表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/91

二章 候補者達・二

「とうとう全員揃ったな、リーン」

俺は紅茶をいれながらリーンに話しかける。

「…………」

候補者達との顔合わせを終わらせた後、俺はすぐに執務室に戻り、途中だった仕事の続きをする。

リーンは相変わらず、執務室で仕事に忙殺される毎日だ。

今も書類から目は離さず返事もしないが、明らかに不機嫌になったのは気配でわかる。

だから今回はリーンの一番好きな紅茶と菓子を出す。

注いだ紅茶と菓子をトレイに載せてリーンの所へ行く。

「ほら、リーン。書類片して。紅茶が置けないだろ?」

リーンは軽く溜息をつくと言われた通り書類を片し、紅茶と菓子を置くスペースを作った。

俺はそこに紅茶と菓子を置くと、トレイを持ったままリーンの執務卓に行儀悪く軽く腰掛けた。

「書類は破るなよ」

リーンは腰掛けたことに対しては咎めず、書類の心配だけする。

「わかってるって」

第一そんなことをすればまた用意し直すのは俺だ。俺だって自分の仕事は増やしたくない。

「で、どうするんだ?」

リーンが顔を上げ、カップをソーサーに戻す。

「花嫁候補、だよ」

言われなくてもわかっているくせに。

だから俺はわざと花嫁の所を強調して言ってやった。

リーンは端整な顔を不愉快だと言わんばかりに歪める。

悔しいのは、たとえ嫌悪に顔を歪めてもその端整さは失われないということだ。羨ましい。

「そんなモノ、必要ない」

「必要でしょ、そんなモノ。地位とか品格とか考えると、やっぱりマリかクロード王女がいいかなと思うけど」

「格だけならな。だがそいつらより、あの小娘が勝ち上がって来ないと困るな」

俺はえっ!? と思わず耳を疑った。聞き間違いかと。だから思わず聞き返した。

「え? 今何て言った、リーン?」

リーンはジロリと上目遣いで俺を睨みを、嫌そうながらも答えてくれた。

「あの小娘には勝ち上がってもらわないと困る、と言ったんだ」

どうやら俺の聞き間違いではなかった。予想外の答えで、俺は改めて驚いた。

「あの小娘はこの俺に刃向かった。それなのに何の罰も受けずにいるのは赦せない。勝って、俺が民衆の前でじっくりと躾てやらないとな」

リーンはククッと嘲うと、紅茶を飲む。

本当に想像もしなかった。

まさかリーンがここまで興味を持ったなんて。

たとえその感情が負のものだったとしても。

(これは……)

俺はあの子に少し期待してもいいのだろうか。

大事な親友、リーンハルトを救ってくれるのかも、と……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ