらった事を言えずにいます。

恐らく孤立を避けてのことでしょうが、きっと貴方達を馬鹿にされてキレていたのでしょう、そんな彼らの様子を路地裏で何度か見たこともあります。

でももし私が魔族の血筋だと知れば、面と向かってアルトリアを指揮することも出来なくなります。抑えていた民の暴動も起きてしまいます、だから…どうか今の現状を教えてくださらないでしょうか?」


気を取り戻したのか、次の瞬間、言葉を飲み込んで、そして選んで話したセシリアの目には焦りと覚悟が見えた。

プライドが人一倍高いあいつが頭を下げる事なんて、これまでも、そしてこれからもないだろうと思っていたのだが、それほどまでにこの国を愛しているだろう、相当な決意をして話しているのが伝わってくる。

セシリアの言う通りこの国、アルトリアでは一部、魔族に抵抗がない人もいるのだろう、けれどやっぱり大衆の大部分は魔族のことを根強く嫌っているのはヒシヒシと伝わってきていた。

アークネスの言っていた第1から第5の魔王たちが原因なのか、元々相容れない者同士なのか、そんな事は今関係ないが、もし自分たちを魔族の血を受け継いでいる奴が治めていたなんて知ったらどうなるかは容易に想像つくだろう。


「……私の感覚だと7:3の比率ってところッスかね、ちなみに前者が魔族です。

それから見た感じ魔族としての覚醒も近くなってきているような気がします」


アークネスもよほど深刻そうな顔のセシリアを見て察しったのか、いつも以上に真剣に話している。


「なんとなく……理解しましたわ。確かに私もここ数年、魔力が飛躍的に上がっているのを感じてはいましたし、所々皮膚が変わっては戻ったのを見てきましたが、まさか魔族に近ずいていたからなんて思いませんでした。

それからさっき覚醒が近いと言っていましたけど私はあとどのくらいで覚醒してしまうのでしょうか?」


「うーん、そればかりはやっぱり個人差がでるからわからないッスけど、少なからず今週にはより強い症状が出てくると思います」


そういいながら横の何もない空間をもぞもぞと触るアークネス。

少し経つとその何も無い空間から一枚の古びがかった紙が出てくる。

空間収納魔法なのだろうか?とても便利そうだが横にいる八千代が興味深々でみる様に若干不安を覚えた。


「それじゃあセシリアの嬢ちゃんにはこれに血を垂らして貰うっスね。

……っと、その前にこの紙について兄貴たちにも説明しましょう。

この紙は100年に一度しか取れない神墨樹って言う木の素材でできた、魔族の全てが判明する道具なんスよ。

ここの中心、丁度紋章が描かれたところに血を垂らすとあら簡単、血の成分から今の状態、それから魔族周期、用は覚醒の時期ですかね、あとはどの魔族の血が流れているかの血統が判明するッス。

だから嬢ちゃんの場合は魔族周期と血筋がまず判るッスね。

ちなみに一枚で国が建国できるくらいの価値なので兄貴達に免じて持っているうちの一枚を使わしてあげるッス、そのかわりこれから兄貴を不意に殺さないっていうのと、私とも仲良くしてくれるならあげれますけど?」


「え?高い!わ、わかりました条件のみますし、仲良くもし、しますわよ!

それに聞いていた情報とは全然違う人でしたけど、話してみて悪いとは思えませんでしたし…。

でもど、どうしましょう魔王の側近と友達になるなんてラハムが知ったら自害するかも……」


「本当ッスか?やった、人間?の友達初めてできた!うれしい、うれしい。

あ、でも後半聞こえなかったからもう一度言って欲しいッス」


「いえなんも言ってないですわよ?」


「本当?」


「本当」


友達になれたのがよほど嬉しかったのか初めてあんなに顔がニンマリしているアークネスを見た。

セシリアの方はちょっと動揺しているけど、見た感じ仲良しには慣れそうな気がしたのでひとまず安心はした。


「アークネスさん?ねぇアークネスさんってば、顔をそんなにニンマリさせてないで聞いてくださいな、本当に使っていいのですわね?」


「あ、あーもうそんなの聞かなくていいッスよ、私とセッちゃんとの仲じゃないですか〜!そんな紙切れちゃっちゃと使っちゃってくださいな」



「……か、紙切れ?貴方これ国家予算と同じくらいなんて言っていたのに紙切れ呼ばわりしないでくださいな!しかもセッちゃんなんて馴れ馴れしい呼び方はしないでくださいまし!

……でもありがとうございます、使わせていただきますわね。

あれ?……えっと、これに私の血を垂らせばいいのですわよね?じゃ、じゃあどうしましょうか?何か採血するものが必要ですわね」


「……?あぁ採血の道具ッスか?ちゃんと用意してますよ、はいどうぞ、ちゃちゃっとやっちゃってくださいッス」


「ええありがとうございますですわ。なんだか悪魔と恐れられたあなたから貰うと、少し変な感じがしますが使わせていただきますわ」


思った通り不器用なようで必要以上に血を取ってしまったセシリアだか、集中しているのか手に力が入り小刻みに震えている。


「こ…れ…で…いいですわね」


さらに手を震わせて紙に血を垂らす様はまるで生まれたばかりの小鹿のような様子だった。

しばらくすると、垂らした血によって紙に(ひび)が入ったかのように四方に散らばって流れていき、突如青白く光って文字が浮かび上がる。



《アクセル・フォン・セシリア》


 17歳 女性 〈処女〉


健康状態:好調


魔族周期:5日後半覚醒、及び10日後覚醒後、完全体へ成長


魔族系統:シトリ及びアンドラス


診断結果

二つの悪魔の系統を持つため、完全体後魔力は10倍近く増すものの、シトリのバットステータス〈相手の服を無条件で脱がしてしまう〉、アンドラスの〈不和を蒔く〉〈術者及びその仲間を殺す〉と言うバットステータスがあります。

これらを無くすには完全体になる前に隔離しステータスを改変する必要があります。

人間を保つにはバットステータスをなくさないといけません。



「ね?すごいでしょう?これで1000年以上も前に完成したとは思えないッスよね」


「あの……一部関係のない情報が出ているのですがこの紙はふざけているのではなくて?」


「いや紙の性質上、自分の知られたく無いことが一つ暴露されるっていう効果があるんでふざけてはないっスよ?言ってなかったでしたっけ?」


「八千代さん凪人は?」


「もちろん瞬間見えないように目と耳はやっておきましたよ」


「ナイスです、隠せました。……それでも系統が二つあったのは驚きですわね…シトリとアンドラスですか。それにバットステータスも厄介ですわ」


「そ、そうですね。このままだと3つ目の〈術者及びその仲間を殺す〉というのが困りますね」


おい、アークネスとの約束はどこいった、間接だからセーフとか言うんじゃねぇだろうな。

こっちとら知らない間に攻撃されていて、知らない間に攻撃された箇所が治って痛みも一切感じてないなんて逆に怖いんだよ。


「で?術者及びその仲間を殺すっていうのがバットステータスに中のひとつにあるんだな?」


「そうですわね」



「じゃあそれはバットステータスと書いてあるだろうけど、実際はお前の系統の悪魔たちの性格と人間にすることだな。

きっとお前に不利益をもたらすからバットステータスなんて書かれてるんだろうよ」


よほど意外だったのか、俺の言葉に八千代を含め一同がびっくりした。


「な、なんで凪人さんそれだけでわかるんですか?

私はてっきりその悪魔の固有の能力かなにかが、セシリアちゃんに引き継いだくらいに思ってましたよ?」


「そうだよ、ここまで頭が回るんだったら引きこもりなんかもったいないよ。僕が上司だったら普通に部下として欲しいくらいだもん、その洞察力」


「なんかわかんないっスけど兄貴すげー!尊敬しますス」


「ふん、凪人のくせにやりますわね」


こんなにも褒められた手前、悪い気はしないのだが、中学生の頃、自分には他とは違う何かを持っているとか思って厨二病を発症していただけなんていえない。

ましてやその過程でソロモン72柱を気合で暗記していたなんて恥ずかしすぎて死んでしまう。


「セ、セシリアの系統がシトリとアンドラスだって聞いたからなんとなくだけどね。それよりシトリはまだなんとかなるけど、ひとまずアンドラスをなんとかしないといけないな」


「えぇ、幸いステータスを改変すればなんとかなるみたいとは書いてあるのでしたよね?なら、それができるような能力の人を探さなくてはなりませんわね」


「で、でもステータスを改変する能力なんて持っている人いるんですか?」


「候補なら何人か、私がギルドで見た中では相手の能力値を変更する能力、悪い能力を抑える能力、それから人と自分の状態値を変更する能力くらいですわね」


「でもどれも能力に依存するものだからステータスには影響しなさそうだし、それこそセシリアちゃんの状態を引き継ぎたくなんてないだろうね」


「でも行ってみる価値はあると思うっス。私も知り合い回ってきます。確か一人いい人がいたような気がするんスよ」


「やっぱりお目当の能力を持っている人なんてなかなかいないし、それこそ10日以内に見つけて変えて貰わなきゃならないなんて厳しいよな」


そんな話をしてたら、いつの間にか夜ご飯が頃合いな時間帯に迫っていた。まだ話したいことは幾らかあったが、みんなのお腹の音を聞いて仕方がないと思ってしまう。


「今日は時間も遅いし、これくらいにしよう。

みんな今回のことで新たにやるべきこと、そして希望ができた筈だ。

俺はBL本。八千代と町子ちゃんは、この世界を少し知れたことと、あとやるべきことは浅田の存在。

アークネスは知り合いに掛け合ってみる、でセシリアは現状の把握とやるべきことはステータスの改変者を探すこと。

当分はこれを目標に見据えて行動しようか。

それから明日は心当たりのある人をさがすのと、同時進行で俺の義手、義足製作をなんとかしたい」


「そうですね……わかりましたわ。私もなんとかバレないように静かな場所にいるので、その間にお願いします」


「「じゃあ解散!(ッス)(ですわ)」」




そんな話で終わった会議作戦会議だったのだが、夜も老けてそろそろみんなが寝だす中、めちゃくちゃ可愛い部屋着の町子ちゃんがいる部屋で、一種の拷問みたいく褒めようのない本の感想会をしている。


「やっぱり下ネタが少なすぎたと思うんだよね、凪人くんはどう思う?」


「……いやでも多すぎだと思ったんだけど」


「え〜でも僕的には少なめにしたと思うんだけど」


「じゃあ、もうすこし多めでもいんじゃない?」


「え〜でもやっぱり下ネタ多めだと読者が恥ずかしがっちゃうじゃん?僕はよくてもやっぱり読者がどう思うかなぁって」


おい、どっちに転んでもダメじゃないか、一番面倒くさい女子のそれなんだか。どう返答すればいんだよ。


「えっと……やっぱり女性と二人っきりはちょっときついからそろそろ自分の部屋に戻ろ……」


「え〜駄目だよ、だって凪人くんここを出たらすぐ不幸な目に遭うじゃんか。僕だってこの二人っきりの空間はどうかなとは思うけど安全のためだって」


……違う、違うんだよ。むしろ今のこの瞬間からすでに不幸は始まっているんだよ。

アークネスと飯を食いに行ってた時だってなんでか先回りして逃そうとしなかったじゃん、もっと女子の部屋ってドキドキするって聞いたのに一切しないもん。

二人っきりとか言ったけど、この状況はいつまでも帰ってくれない友達と同じくらいの空気感だし。


「でさぁ、一番気に入っているのは《男の人は勃てる時にはイメージしま……》ってところらへんなんだけど凪人くんはどこが一番よかった?」


話が途切れたと思ったのだが、何でもなかったかのように続ける町子ちゃん。

あぁ、駄目だ。この本の話は永遠と終わらないような気がする。

逃げることも出来ないし、一旦休憩がてらトイレ行くしか逃れる手段はないのかもしれない。

いやトイレ行くだけなら逃れられないけれど、八千代が気付いて町子ちゃんの部屋まで来てくれるまでの時間稼ぎにはなるはずだ。


「ごめん町子ちゃん、ちょっと漏れそうだからトイレ行きたくなってきたから行くね?」


「えっ、じゃあ僕もついてくよ」


「………え?」


「いやトイレ行きたいんでしょ?僕もついていってあげるよ、じゃないと不幸な目に遭っちゃうでしょ?しかも片手片足ないわけだし……」


……しくった。八千代か町子ちゃんが近くにいないと不幸なことが起こるのを忘れていた。

それに手と足を失ったのも裏目に出たか。

これは八千代が来ないと本格的にまずいのかもしれない。


「いやぁ、さすがにトイレはちょっと恥ずかしいし、すぐ近くだから大丈夫だよ。

棒があれば手足も支えられるしさ、それに町子ちゃんだって一人の時間も欲しいでしょ?」


「いや、照れなくていいって、それこそ僕は大丈夫だからさ、ほらさっさとトイレいって話の続きをしようよ」


なんてこった、これはどうしても一分一秒たりとも離れたくないみたいだ。

畜生!こんな状況じゃなければ飛び跳ねるくらい嬉しいのに!


「いやでもここのトイレってドアみたいなのがないから、その、あの、見られちゃうじゃん」


「僕なら問題ないよ。そんなの創作用のBL本で腐るほど見てるし、生は初めてになるけど気になるじゃんか、凪人くんのビックマグナム。それに今後の資料のお世話になるんだしね」


「………ん?今資料のお世話になるとか言ってなかったか?」


「……言ってない」


「いや、言った」


「…‥言ってない。……それより早く行かないと膀胱炎になっちゃうよ?」


露骨に話を逸らしてきやがった。

これ絶対資料云々が本音だ!

何が嬉しくて幼女の見た目の僕っ子に大事なところをお披露目せにゃならんのか。

というかさりげなくビックマグナムとか人が気にしていたこと言いやがって、なんででかいこと知ってんだよ!

妹にも同じこと言われたわ!あ、あいついらない情報までちくったんじゃねぇだろうなぁ。

それ…よりも…やばい。

考えている時間にもさっきまでは全然感じなかった尿意が急に気だした。

めちゃくちゃトイレ行きたいんだけど、誰か、八千代、本当頼むから気づいて早く来てくれ!

お願い漏らしちゃうから!


お久しぶりです。やっと時間が作れたので戻ってきました。

来週は紅茶の方を出そうと思っています。

それからこの話から派生したR18の幕間話を作るか悩んでいます。

作った場合ですがあくまでもR18なので18歳未満は推奨しません。というか見ちゃダメですよ?


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