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八章 第三試合終了

ケチのついた雰囲気の中、司会者が何とか場を盛り上げようと痛々しいぐらいの明るさを振り撒いてアナウンスを始めた。

「えー、これで全員の審査が終わりました! 合格者はクロード王女殿下、ミリヤム姫、セリ嬢です! 次が最後の試合になります」

最後の試合か……。

でも私って失格じゃないのかな。持って来たものは結局皇子の指定したものじゃないし。皇子に逃げたと思われるのが嫌だから来ただけだし。というか失格にするべきでしょう、ここは!

手伝ってくれたアロイスやカイには悪いけど、私は早くここに来る前の生活に戻りたい。サンジェルマンとの約束も一応果たしたことにはなるし。ちゃんと試合には出場したし、成績もそこそこだし。あ、でもマユキはどうしよう。一緒にいるって約束したけどいきなり見知らぬ子供を家に連れ帰るのもなぁ……。ま、とりあえずそれは後で考えよう。

なんてことを考えていたら、ちょうど次の試合とかの説明が終わったので自分の審査について異議を立てた。

「待って下さい。この審査、おかしいと思います」

「え、突然どうしましたか、セリ嬢」

司会者が狼狽えた。司会者だけでなく、合格した二人も何を言うんだ? こいつはという表情になっていた。私は観客にも聞こえるように司会者の持っている拡声器を奪って話を続けた。

「だって私は皇子の指定した物を持ってきてはいません。リントヴルムの一部を皇子は持ってこいと言いましたが、私が持って来たのは黒竜の爪です。違う物を持って来たのに合格なんて変です。そう思いませんか、皆さん!」

話を振られた観客はざわついた。もちろん、これは舞台の奥に座っている皇子や皇帝に向かって言っている。観客、つまり国民を巻き込めば下手な言い逃れなんかはできないはず。国民からも疑問の声が聞こえてきた。

「確かに、皇子の言った品物じゃないよなぁ。なら本人の言う通り不合格が当然だよな」

「でも種類は違っても同じドラゴンよ。しかも珍しい黒竜じゃない。アタシは合格でもいいと思うな」

「そうだよな。魔法使い様も認めた本物の爪だしな」

「そうかもしれないけど、皇子様の望んだ品じゃないからやっぱり不合格よ」

ざわめきの中、私は舞台の奥に視線を向けた。観客も皇子の答えを待ち望み、視線が私と同じ方向へ集まりだした。

こうなったらここにいる誰もが、皇子の言葉を聞かなければスッキリしない。

公正な判断をするなら当然失格。それとも公正さを捻じ曲げて合格とするのか……。

話に聞いている皇子は潔癖。ミスや不正は許さないらしい人なので、別のドラゴンの一部を持って来た私は失格のはず。ていうか失格にして!

まだかまだかと緊張の高まる中、舞台の奥から出てきたのは皇子ではなく皇帝だった。

皇子はといえば、自分の椅子から立ち上がらず、じっと皇帝を見ているようだ。

皇帝が舞台に出ると、ざわめきが波が引くようにスッと静かになった。

「セリよ、そなたは合格だ」

「えっ!?」

なんでまさかの合格宣言!?

「確かにセリの持って来た物はリーンハルトの指定した品ではない。とはいえ、持って来たものは本物の黒竜の爪だ。しかもこの短期間に本物のドラゴンの爪を持って来ることなど、到底できることではないし、何よりそのことを気に病み、正直に進言したセリの公正であろうとする気持ちの素晴らしさに私は心を打たれた。このような乙女が失格になるなど有り得ぬ。よって、セリは合格とする! よいな、我が民達よ!」

「ちょっと待っ……」

そんなこと納得できるワケのない私が反論しようとしても観客全員の歓声にかき消され、皇帝に言葉が届かない。

そんな私の焦った顔をどうとったのか皇帝は心配するなという表情を向けていた。

「大丈夫だ。皆も異存などないし、何よりリーンハルトも同じ意見だ。そうだろう、リーンハルト」

えっ!? まさかと思って皇帝の背後を見た私は、一瞬で竦み上がった。

あれはどうみたって賛成している人の顔じゃない! 奥でよく見えないけどこの寒気が来るぐらい冷たい空気で賛成してるなんてありえない。

皇子は全身から湧き上る殺意と憎悪に満ちているオーラを皇帝に向けていた。一体どんな親子関係なの!?

皇帝は皇子のオーラなど気にもしていないようで、座ったままの皇子の元へと行き何か話したあと、ポンと皇子の右肩を叩くとそのまま舞台奥へと消えた。

残された私達は、この大歓声に幕を下ろすことのできるただ一人に視線を向けている。

皇子の傍にはカールがいた。カールは厳しい表情で皇子と話していた。皇子は俯いているのでどんな表情かは見えないけど、絶対、屈辱感満載の顔に違いない。

話が終わったのか、皇子は立ち上がると舞台上に出てきた。と、同時に観客の興奮もさらに増した。物凄く煩い!

司会者が皇子の前に拡声器を用意すると、皇子はすぐに言葉を発した。

その表情は屈辱感などなく、ただ冷たく、凛としていた。そう、普段通りの冷酷な皇子がそこにいた。

「これにて第三回の試合を終了とする。そして次の試合でこのコンテストを終了とする! 候補者達よ、それまで休息を取るといい」

労いの言葉というか、事務的に必要最低限のことだけ言い捨てると、サッと深い青色のマントを翻らせて皇子は舞台奥へと消えた。カールも皇子に続いて足早に去っていった。

残された私達は観客の声援の中、係の指示通りに舞台を後にした。

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