1章 5 気づいてらっしゃいますよね?
バレてるよな。
明らかにバレてるよな。
だってさっきから押し入れの中からイビキがバリバリ聞こえてるもん。沈黙が逆に怖い。
我が幼馴染みはせっせとイビキを聞こえないふりして料理をしていた。
「ねぇ。」
「はひぃっ!」
急に話しかけられ驚いてしまった。やばい。ただでさえイビキが聞こえるのに...。これ以上怪しまられる理由には...。
「昨日から何か変わったことある?」
絶対気づいてらっしゃいますよね?
「と、特にないかな~。」
「ふーん。」
再び沈黙。
「何か悩みとかある?」
いやだから気づいてらっしゃいますよね?
「な、無いかな。」
「ふーん。私に隠してることある?」
一気に核心に迫ってきた!
「そりゃあるよ。」
「例えば?」
「言えないから隠してるんだよ。」
「そう。」
メチャ怖いんだが...。
「昨日カップ麺食べたんだ。」
「え?あ、そうそう。」
「よくそんなに食べられたね。何ならこれからご飯増やす?2人前分とか3人前分とか。」
...。押し入れに誰かいるって気づいてらっしゃいますよね?2人前とか3人前とかの部分強調してきたんですけど。
「そ、そうだね。ほら俺育ち盛りだから。」
結局そのまま幼馴染みはそれ以上何も詮索するどころか一言も喋らず俺の家をあとにした。
最後に蔑むような目を向けて...。