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九章 練習試合・二

時間がなかったので、私は手短に話した。なんせ五時過ぎ。時間のズレを考えたら結構ヤバい。なのでかなり大雑把に話したけど、アロイスは概ね理解したみたいだった。


「成程ね。セリのおじいさんがねー」

アロイスがいつもの食卓の席について、コップの水を飲みながら話す。

外で話すのもなんなので、カイの屋敷に戻って話をしていた。

もちろんカイとマユキも一緒だ。

マユキは特に何の反応もなく、うんうんと私の隣でにこにこしながら大人しく話を聞いていた。

今も椅子をくっつけて私の左側にぴっとりとくっついている。可愛い……。本当に可愛いなぁ~。その可愛らしさにたまらず、頭をいいこいいこと撫でると、マユキは嬉しそうにこっちを見上げ、さらにぎゅうぎゅうと私にひっついてくる。可愛い……。ほんっと、可愛いのエンドレス。

その可愛さとは反対に、カイは何とも言えない複雑そうな表情で眉間に皺を寄せていた。

「あ、でもおじいちゃんは、ごく普通のおじいちゃんだからね! 本当に!」

私は慌てておじいちゃんのフォローをする。危険人物と思われても困る。

「いや、普通じゃないんじゃないか、それは」

珍しく静かだったカイがつっこんできた。

「いやいや、普通だって! 普段はちゃんと造園の仕事してるし!」

私は即座に否定する。だって、ちょっと珍しい特技があるだけで、他は少し孫に甘い優しいおじいちゃんだ。

「残念だけどセリ、今回はカイの方が正しいよ。だって、体術や剣術で、あんなに的確に人の急所を狙う技を教えこむなんてね。俺だってちょっとびっくりするほどの流れだったからね」

「う…………」

現役暗殺者にそう言われては返す言葉も見つからない。素直に認めればいいのか……? もう。

「でっ、でも! 別に狙って打ち込んでるわけじゃないよ!?」

「狙って打ち込んでるわけじゃないなら余計にたち悪いからね、セリ。息を吸うように自然に急所を狙えるなんて、それはもう立派な暗……」

「あーあー! 知らない知らない! 聞こえなーい!」

私はアロイスの言葉を遮り、最後の抵抗をした。

「ま、いいけど。とにかく、今のままじゃセリは確実に皇子達に始末される。なので、セリを護るために今から特訓でーす」

アロイスが楽しそうに宣言した。

しかも言い方なんか軽っ!

「まず、セリの今の剣術が半端。最初に習った剣術を上手く隠しきれてない。余裕がなくなると、本来の剣術に戻ってあざとく急所を狙ってくるよね。死角から急所を、あざとく」

くっ……! 二回言わなくてもいいじゃん。アロイスめ。

「あと、御前試合なんだから手は出さない。これはあくまで剣術。実戦じゃセリの方が正しいけどね。ま、他にも色々あるけど。とにかく真っ当な剣術に見えるようにしてあげるから。安心していいからね、セリ」

「う、うん」

可愛らしさをめっちゃ強調した笑顔を見せて言ってくれたが、その背後にはキラキラの笑顔とは正反対の、ドス黒い様な、罠にかかった獲物をいたぶるのが楽しみだなー? みたいな不穏なオーラが立ち上っているのが見えるのは気のせいだと信じたい……。

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