第8話 あたしを守る手
手首から指先までで、あたしの身長ぐらいの大きさの、手だけが床から生えている。
それは黒い石を組み合わせてでできていて、あたしに手の甲を向けていた。
床に敷き詰められていた石が、盛り上がって組み替えられて、巨人の掌の形になって、炎の竜の顔面を掴んで食い止めていたのだ。
「エリック! やっぱりあなたは……」
背後でも同じ音が響いた。
魔封じ人形の次の攻撃も、エリックが食い止めてくれたのだ。
床から壁から天井から、次々と掌が生えてきて、あたしと襲撃者の間を遮る。
けど……
掌が生える度に、黒衣城から悲鳴が上がった。
若い男性の声。
エリック王子の声。
死霊魔道ではないエリックの声!
魔封じ人形の操る炎の攻撃は続く。
石の手は次々と生えて、そしてその分、この建物が壊れていく。
黒衣城はエリックに取って、魂をこの世に留めるための壺。
その形を変えることはきっと、魂を捻じ曲げられるような痛みを伴う。
悲鳴を上げ続けながら、それでもエリックはあたしを守り続ける。
儚げなエリックの声と、時に重なり、時に交差し、別の声もくり返し轟いている。
しわがれた死人の声。
だけど良く良く聴くと同じ人の声だとわかる。
同じ人の、生前の声と死後の声。
エリックが死んで死霊魔道になって、その死霊魔道の部分だけが切り取られて人形の中に封じられたことで、ずっと夢うつつだったエリックの本来の魂が目を覚ましたのだ。
だから……どっちがどっちより強いといったことはなく、攻めと守りがくり返されて……
そうするうちに、雨が、やんだ。




