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零章
「勝者、セリ・ハヤカワ!!」
声高らかに、審判が私の勝利を闘技場の観客に伝える。
「さぁ! これで次が最後の試合です! 次の試合の勝者が、我が国の皇子、リーンハルト皇子殿下の花嫁でーす!!」
次の瞬間、おおーっと割れんばかりの歓声が場内に響き渡る。
私は思わず耳を押さえた。
大勢の視線が自分に向いている中、一際強く鋭い視線を感じ、その方向を向くとそこには最低最悪な皇子がいた。
観客席にいる皇子は無表情だが、その視線は強い憎悪と嫌悪を持ってこちらを見下ろしているのがわかる。
私も負けじと皇子を強く睨みつけると、それに気づいたらしい皇子は不快だとでもいうように皇族の観覧席から立ち、その場を去った。
私は握っている刀をさらに握り締め、ムカついて今すぐにでも皇子に斬りかかりたくなった。
(絶対、吠え面かかせてやるっ!)
「では皆さん! 三日後の試合を楽しみにお待ち下さい!」
審判がそう締めると、私も退場口へと向かう。
(はぁ……。それにしても、どこで間違えてこんなことに……)
私は大きな溜息をつき、そう思わずにはいられなかった。