八章 帰宅
「ただいまぁ」
カイの家のドアを開けると、そこはちゃんと我が家の玄関だった。よかった……。
「おかえりなさい、セリ。どこ行ってた……て、やだずいぶん汚れてるわよ。何やってきたの?」
キッチンからこっちに来たお母さんが驚き呆れていた。
「え、んー、ちょっとね……」
異世界でちょっと死んでたり冷血皇子に酷いことされてたとか言えないし信じてもらえない。
「まったく……。もう少しでお風呂沸くから先に入って、ご飯は後からにしなさい」
「はーい」
それ以上は追及されず、 お母さんはまたキッチンへと戻った。よかった……。
「とりあえず洗面所に行こ……」
洗面所に置いてあるデジタル時計が視界に入った。
時間は19:13だった。今回は向こうと時間はそんなにずれてないみたいだ。
次は鏡を見た。
そこには物凄く疲れきった顔をして、埃や土やよくわからない汚れにまみれた服を着た自分がいた。
「ひっど……!」
その一言しか言えなかった。
これにマユキの血もついてたらほんっとうにホラー映画なみの最悪の様相だったな……。
「ドラゴンの血は最高の素材!」
と言って森から出る前にメーアが上機嫌で服や身体についた血を魔法でとって行ったおかげで、ホラーな状態は避けられたからよかったけど。
「はぁ……。ほんともうわけわかんない……」
今日まで生きてきて、最高に最悪の一日だった。
だって、臨死体験したりドラゴンになつかれたり、男の人にあんな酷いことされたり……。
こんなこと普通、絶対ないから!
むしろあっちゃダメだろう。
それにまだ色々残ってる。
コンテストや皇子、マユキのこと。
そしてこの一連の出来事の大元、サンジェルマンの正体とか。
考えなきゃいけないことはたくさんあるけど考えたくない。
ていうか、もう全部放り投げたい。
「はぁ……」
もう嫌すぎて何もしたくない。
ピピピ……。
後からアラームが鳴った。お風呂が沸いたか。
「とりあえずお風呂入ろ」
今は先のことなんて考えたくないし、考えられない。目の前のことをこなす力しかない。
私は考えるのをやめ、のろのろと服を脱いでお風呂に入った。




