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九章 宣戦布告・十七

私は出入口の所からルカを見守る。

負けることは無いだろうけど、観客の反応がどうなるのかが心配だ。だってさっきのアレを見た後だと、ね……。

だけどルカは迷いなく、スッと外へと一歩踏み出す。姿勢良く、隙のない歩き方。規律正しい歩き方っていうのかな。アレだね、いわゆる軍人というかそういう組織に所属して訓練を受けた人というのがわかる。隣を歩いているクロード王女の剣士も同じ感じ。

二人は中央の整備された場所、戦う場所に着くと観客席がざわつき始めた。そしてすぐにパニックに状態になって、お客が我先にと逃げ始め、凄い悲鳴とか怒号が響く。

「あっ!」

思わず声が出た。

観覧席から何かが闘技場に落ちていった。多分、この場から逃げるために押しのけられた人だと思う。

ほんとーーに、ルカってヤバいんだね……という認識をまたあらためてし直した。

「セリ」

声の方を振り向いた。声の主は一人しかいないんだけどね。

「セリ、あなたはこの光景を見て何も思わないのですか」

今日は装飾の控えめな、やや濃い目の青いドレスを着たクロード王女が訊いてきた。

「ルカは大丈夫かな、ぐらいですよ」

クロード王女は私の答えにえっ? という様な目を一瞬してまた話しかけてきた。

「観覧席から観客が闘技場に落ちています。あの高さからならば、骨折程度はするでしょう。それを見て何も思わないのですか」

「はい、なんとも」

多分、二階か三階建てビルとかアパートぐらいの高さはあるんじゃないかとは思う。それなら死ぬ事は無いと思う。多分。

それより私はルカの方が心配なので、クロード王女への返事も生返事だ。それに、見知らぬこの世界の人々がどうなろうと正直わりとどうでもいい。もちろん、アロイスやマユキ、カイ、あとルカに何かあったら心配するし、できる事があればするけどね。そんな私の答えが気にいらないのかまだ何か言おうとしたクロード王女だったけど、いきなりドンッと大きな音が響きわたり、音の発生源方向、闘技場の方を向くと空一面が金色になっていた。

「ん、えっ!? ルカッ!」

私はルカが大丈夫なのか不安になって、すぐに視線をルカに向ける。ルカは微動だにせず、落ち着いて周りを見ている様だ。よかったとほっとする間もなく、空から金色の光がキラキラと降って来た。ほんの少しの時間、多分一分ぐらい。キラキラが消えると今度は闘技場に女性の声が響いた。


「鎮まれ、民達よ! 我が名はゾンネ。ヘルブラオの知恵である! 我等の偉大なる皇帝陛下のお言葉を聞け!」


すると暴徒と化した観覧席の方がぴたりと静かになった。もう荒んだ空気ではなく、のんびりと穏やかな空気になってた。おかしい。なんでこんなすぐに落ち着くの? もしかしてあのキラキラのせい、というかそれしかないよね。

闘技場を見回していると、皇帝の声が響いた。遠くて皇帝達がどこにいるのか全く見えなくてわかんないけど。


「皆の者、紹介しよう。最後の試合はフラージュ国、クロード王女の騎士、セヴラン。そしてセリは剣士ルカだ。……そう、三国を滅ぼし、我が国土の一部を強奪した男だ! 本来ならば我がヘルブラオの地を踏むなど許し難いが、セリの剣士だという事で特別に我がヘルブラオの地を踏む事を許可しよう。さあ、己の主のため、その力を存分に振るうがいい!」


(えっ!? 三国? 三国って三つ国を滅ぼしたってこと!?)


私は観客の、ほんわりというか、生温いというか、なんか気持ち悪い温度の歓声の渦中にいるルカをガン見した。

「そりゃ悪魔とか言われるわー……」

私は遠い目でぼそっと呟いた。


試合開始した闘技場の中央では、ルカも相手も動かず立ったまま。しばらくすると、相手が審判に何か言ってて、審判がオロオロしてる雰囲気。でも話は纏まったのか、審判が拡声器を持って声上げた。


「え、えー。騎士セヴランの試合辞退により、クロード王女殿下は敗退となります。これにより、勝者は剣士ルカ、セリ嬢の勝利となります。我が国が誇るリーンハルト皇子殿下の婚約者、栄えある花嫁はセリ嬢に決定しました!」


「えーっ!?」


私の叫びと観客の生温い歓声が闘技場中に響く。

いや、ルカが勝つのはわかってたから別にそれに驚いてはいない。私が驚いたのは勝負を辞退した騎士の方。だって王女の騎士なら、勝てないってわかってても勝負するものじゃないの? いわゆる外聞的に。

「ではセリ嬢、こちらへどうぞ!」

審判兼司会の人が私のいる方に向かって声を出す。

ここにいる兵士の人も「どうぞ中央へ」とルカ達の方へ行く様促してきた。

あんな大勢の観客達の中に行くのはやっぱり怖いし足が竦む。

けどルカが私に向かって手を差し出した。私はパーカーの胸元を左手でギュッと握り、何度か息を吸って吐いて心を落ち着ける。

(よし)

落ち着きを取り戻した私は闘技場へ一歩踏み出した。

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