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三章 コンテスト・一

ヘルブラオ国、城下町。

今日はどの店も大忙しの大賑わい。

道には溢れんばかりの人で、訪れる人も途切れることがない。

町も色とりどりの花やオーナメントで飾り付けられて、とてもきれいで華やかだ。

音楽隊なんかもいて、明るくて楽しくなるような曲を演奏している。

また、広場では振る舞い酒などもやっていて、朝から出来上がっている人もちらほらいる。

どこをみても完全にお祭り騒ぎだ。


そんな町の様子とは真逆に私のココロは夜よりも暗く、深海よりも深く、アフリカゾウよりも重い……、そんな感じだ。

私は今、闘技場の最上階、関係者しか入れない場所にいる。

石塀に肘をつき、町の様子を眺めていたが、眺めれば眺めるほど気分の重さと憂鬱さが増し、地を這うような重苦しい溜息が出る。

ついでに言えば、今日の洋服は重苦しいドレスなので、まさに心身ともに重い。

映画でみるような豪華絢爛でレースたっぷりのドレスを着せられる日が来ようとは……。

あのマリー・アントワネットとかの時代の人が着ているようなドレスだ。動きづらいし、コルセットも苦しい。しかも胸元は大きく開いているしで、私としては恥ずかしいことこの上ない。

胸がないとは言わないが、自慢出来るほどあるわけでもない。十七歳女子の平均的なサイズだ。

私がこんな風にどんよりとしているのに、隣の男は対照的な程、脳天気に明るい。

「いやー、今日はほんっといい天気でよかったですね、セリさん!」

にっこにこと爽やかーな笑顔でサンジェルマンが話しかけてくる。

そう。

今日は花嫁コンテストの開催日なのだ。

だから今日は町をあげてのお祭り騒ぎ。

聞いた話しじゃ、あのムカつく皇子サマは近隣諸国でも超有名人だそうで。

何者にも屈せずどんな美姫にも靡かない、凛乎りんことした美貌に絶対零度の心、文武両道、加えて高身長の皇子サマ、というハイスペックな物件。

ま、確かに顔はイイし、スタイルもイイ。それは認める。

肩に少しかかる長さで深い蜂蜜色をしたストレートヘア。サラリと揺れる様は触り心地もとても気持ち良さそうな感じだ。瞳の色は青みがかったグリーンで、肌も抜けるように白い。

……思い出したらムカついてきたので、これ以上思いだすのはやめよう。

とまあ、そんな皇子様なので、花嫁コンテストへの応募はハンパないほど多かったそうだ。

しかも王侯貴族から庶民までと、幅広く受け付けたとのこと。ぞっとするほどの多人数だったのは想像出来る。

その応募者をふるいにふるって、残った選りすぐりのメンバーが今回のメンツらしい。

私はその中に、皇帝の推薦で何の苦労もなく参加させられた訳だ。

しかも異世界から連れ込まれたけど、特別な能力などない、そこいらにいるごく普通の女子高生だ。(対外的には東の異国の中流階級の娘と発表されているけど)

当然、嫉妬やら嫌がらせ、好奇な視線など様々な感情をぶつけられるのは必然で。

理解は出来るけど、当事者の私はたまったもんじゃない!

確かに納得した上でこの場にはいるけど、心の底から納得しているわけじゃないんだから!

特にあの二人。

ミリヤム姫とニーナさん。

勉強会の日に、何かとちょっかいと言うか挑発をかけられたりとかで、全ての休憩時間を潰された。

おかげで休むヒマ何てちっともなかったので、その分思いっきりサンジェルマンに八つ当たりをして、ストレス解消はしたけど、それでも割に合わない。

王女様二人からは、色々と含みのある眼差しで観察されているだけですんでいるけど、それだっていい気はしない。これからどうなるかと思うと……。

「はぁ……」

私はまた重い溜息をついた。

「あ、セリさん。そろそろ中に入らないと。開会式が始まりますよ」

「あー、そう、いってらっしゃい」

私は力なく、怠さ全開で追い払うように手を振った。

「ちょっと、何言ってるんですかセリさん! 主役はあなたでしょ! ほーら、行きますよっ!」

「主役なんかじゃないし」

主役というのは、あの王女様方が相応しい。私はモブ役で十分だ。

サンジェルマンはこの場から一歩も動く気のない私の腕をがっしりと掴み、ズルズルと引っ張って会場である階下の闘技場へと向かい出した。

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