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九章 招待状・二

ドアを開けたらカイがいた。

「お邪魔しまーす」

ドアの先はキッチンだった。料理をしているカイが驚いて固まった。代わりに食卓のある方から可愛らしい声が聞こえた。

「セリー!」

マユキが走って来て私の所に飛び込んで来た。

「おかえりなさい、セリ!」

私はマユキをしっかり受け止めた。

マユキはぽすっと私のお腹に顔を埋め、匂いを嗅ぐとすぐに顔を上げた。

それがもうほんっとにキラキラと可愛い笑顔で私はその可愛さに瞬殺された。

「ただいまぁ、マユキ!」

私はしっかりマユキを抱きしめ、いい子いい子と頭をなで回した。

「おい、こっちには来るなと言っただろう!」

固まっていたカイがはっとして怒鳴る。

マユキはチラリとカイの方を向き、すぐまた私を見上げる。

「僕、ちゃんとお留守番してたよ」

マユキが褒めて褒めてと全身でアピールしてくる。どうやらカイのことはスルーらしい。

「うん。えらいえらい!」

私は膝をついて全身でぎゅうっとマユキを抱きしめる。

マユキもはじける笑顔で、嬉しそうに私に負けないようぎゅうっと抱きしめてくれる。ああ、もう、可愛いいっ!

「お前達、いい加減にしろ!」

一人仲間ハズレにされたカイが声を上げるけど、カイの大声よりもマユキの愛らしさが数万倍も上回るので、私もカイをスルーした。


お互いの存在を十分確認した所で私達は食卓に移動した。

何を言っても無駄だと理解したカイは中断した料理に戻っていた。

怒って不機嫌になっためんどくさいカイは、謝って話しかけても無視してきた。ほんと大人気ない……。

めんどくさい大人は放置して私はマユキに訊いた。

「ねえ、アロイスは?」

いたらマユキと一緒に飛びついてきそうな人の気配がないのが気になった。

「アロイスは町に戻ってる。用が終わったらまたこっちに来るって」

「そっか……」

ちょっと残念。色々相談したかったんだけど。

カイじゃ役に立たなそうだし、マユキは……どうなんだろう。こんなに可愛いけどドラゴンだし、カイよりちゃんとした答えをくれる、かも?

「あのね、マユキ。訊きた……ぎゃっ!」

いきなり背後から椅子ごと抱きしめられた。

「ぎゃっ! て、それ酷くない、セリ」

「ア、アロイス!?」

私は勢いよく身体ごと後を向くと、にっこりと可愛らしく笑うアロイスがいた。

「え、やっ……!」

「危ない、セリ」

アロイスの顔が超至近距離にあったため、今度は恥ずかしさで後にのけ反りすぎて倒れそうになった私をアロイスはすっと右腕を伸ばして抱き止めてくれた。

「大丈夫? どこかぶつけてない?」

「え、あ、う、うん。平気。あり、がとう……」

「どういたしまして」

アロイスは軽く笑った。

その笑顔を見たら心臓がドキリした。その笑顔がすごく柔らかくて綺麗で思わず見とれてしまった。顔もなんか熱い気がする。

「ふふ。セリ、顔赤いよ」

そんな私をアロイスは今度は意味ありげな笑みを浮かべながら見ている。

「嘘! そんなことないもん!」

私は顔をアロイスから背けると、椅子に座り直した。指摘された恥ずかしさでさらに体温が上がる。その恥ずかしさを振りきるために「これ! 見てほしいんだけど!」と、つい大声になりながらもスカートのポケットからあの白い封筒を出すと、食卓に叩きつけるように置いた。

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