第3話 新たな襲撃
「嫌ああァ!!」
あたしは死霊魔道の手を床に思い切りたたきつけた。
衝撃でジンとしたしびれが腕全体を伝い、死霊魔道の骨はバラバラに散らばって……
同時に部屋の崩壊が収まった。
「あぁ……うぅ……」
あたしは床に膝をついたまま、しばらく動けなかった。
床の魔法陣はぶつかってきた瓦礫でえぐられ、ロウソクのほとんどは倒れて消えて、天井の穴からは一筋の光も射しては来ない。
ここは地下二階。
いえ、降りてきた時の階段の長さからすると、たぶんもっと深い場所。
……ベルナリオさんは無事かな?……
……ギロームは別にどうでもいいけど……
ううん、ベルナリオさんだって、どうだっていい。
あたしをこんな目に遭わせて、しかも見捨てて逃げたんだから!
どうなったって知るもんか!
滲み出てくる涙をぬぐい、あたしは天井を睨んだ。
上にあるのは部屋か通路か。
どちらにしてもあたしの手では、あの高さには届かない。
踏み台に使えないかと、大きめの瓦礫を拾って穴の下に置いて、全然ダメだと、また天井を仰ぎ見る。
穴の上が地上の部屋なら、窓の一つぐらいはあるはずだから、あんなに真っ暗なわけないし……
ここから助けを求めたところで、外にいっぱい居る野次馬達には聞こえない。
もちろんパパにも、他の誰にも。
例え聞こえたって、誰もあたしなんかを助けになんて来てくれない。
瓦礫を縦にして組み立てて、足場を作ろうとしたけれど……
「きゃ!」
あたしの腰の高さに届く前に崩れてしまった。
この部屋から脱け出すためには、あたしの身長よりもずっと高い足場が必要なのに……
見えもしない空を求めて、しつこく仰いだ天井の穴の闇の中で……
ポウッと青白いものが動いた。
「!!?」
光と、人の顔。
だけど助けが来たなんて風には一瞬たりとも思わなかった。
だってその“人の顔”自体が、青白く発光していたから。
ヒゲだらけの四角い顔が、焦点の合わない瞳で、こちらの部屋を覗き込む。
ジワリジワリと這い出る指は、ゴツゴツと太く、たくましく……
だけど血の気のカケラもない。
そして……
探るように伸ばした指を追い越して……
首だけが先にボトリと落ちた。
いえ、ボトリなんて音は聞こえなかった。
そんな音がしそうな雰囲気だったってだけ。
ソレが生きている人間でないのは一目見た時点でわかっていたけど……
落ちた首の様子を見るに、流行りの怪談に出てくるような、動く死体の類いでもない。
首に続いて胴体が、ドサリとは言わずに落ちてくる。
音を立てるようなカラダなどなく、這いつくばった背中越しに、床の魔法陣が透けて見える。
「……亡霊……」
問うて答えるわけでもないし、問うまでもなく答えは出ていた。




