五章 迷いの森の魔法使い・六
私は沈黙し、二人は私が話し出すのをじっと待っていた。
(素直に全部話すべきか、どうするか……)
二人には悪いが、私は悩んでいた。
サンジェルマンには、私が異世界から来たことは話すなとは言われていない。
話したところで信じてもらえなかったり、頭がおかしい子とか思われて、ややこしいことになるのは目に見えているので異国から来たことにしようということになった。それが一番ベストだと私も思う。
だけどカイには何故かバレた。
洋服のせいでバレたとは考えにくい。
だって他の人達にはバレてないし。
まあ、皇帝推薦の候補者に表立って変なことを言うのもアレだから何にも言わないだけかもだけど。
て、今さらそんなことを考えても仕方ない。
今考えるべきは全部話すかどうか。
まだ会って半日程度の付き合いしかない二人をどこまで信用していいのやら。
いくらアロイス達のことを知っていこうと決めてはみたものの、一番バレたくはないことがバレた。
しかも初対面のカイに。て、ことは隠しても無駄ってこと……なのかな?
私はまた考え、結果カイ達に話すことに決めた。
こんなことで時間を無駄にするのももったいないし、もし私の身に何かあればサンジェルマンがどうにかするはず。
あいつに助けられるなんて物凄く嫌だけど、私をなんとしても勝たせたいみたいだから、きっと助ける……はず。
助けに来なかったらその時はその時だ。
私はカップに残っているアップルジュースを飲み干し喉を潤すと、しっかりと二人の目を見た。
アロイスは待ってましたと言わんばかりの笑顔で、カイは神妙な顔で私を待っていた。
「えっ……と。お待たせしました」
「平気平気」
「ああ。随分と驚かせたみたいですまないな」
「あ、うん」
「で、カイの質問だけど、はい、で」
「そうか」
アロイスは黙ったまま私とカイを見ている。
「でもなんで私が異世界から来たってわかったの?」
「ああ、それはお前の気がこの世界と全く同調していないからだ。そういうやつはほぼこの世界の者じゃない」
「へぇ……」
「それでお前はこの世界の者じゃないなと思ってな。まあ、服も変わったものを着ているしな」
「なるほど」
「あとは、お前は何故この世界に来て皇子の花嫁候補なんかになったんだ?」
「それは……」
私はここまでの経緯を二人に話した。
「随分大変だったんだねー、セリ」
アロイスがしみじみと言い、慰めてくる。
「そうだな。なんと言っていいのやら……」
カイも同情している。
「まあ、ね」
私は溜息をつく。
「それにしてもそのサンジェルマンてヤツ、一体何なんだろう」
「そうだな」
「だよね」
カイと私は同時に言う。
「いくら皇子が偏屈だからって、異世界から花嫁を連れてこなくてもいいのにな。この世界中、隅々まで探せば一人ぐらいはみつかると思うんだけど」
アロイスはわからないな、という表情だ。
「私もそう思う」
「そうだな」
私もそれについてはいつも考えていた。この世界に連れてきた本当の理由を考えてみたけど、さっぱりわからない。
もしかしたら理由なんてないのかも知れない。
うーんと唸って考えてみてもわからないものはわからない。
とりあえず今はそんなことより、目の前の問題を片付ける方が先決だ。
「とりあえず、リントヴルムを探そう」
私は二人にそう告げた。
「そうだね」
「ああ」
二人もその通りと同意する。
「じゃ、まずはこれからの方針についてだな」
「うん」
こうして、私達はリントヴルム(の一部)を探すための話し合いをすることにした。




