五章 迷いの森の魔法使い・九
「じゃあ次の問題。その島にいるらしいドラゴンを探すことなんだけど……」
「ああ、まあ、ドラゴンかどうかは怪しいが……」
「カイ……。カイが持ってきた情報なんだからそんなこと言わないでよ」
アロイスがやる気が削がれると、じっとりとした目でカイを見る。
「仕方ないだろう。誰も確かめに行ったわけじゃないんだ」
カイが仏頂面になる。
「まあでもそうだよね。ドラゴンなんて本当にいるのかも怪しいし。それに大きい鳥とかをドラゴンと見間違えた、なんてオチかもしれないし」
「いや、ドラゴンは存在する」
私の言葉をカイはきっぱり否定した。
「存在するんだが、合う確率なんて一生に一度あるかないかだ」
「そうなんだ」
伝説上の生き物と言われているんだからそれぐらいの確率なのも納得する。納得するけど、そんなものであるというのを承知の上で、その一部を持って来いと言ったやつには本当に腹が立つ。
「まあとりあえず、島に行って確かめるしかないよ」
「そうだね」
アロイスの言葉が正しい。誰もわからないなら自分で確かめに行くしかない。
「じゃ、話もすんだことだしそろそろ行こっか」
話はお終いと、アロイスが皆を促す。
「そうだね。時間もないし、って、あ!」
「どうしたの? セリ」
アロイスとカイが私を見る。
「そういえば同行者は一人だけって……」
私はカイの方を向き、アロイスは何だそんなことかという顔をした。
「平気だよ。だってカイは俺の連れだもん。セリの同行者は俺。それに同行者の同行者については何にも言われてないだろ?」
「うん、特には」
「じゃあ問題ないよ」
「でも……」
私が悩んでいると、アロイスがポンと肩に手を乗せて来た。
「セリ、勝つためにはね、手段なんか選んじゃいけない。それが本気ならなおさらね」
「それは……そうだけど……」
と言っても、私としてはルール違反とか卑怯なことはしたくない。他の候補者にも失礼だし……、と思ったところで思い出した。そういえば、相手にはもう卑怯な手を使われていた。なら、そう深く考えることもない、かなぁ?
「大丈夫。非合法な手段は使わないからさ」
「非合法って……」
思わず想像したくないことを想像してしまった。現役暗殺者がそんなことを言うもんだから。
「そうして、アロイス」
非合法な手段なんか使われたらたまらない。
「じゃ、行くぞ」
カイが来いと目で告げる。
私達が話し合っている間に、カイは魔方陣を準備してその中で待っていたみたいだ。
「うん」
私とアロイスは顔を見合わせてカイの元へと小走りで向かった。
こうしてドラゴンを探す旅が始まったのだ――。




