四章 疲れた朝
「芹〜、おはよー!」
朝、駅のホームでぼんやり立っている私に元気溌剌な奈緒美が寄って来た。
「おはよー」
奈緒美とは対照的に、私はぐったりとし声で挨拶を返した。
「ちょっと、どーしたの、芹!」
「えー、何が?」
「何がー、じゃないよ! 何そんなに疲れきってるのよ。あー、クマもできてるよ?」
奈緒美が私の顔を見て指摘してくる。
「え。やっぱりわかる? ちょっと隠してきたのに」
「わかるよ。私、やってあげようか?」
奈緒美がカバンの中から化粧ポーチを出そうとしたので「いい、大丈夫!」と言って私は断った。
流石にこんな場所でやってもらうのは恥ずかしいし、マナー的にもアウトだ。
奈緒美は気を悪くすることもなく「そお?」と言ってカバンからポーチを出すのを止めた。
「うん、ありがとね」
「にしても月曜日からそんなに疲れきってるって、芹、昨日何してたの?」
「え、まあ、ちょっと遠くに出かけてて……」
遠くどころか異世界の花嫁コンテストに参加してました、何て言えない。
それにあの後――、案の定、ダンスが終わって大広間を出た途端、ニーナとミリヤム姫は予想通りだったけど、マルヴィナ王女にも捕まってしまったのは予想外だった。
よっぽど私が踊れたことが意外だったようで、マルヴィナ王女にあれこれと質問された。
ニーナとミリヤム姫に捕まったのなら強行突破で逃げるけど、マルヴィナ王女の場合はできない。
悪意がある感じではなく、純粋に興味から質問されている感じだったので無碍にもできず……。
クロード王女からは数十秒ぐらいじっと見られただけで、何も言われずそのまま横を通り過ぎて行った。
ようやく解放されて急いで家に帰ってみれば夜の七時で、家族にもちょっと怒られるし。
連絡できていれば怒られることも無かったんだけど、異世界で連絡なんてできやしない。
しかも、むこうとこちらの時間が一時間から三時間ぐらいのズレがあるみたいで、むこうで三時間ぐらいいて帰って来ると、こちらでは四時間くらい経っていたりするしで困りもの。
は、と軽く溜息をついた所でいつもの電車がホームに入って来た。
次の試合のことを考えるとまた気が重くなるが、私は何とか気持ちを切り替え、隣でスマホを弄っている奈緒美に声をかけて電車に乗った。




