第2話 分断
いろいろ考えつつ足もとにも注意しながら歩いていたら、いきなり立ち止まったユリアさんの後頭部におでこをぶつけてしまった。
「?」
目の前は行き止まり。
ギロームの足跡は壁に向かったまま途切れ、その壁の、あたし達の身長よりも高い位置に、大きな穴が開いている。
「セーちゃん」
「はいはい」
カバンとランタンを床に下ろして壁に向かい、セリアさんの肩の上にユリアさんが足を乗せて立ち上がる。
「よっこいせ! と!」
穴の縁に手をかけてジタバタ。
鎧を脱いでおけばもっと簡単に登れたと思うんだけど……
ともあれユリアさんはどうにかこうにか穴の縁に這い上がって腰を下ろした。
「セーちゃん、ランタン取ってー!」
「これを投げるのは危ないですよ。こっちをどうぞ!」
セリアさんがマッチ箱を放り投げ、ユリアさんはマッチを擦って穴の向こうを覗き込んだ。
「やっぱりギロームはこっちに来てるわね。……と……おおっとぉ!」
身を屈めたユリアさんの胸もとから、鎧の中に突っ込んでいたソリア人形が滑り落ちた。
「きゃあ!!」
掴もうとしてバランスを崩して、ユリアさん自身も壁の向こうへと消える。
『わっ! ととっ!』
壁越し故に声がくぐもる。
どうやら何かに引っかかるか掴まるかしたようだ。
ガッシャーーーン。
鎧の音。
結局、落ちたみたい。
「ユリ姉! 大丈夫ですか!?」
『うぅ~。あたしは大丈夫~。ソリ姉も無事だよ~』
「人形の心配がしてられるってことは、強がりでなく本当に大丈夫なんでしょうね」
あたしのつぶやきに、セリアさんはひどく複雑な笑みを浮かべた。
『いやー、鎧のおかげで助かったわー』
「マジですか? 余計に危なそうにしか見えなかったのに」
『んーとね、鎧の出っぱりがうまいこと壁の出っぱりに引っかかったのー』
「なるほど」
『あー、こっちからそっちには戻れそうにないわー。鎧を脱いでも無理っぽーい』
ユリアさんの声は、平静を装いつつも、さすがにアセリがにじんでいた。
……鎧が邪魔なのわかってるんだ。
「ユリ姉! そこを動かないでください!」
セリアさんは一歩下がって壁を確かめ、リュックから何か道具を取り出そうとして……
ふっとあたしの方を見て、むむむと困った顔をした。
「向こうに行ける通路がどこかにあるかもしれません。ちょっと探してきますから、ハリエットさんはここで待っていてください!」
そしてセリアさんは、あたしの返事も待たずに、もと来た通路へと慌ただしく消えていった。




