表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/42

3 お叱りを受けて、人間にさせられてしまったわたし。体が重い。もう、お父さんにもお母さんにも会えないの?

 光が収まって、目を開けると、そこはお城の中ではなかった。森の中でもない。


「ここは……」


 森のはずれだった。


 前は、人間に踏み固められた地面が広がっている。遠くに、レンガでできた壁が見える。


 そして、後ろを振り返ると、森をなす木々が。


 だけど、知らない場所みたい。不気味なほど静かだった。


 本当にここは、わたしの住んでいる森?


 わたしは立ち上がって、よろけた。


 体が重い。


 それに、足元に生えた草を見、手を伸ばす。触れられた。


 でも、おかしい。


 わたしの知っているこの草は、こんなに小さくない。触れられるくらいに近づくと、わたしの体と同じくらいの大きさの草なのに。


 今は、触れているというのに、わたしの手よりもずっと小さい。


 わたしの体が、大きくなったんだ。


 そんな……わたし、本当に、人間になっちゃったの?


 森の中に向かって飛ぼうと力んだけど、体はその場から動かなかった。


 わたしは愕然とした。


 立っているのもしんどいので、また地面に座り込んだけど、このままじゃどうしようもない。


 立ち上がって、よろめきながら三歩歩いた。すると、木がもう目の前にきた。移動スピードは、妖精よりも速いみたいだ。


 木の幹に手をあてて、ぜえぜえと息をする。


 人間の体って、なんて重いの。


 何度も座り込みそうになりながら、わたしはゆっくりと森の中に入って行った。とりあえず、家に帰りたかった。


「みんな……どこなの……お父さん、お母さん……」


 いくら歩いても、見覚えのある場所にはたどり着かない。


「森の外から家まで、こんなに遠かったっけ……?」


 ふいに目の前が開けた。


 ここはどこ?


 森の暗さに目が慣れていたので、まぶしくて見えない。目を細めて見ると、そこは、


「え……?」


 王様に追放されて、最初にいた森のはずれだった。


「そんな……」


 この森は、人間が入れないようになっているのだ。


 そのことを思い出したわたしは、最初と同じ場所で、同じようにしてへたりこんだ。


 わたし、もう妖精じゃないの?


 もう家に帰れないの?


 もうお父さんにもお母さんにも、オルトゥスにも会えないの?


 視界が涙でにじんだ。


 どうしよう。どうしよう。


 ひとりぼっちだよ。


 もう人間としてしか、生きていけないの?


 それに、どうやって暮らせばいいの?


 家もないし、ご飯もない。今まで食べていた料理は、森の中で採った食材からできていた。


 そもそも、体はこんなに大きくなってしまったし、妖精だった頃と同じご飯を食べても、お腹いっぱいにはならないだろう。


「どうしよう……」


 このままでは、死んでしまう。


 森には帰れない。……となれば、人間の町か。


 わたしは、遠くのれんがの壁を見つめた。


 遠いが、この体なら、二十歩くらいでたどり着けるはずだ。


 二十歩も歩かなくちゃいけないの……?


 でも、やるしかない。


 立つのが大変で、わたしは四つん這いで歩くことを覚えた。こっちのほうが、ずっと楽だ。


 なんとか壁にたどり着いた。


 だけど、ここからどうしたらいいのだろう?


 立ち上がってみても、壁はわたしの頭より高い。


 この中に、人間の町が広がっているのは知っている。いつもは飛んでいたから、難なく中に入れたけど、この体じゃ入れない。


 ピンチの時は羽が出るかも、と思って、飛ぶ姿勢になったけど、やっぱり体は浮かなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ