第2話 二日目のサンドイッチと三日目のバイバイ
……夜が明けた。
誰かが居るって感じていたのは闇がもたらす錯覚かもって思ってたけど、日の光に照らされていても謎の気配は消えはせず、そのくせ姿を見せもしない。
何をしてるのか何がしたいのか。
少なくともあたしを捜してるわけではないし、むしろあたしから隠れてる。
でも、何故?
相手を刺激するのは怖いけど、放っておくのもやっぱり怖い。
あたしは露店から持ってきた小麦粉を廊下に撒いてみたけれど、しばらく待ってもネズミの足跡しかつかなかった。
曲がり角の向こうでドアが閉まる音が聞こえた気がして駆けつけたけど、そこは行き止まりで、壁があるだけでドアはなかった。
お城の外に目をやれば、野次馬の数は昨日よりかは減ったけど、エクソシストは増えている。
パパはどうしているのかな?
ベルナリオさんは今日は来てくれないのかな?
昼食時が近づいて、門の前にたかっていた人達が、ひとまず町へ引き上げる。
それとぴったり入れ違いにベルナリオさんがやってきて、イバラ越しに包みを投げ入れてくれた。
中身はサンドイッチと着替えだった。
シャツとスカートと……
謎の窓がついたパンツ。
女性物の下着を買うのはベルナリオさんにはキツすぎたのね。
しかも頼める女友達も居ない、と。
良し! ライバル無し!
シャツもスカートも安物だけど、ベルナリオさんって何だか苦学生っぽいし、それじゃ今着てるワンピースは無理して買ってくれたんだなってところまでひっくるめて好感度大爆発!
そういえば、距離があるから臭いは届かないと思うけど、薔薇柄のワンピースは寝てる時も着っぱなしだったのでシワクチャだ。
あたしがモジモジしていると、ベルナリオさんは町の状況を少しだけ話して帰っていった。
役所の人は呪いだ魔法だなんて信じず、悪質なイタズラだって決めつけていて……
警官隊が突入するとか、軍に支援を要請するとか、そんな予定は皆無だそうだ。
三日目になってようやくパパがあたしの居どころを見つけて来てくれたけど……
野次馬達に囲まれて、娘は悪くないんだって必死になって弁解してて……
再会を喜ぶ余裕なんてなかった。
野次馬どもはパパに向かって、ありえないことをわめきたてた。
黒ずくめの格好をした魔女が、イバラを飛び越えて空からお城に出入りするのを見たとか何とか。
でたらめばっか。
誰の話よ?
あたしは黒い服なんか着ていない。
「ごめん、ハリエット。旅費が尽きちゃって、もうホテルにも泊まれないんだ。
パパはいったんフラワーロールの村に帰るよ。でも、必ず戻ってくるからな」
あたしは無理に笑って手を振った。




