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呪われ魔女は現代を生きる  作者: 奏白いずも
思い出メモリアル
30/33

十、クロの愚痴

クロ視点、真白告白(九話)数日後の話――


久しぶりの更新となってしまいましたが、呪われ魔女のことももちろん忘れていませんからね!

少しでもお楽しみいただければ幸いです。

「ああ、酒が美味しいですねえ」


 酒を嗜むのは実に久しぶりな気がします。なかなかリリーシアの許可が下りないんですよねー、酒臭くなるとかなんとか。


 え、今日は良いのかって?

 またこてんぱんに怒られるだろうって?


 ご安心ください。今日は問題ありません。なんといってもリリーシア公認の飲み仲間と一緒ですから。きちんと酒臭さも抜いてから彼女の元に帰りますとも! そう約束をして、必死に飲む機会をこぎつけたのです。


 世の中飲まなければやってられないことって、あるんですね……


「ねえ、クロちゃん。あんたって何者?」


 そんなことを訊いてきたのは飲み仲間である鈴原香子でした。彼女はリリーシアの友人、私のリリーシアの友人であれば、それは私の友人とも言えるのです。

 時刻は深夜と表現して差し支えないでしょうかね。鈴原香子は夜勤を終えたばかりのようで、このまま泊まっていくそうです。

 おっと、初っ端からきつい日本酒を煽っていますね。その豪快な飲みっぷりは見ていて気持ちが良い。


「――んで、あんた何なの? その飲み干された水分はどこに消えちゃうわけ!?」


 丁度、私は気に入った洋酒を煽ったところでした。

 ああ……芳醇な香りのなんと久しいことでしょう!

 そんなことを繰り返していれば、四角い口からどこへ吸収されていくのか不思議に見えるのでしょうね。私にもわかりませんが。


「いうなればリリーシアの魔法の力? リリーシアマジックとでもいうのでしょうか……はっ! これはあれですね、愛の力というやつでしょうか!」


「えー、ないない」


「しかし何者、ですか……」


「さらっと流したわね」


「はてさて、私はいったい何者なのか。そんなもの、とっくの昔に忘れてしまいましたよ。魔の物かもしれない、幽霊かもしれない、あるいは天の使いかもしれませんね!」


「えー、そんなこと言ってるとまたナナちゃんに吹っ飛ばされるよー」


「すでに経験済みですからご心配なく」


「あははー……」


 乾いた笑いだ。この女は裏表のない態度に好感が持てる。もちろん最愛の人リリーシアほどではありませんが!


「続きは?」


「ああ、そうでしたね」


 酒盛りの話題はリリーシアとの出会いについてでしたか。


「いやいや、私もまさか真冬のオホーツク海に沈められるとは思いませんでしたよ」


「ナナちゃん相手に生きてるなんて運が良かったわね」


「貴女もさらっと怖いことを言う人ですね」


「ま、その様子を見るに無事ってわけでもなさそうだけど」


「その通り! こうして私はキレたリリーシアに謎の黒人形に封じ込められたのです。これ立派な呪いですよ! いやー、彼女逞しく成長したものですね。人とは恐ろしい生き物だ」


「特にナナちゃんはねー。昔っからマジギレすると誰も手なんてつけられないわよ。それであんたの相談っていうのは、どうせナナちゃんのことなんでしょう?」


 そうでした。この機会を乞うたのは私なのです。相談に乗る代わりに私とリリーシアの過去を代金に話して聞かせていましたが、元々は私が相談のため彼女を訪ねていたのです。

 浮気ではありませんよ! 私は断じてリリーシア一筋なのですから! そのリリーシアが……


「……おかしいんですよ」


「何が――って、あんたの口から飛び出すからにはナナちゃんのことか」


 そこのあなた、リリーシア・ルベイラをご存じですか?

 もっとも彼女にはあまたの名と称号があるので名前など些末な問題でしょう。私の主でもある彼女は長き時間を生きる凄腕の魔女――と認識いただければ幸いかと思います。


 そのリリーシアが!

 あまたの敵を葬り戦場の死神と称されることもある彼女が!


「おかしいんですよ。あれは遡ること数日前――」



~☆~★~☆~★~☆~★~☆~


 時間軸としては我が主リリーシアが憎き弟子真白と連れ立って水族館に向かった次の日のことですね。

 翌日、私はいつもと変わらずリリーシアのスマホに揺られていました。すると真白が元気に朝の挨拶にやってきたわけです。


「おはようございます!」


 心なしか、笑顔割増しで気色が悪かったのを覚えていますよ。


「……おはよう」


 対してリリーシアの表情はぎこちなかった。これは何かあったと思わずにいられないでしょう。私は心配になってリリーシアの頬に触れようとしたのです。ところが――


「七夏さん」


「何?」


「今日も大好きです!」


 今日もとは!?


 場が凍ったと思いましたね。その場とは、総務部第一室に割り当てられた部屋を指し、社員も半ば出社し終えている状況でした。


「真白君!?」


 リリーシアは目に見えて狼狽えていましたとも。その頬、少しばかり赤く染まっていませんか!?

 私が触れずとも赤みを帯びていたのです。あのリリーシアの人外めいた作り物のように美しく陶器のように滑らかな肌が! 私以外の男の発言で狂わされているとあっては放っておくことは許されないでしょう。


「な、な、なっ――真白貴様リリーシアに何をした!?」


「別に何もしていませんが」


「嘘を吐け! 昨日私が眠らされている間、何があったというのだ!」


「愛の告白をしただけですが」


「んなっ――」


 私は言葉を失いました。衝撃に言語を忘れたのは久しいことでした。


 そう、私は真白の罠にはめられ昨日は封印を施されていたのです。強制体に長き眠りにつかされていたのですよ!

 何ということでしょう。あの小僧、憎らしいにもほどがある! どこまで私をこけにし、リリーシアにちょっかいを出せば気が済むのかっ!


 おっと、失礼いたしました。つい熱くなってしまいましたね。

 これは数日前のこと、いわば過去の出来事なのです。けれど例えば今朝なんて……


「七夏さん、おはようございます。今日も可愛いですね! そんなところも大好きです」


「君……」


 もはやリリーシアも苦笑い! 何度毎日咎めようが息をするように口説いてくる始末!


~☆~★~☆~★~☆~★~☆~



「……ということがありまして、飲まなければやっていられないのですよ」


「わーお、彼ってば猛アピールじゃない。ナナちゃんも大変ね」


「鈴原香子、笑い事ではありません」


「いやいや、その姿で両肘つくポーズ決められても笑うしかないっての」


「私とリリーシア運命の出会いから幾星霜、再会してからというもの鉄壁を誇っていたリリーシアの仮面が崩されようとしているのです。こんなこと未だかつてなかった……これでは私への寵愛が危機にさらされてしまうしょう!」


「だいじょぶだって、元から感じられなかったから」


「……酔っぱらいの冗談は性質がわるいですねえ。私が聞きたい言葉はそんなものではなく、どうすれば私がリリーシアの最愛に戻れるかということです。友人である貴女なら多少なりとも私の知らない彼女のことも知っているでしょう」


「いい、クロちゃん。戻るっていうのはね、戻る場所があってこその前提なのよ。まあそれを差し引いてもね、あたしはナナちゃんの友達だからさ! あの子が不利になるようなことは言えないわ。たとえ高級な日本酒を添えられたとしても!」


 鈴原香子は空になったビンを景気よくテーブルに叩きつけた。

 どうやらあまり情報は引き出せないようですねえ。ならばもう利用価値はありません。さっさと酔いつぶれてしまいなさい。

 くすくすと、私は高らかに小さく笑いを上げました。しかし――


 次に私が目覚めたのは二日後のことでした。無論、部屋に一人きりで。


 ………………。


 鈴原香子おおおおぉ!?


 悟りましたとも。私は鈴原香子にハメられたのです。いや、憎き連条真白の策略ということも考えられますね。あれには前科があるので油断なりません。そうでなくてもリリーシアにべったりで――


 おっとこうしてはいられません。私のリリーシアが心配です!

 ……しかしまずは入浴してからと致しましょうか。酒臭いと嫌われてはたまりませんからね。

 こうして私はのんびりと朝風呂を楽しむことにしたのです。

閲覧ありがとうございます。

時間はかかってしまうかもしれませんが、必ず完結させますのでご安心くださいませ。

もちろん他の物語についてもです!


ツイッターも始めましたので、今後そちらでよりタイムリーに更新情報をお知らせしていきます(マイページにリンクあり)

最後までありがとうございました。また次のお話でお会いできれば嬉しいです!

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