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五章 迷いの森の魔法使い・一

「つーか、セリも随分なモノに当たったよな」

「そーねー」

そう。何だってこんなモノに当たったのか……。

引きがいいのか悪いのか。

「何たって伝説の生き物だもんな」

「はぁ~……」

私は重い溜息をつく。

今、私達は町外れを歩いている。

ヨハンさん達を振り切った後は追手らしいものも来ず、平和だ。

途中休憩をとりながら、かれこれ一時間ぐらい歩いている。

目指すのはアロイスの友達の家だ。

と言うのも、今回は皇子が指定した物を入手して来ること。

ただし、どれも入手困難なレアモノや本当にあるのか疑わしい物ばかりらしい。

私はといえばその中でもトップクラス。

伝説の獣。お伽話にしか出て来ないような生き物。

リントヴルムとは、あのファンタジーにはお約束の生き物、ドラゴンのことらしい。

なんていうレジェンドクラス!

大神官とか大魔法使いとかそんな人にしか捕まえられないんじゃ。もしくは伝説の勇者とか?

つか、どっちにしても全員普通じゃない人達だ。

こんな平凡ないち女子高生に捕まえられるような代物じゃない!

だけど、アロイス曰く、その友達なら何か知恵を貸してくれるかもということで、現在その友達の家を目指しているところ。

右も左もわからないこの国で、そんな人を紹介してもらえるのはとっても有り難い。

そう考えるとアロイスをパートナーにしてよかった……のかも、とか思う現金な自分がここにいる。

「ていうか、ドラゴンなんて捕まえられるわけないじゃない! 何なのよもうっ!」

「まぁまぁ落ち着いてー、落ち着いて。とにかく今は俺の友達のとこに行って、そこで今後の対策でも立てよう」

怒りと理不尽さに荒れている私をアロイスは宥めながら、のん気な口調で話す。

「あ、ほら見えて来た」

「どこっ!?」

カッカとした頭をアロイスが指した方向に向けると森が見えた。

というかその先は森しか見えない。右を向いても左を向いても緑、緑ばかりの壁。

「すごっ……!」

私は始めて見た光景に対してそんな言葉しか出て来なかった。

カッカとした頭も一瞬にしてクールダウンする程の驚きだ。

何というか、もう森というより樹海って言った方がいいのかも。

遠目でこの威圧感なんだから、間近でみたらさぞかし圧倒されそうだ。

「あれは『迷いの森』って呼ばれてるんだ」

惚けていた私にアロイスが説明してくれる。

「はぁ……。だろうねぇ……」

この森で迷わない方がおかしい。絶対に。

「別名『死の森』とも呼ばれるね」

「え」

ギョッとしてアロイスと森を交互に見る。

「何で『死の森』なの?」

「簡単だよ。迷って出られなくなる。助けも来ないとなれば、行き着く先は……」

アロイスがニヤリとする。

「ああ、うん、納得」

確かにその通りだ。だけど、私達が向かうのはその『死の森』なわけで。大丈夫なのかな……?

「大丈夫だよ、セリ! 俺はこの森じゃ迷わないから安心して!」

そんな不安と心配が表情に出ていたらしく、アロイスが明るく話しかけてきた。

「どういう根拠でそんなことが言えるのよ」

私はじっとりとした目でアロイスを見ながら問いかける。

「カイがいるからね。それにほら、これ」

アロイスは上着の裾を捲り、ズボンのベルト部分に付けている鈴を見せた。

そこには小ぶりの銀色の鈴が青い石と一緒に付いていた。

「この鈴が何なの?」

「この鈴はカイの家と繋がってる。だからこれがあれば迷わない」

そう言ってアロイスは鈴を揺らしたが、あることに気がついた。

「あれ? この鈴、音がしない?」

そう。揺らせばチリンと鳴るはずの音がこの鈴は出さなかったのだ。

「そ。この鈴はここでは鳴らないけど、別の所では鳴るんだ。まあとにかく迷子になる事はないから安心してよ。ね、セリ?」

説明が面倒くさくなったのか、アロイスは適当に話を切り上げ、さあさあ早く行こうと私を急かし出す。

「もう、わかったから! アロイス!」

私ももうそれ以上は訊かず、アロイスを信じることにした。

とにかく今は『迷いの森』に住むという、アロイスの友達の所に行くことを一番にしないと。

私は思考を切り替えて、一路、アロイス友達の家を目指した。

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