表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/103

八章 終幕に向けて・二

「で、この人達は何なんですか、セリさん」

今私は面倒くさい男に捕まっていた。

コンテストが終わったあと、サンジェルマンに見つからないよう人混みに紛れながらアロイス達の所に戻ったんけど、そこにひょっこりサンジェルマンが現れた。つまり完全につけられていたわけだ。

上手くまけたと思ったけど、やっぱりダメだったかとチッと心の中で舌打ちした。

「どっちがセリさんの同行者なんですか」

不機嫌さを隠さずサンジェルマンが問い詰めてきた。

「俺だよ」

どう言おうかと考えていて口ごもっていた私に代わり、アロイスがスッと答えた。

「君ですか、セリさんを攫ったのは」

「攫ったなんて酷いな。俺はちゃんとセリと話し合って正式に同行者になったんだけど。ね、セリ」

アロイスが私の顔を覗きこんで可愛らしい笑顔でプレッシャーをかけてきた。

「あー、うん。そう」

経緯はどうあれ同行者に決めたのは本当だし。

「そうですか。それなら仕方ないですけど、僕が選んだ同行者の方の何が気に入らなかったんでしょうかね、セリさんは」

「全部」

「全部、ですか。酷いですね。僕がセリさんのためにあちこちに手をまわしたのに全部水の泡ですよ!」

「それこそ余計なお世話よ!」

あまりにも嫌みったらしいので私もちょっとキレた。

元々こんな世界に連れ込まれたこと自体大迷惑なのに、その上花嫁コンテストで優勝を目指せとか有り得ないっ!

「大体、勝負してるのは私なんだから好きにしたっていいでしょ!」

「いいわけないでしょ! 好きにさせたらアナタ、手を抜いて不合格を狙うんだから」

「当たり前でしょ! こんなバカらしいことやってられないわよ!」

売り言葉に買い言葉。

今までの不満や嫌だったことを全部サンジェルマンにぶちまけた。

「はいはい、そこまで」

ヒートアップした私達の間にアロイスが入って来た。

「邪魔しないで、アロイス!」

「そうですよ。セリさんにはもっと立場をわからせないといけないんですから!」

「はぁ? 立場? 偉そうに。ムカつく」

「それはこちらのセリフですよ、セリさん」

「あーもう、いい加減に止めな、二人とも。周りからすごい注目されてるけどいいの?」

アロイスの言葉にハッとして、辺りを見て固まった。

貴族や庶民がごちゃ混ぜで、私達を囲んで見物していた。

「おやまあ、いつのまに」

サンジェルマンは驚く様子もなく、しれっとしていた。

「これでもまだ続けるの、二人とも」

「そうですねぇ、言いたいことはまだまだありますが、僕が見世物になるのは不愉快なので今日の所はこれぐらいにしておきましょう。じゃあセリさん、次の試合までは好きにしててください」

そう言い捨てるとサンジェルマンはさっさとこの場から去って行った。

「じゃあ俺達もとりあえずここから出よう」

「う、うん」

アロイスが私の右手を取り、この場から出ようとしたとき。

「お待ち下さい、セリ様」

「ん!?」

声と共に誰かが左手を掴んで引き止めた。

振り返ると、品の良さそうなお兄さんがいた。身なりは地味だけどいいものを着ているというのは何となくわかる。というかどこかで見たような……?

「セリ様、我が主がセリ様にお会いしたいとのこと。ご案内しますのでこちらへ」

「え、なにっ!? よくわかんないけどお断りします!」

掴まれた腕を振り払おうとしたけど、お兄さんは離してくれない。

「ちょっと、離してよ! 行かないって言ってるでしょ!」

「今回は逃がしませんよ、セリ様。さ、こちらです」

「え?」

私はお兄さんの顔をよく見てみた。

「あ……」

思い出した。ヨハンさんだ。

「おや、お忘れでしたか。私はしっかりと覚えていますよ」

ヨハンさんは微笑んだけど、今は逆に怖い。後ずさる私を逃がすまいと強く自分の方に引き寄せた。

「やっ! アロイス!」

まだ右手を掴んでいるアロイスに助けを求めた。

「セリ、ここは言うことを聞いた方がいい」

「え?」

まさかの返事。

てっきり逃げようと言うと思ったのに。

アロイスが耳元で小声で話し始めた。柔かな髪の毛が頬に触れてちょっとくすぐったい。

「ここで逃げると面倒なことになるよ。もちろん、セリが逃げるって言うなら逃げるけど。どうする?」

「それは……確かに……」

ただでさえ面倒なことになってるのにさらに拗らせるのも、っていうか皇子と話す気なんて全然ないけど今回は我慢するか。

「はぁ……。わかった。行くよ。行って、さっさと終わらせて帰ろう」

「わかった」

アロイスは頷き、その影に隠れていたマユキもこっくりと頷いた。

「待たせてごめんね、マユキ」

マユキの頭をお詫びと私の精神安定のために撫でる。

うん、アロイスとはまた違う、滑らかな手触りがすごく気持ちいい。落ち着くわ。

マユキの方も撫でられて気持ちがいいのかうっとりとした表情をしつつも、しっかりと私の目を見て「僕は平気だよ。セリこそ気をつけて」と気遣ってくれた。いい子だ……。

「ん、ありがとう」

「ではこちらへ、セリ様」

ヨハンさんは私達を雑踏から連れ出し、馬車に押し込めると広場を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ