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六章 セリとアロイス

「セリッ!」

しまったと思ったときには遅かった。

アスワドは一際大声で哭くと、カイと魔法使いの拘束を弾き飛ばし、すぐに屈んでセリの足を掴み、俺からセリを奪った。

アスワドは歓喜し、セリを抱き締めた。

だけどあれは違う。そんな可愛いもんじゃない。

あいつは締め殺してしまった――。


「セリーッ!!」

目の前にはボタボタと赤い液体が流れ落ち、それが足元に溜まって赤い池を作り始めていた。

早くセリをあいつから引き剥がさないと!

今すぐ手当てをすればまだ助かるかも知れない。

もう手段を選んでなんかいられない。

「セリを離せっ……!」

俺は腰から短剣を抜き、アスワドの喉元を斬りつけようとしたとき、アスワドは一声、断末魔の叫びをあげるとバッタリとその場に倒れた。

「カイ! こいつを拘束しろ! 二重でやれ!」

どうやら魔法使いの女がアスワドに魔法をかけていたようだ。かたや、呆然としていたカイはハッとすると、すぐに呪文を唱え始めた。

俺はアスワドからセリを奪い取るとセリの身体を調べた。

息は微かにある。

心臓もまだ辛うじて動いているけど、かなり内臓をやられてる。

血の色が鮮やか過ぎる。

何もしなければほんの数分で確実に死ぬ。

俺は撫でるようにセリの身体を触る。

(肺か)

肋骨が折れて右の肺に刺さっている。両腕や背骨も折れている。

(セリ……)

守ると約束しておきながらこのザマだなんて。

自分自身に腹が立つけど今はセリの治療だ。

「これは酷いな……」

ひょいと女がセリの側に来て顔を顰める。

「もうあきらめろ。この状態じゃ、仮に命が助かっても普通の生活は難しいはずだ。なら今ここで……」

「黙れ」

ふざけるな。セリをこんなところで死なせはしない。絶対に助ける!

俺は呼吸を整え、気を手の平に集中させ、セリの胸の間辺りに両手をそっと置く。

そして気をセリに注ぐ。

「お前……」

女が信じられないものを見る目で俺を見ているけど関係ない。

(セリ。絶対、助けるからっ……!)

だけど上手くいかない。

傷は治っても、鼓動は弱くなる。締められた衝撃が強すぎたのか!?

(ダメだっ! 心臓、止まるなっ!)

セリの身体に送る気を少し強め、心臓に刺激を送る。

けど、心臓はますます弱まるばかり。

だけどこれ以上の刺激はセリの身体に負担をかけるから強くできない。

だけどっ……!

その少しの迷いが命取りだった。

刺激をもう少し強くしようと決断した瞬間、鼓動が止まった。

「セリッ!?」

俺はセリを抱き起こし、揺すった。

「セリッ、セリッ!」

だけどセリは目を開けない。ダラリと身体が揺れるだけ。

「嘘だっ! セリッ、セリッ!!」

俺は抱きしめ、声をかけ続ける。

「もうあきらめろ。その子は死ん……」

「生きてるっ! セリはまだ生きてるっ! 身体だってこんなに温かい。生きてるんだっ!!」

そんな言葉は聞きたくない。女の言葉を遮って叫んだ。

約束したんだ。絶対に守るって……。

俺はセリの左肩に顔を埋め、抱きしめた。

この温もりを逃がさないように、強く、強く――。

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