第1章「罪と剣と思い出の女性(ひと)」 1
この小説を読むにあたって
・ストーリーはどこにでもあるようなRPG調です。過度な期待はしないでください。
・文面の誤字脱字、表現方法の間違いなどがあると思いますが、頑張って読んでください。
・この小説は不定期更新です。
それでもよろしければ、ゆっくり読んでいってね!
「やっべー!!なんでこんな時に目覚ましセットし忘れたんだーー!!」
そんなことを叫びながら1人の青年が古めかしい寮から飛び出していった。
ここはレスト大陸に乗っている大国、ファルディアの南側にある「ラヴェデア」と呼ばれる区画。
この区画の主要都市の1つである、「ガルト」。
この都市には多くの騎士を排出する騎士学校があり、戦闘はもちろん敷地内にある闘技場で実践訓練も出来る設備もある国内随一の騎士学校だ。
「あ…あと20分―――!!!」
そうしていると、その騎士学校の正門を全力疾走で通り抜けていく青年が
1人。
どうやらここの生徒のようですが、あと20分なら走らなくてもいいのではないでしょうか?
そうこうしていると、青年は校舎を通り越してグラウンドの方に出た。
目の前にあるのはこの学校の自慢の1つ。闘技場でした。
そして闘技場に入るやいなや、目の前にある受付に突っ込みそうになる勢いを殺して学生証を提示します。
「また遅刻ギリギリ?あんたみたいな騎士学校生はここに勤めだしてから会ったことないわよ?」
「た…多分…目覚ましが…僕を…呪って…るんだ…ろう…」
「ふ~ん。はい、またしても最下位な青年よ。息整ったら控えに行ってね。」
「はい…」
そんな話をしながらも青年はゆっくり控えの方に移動した。
そこは人がごった返しており、それぞれが木刀で素振りをしたり、かかしに打ち込みをしたりしている中で、まだ息が整いきってない青年に声がかかった。
「おいセル。また遅刻ギリギリか?今回はなんだよ。」
「聞いてくれよルイ。目覚ましが僕を呪ってるんだ。」
「はい、言い訳ご苦労。はよ準備しろ。」
「お前が言わせたんだろ!」
そう怒鳴るセルと呼ばれた青年は仕方なく準備を始めた。
この青年はセルバル・エメルイズ。騎士学校の第2学年だ。
遠く西側からやってきた変わり者で、みんなからは「セル」と呼ばれている。
そしてさっきセルバルをからかっていた青年はルメルイゼング・R・フルフェーリ・ファルディア。こちらも騎士学校第2学年。
一応王族、それも王位継承権第1位の『王子様』なのだが、本人が嫌うのでみんなはフランクに「ルイ」と呼んでいるし、本人もそのほうがいいと気にしてないのだ。
2人は騎士学校で出会い、今ではいい友であり、戦友だった。
「セル。準備は出来たか?」
「もちろん。何のために早着替えの術を鍛えたと思ってるの?」
そうやってドヤ顔で言ってくるセルの頭に1発木刀で叩いとくと、呆れた声でルイが言い返した。
「だからお前はそんなことを鍛えるより、朝早く起きれる術を鍛えろ。」
「ねえ、ルイ。……人には出来ることのほうが少ないんだよ。知ってた?」
爽やかに言い切るセルにまた1発木刀チョップを食らわすと、控え室に入ってきた甲冑を着込んだ騎士が、大声で手元にある紙に書かれている文面を読み始めた。
「騎士学校生徒の諸君!!まもなく『アウリオン演舞』が始まる!!各自武器と防具を装備し、会場に入場せよ!!」
「っと。もう開始か。体力切れなんかでたおれんなよ?」
「奇遇だね。今僕はルイに叩かれた頭がものすごい痛いんだ。どうすればいいと思う?」
「ほっときゃ治る。」
そんな他愛もない会話をしながら、闘技場の中央。闘技会場に騎士学校の生徒が入っていった。
『これより、アウリオン演舞を開始する!皆、全力を出して戦うように。』
開会宣言のあと、騎士学校生は所定の控え場所に移動し、アウリオン演舞が開始された。
アウリオン演舞とは、年に1回、学校での全校生徒が集い、演舞をするというトーナメントバトルのようなものだ。
決勝まで残った2人にはとても豪華なものを見られるそうだが、見た内容は他言無用なので未だセルとルイは何が見られるのかはわかってない。
「さあ、決勝まで2人残って、その豪華なものを拝んでやろうぜ。」
そう言いながら意気揚々と腰に吊るした鞘入りの訓練剣を持ち上げるルイに習い、セルも剣を持ち上げる。
その後、演舞が始まると2つに割り振られたブロックで2人は堂々の優勝。決勝戦で出会うことになった。
しかし、この決勝戦での対戦カードは誰もが予想できたことでもあった。
セルは学校全体の演習では驚異的な勝率を誇っており、ルイもそれに並ぶように高い勝率を誇っていた。
結果、この2人は皆の予想どうり決勝で相対した。
「さて、楽しもうぜセル。もうノルマはとったんだからな。」
「でも、手は抜かないんでしょ?ルイは中途半端は嫌いだからね。」
「当たり前だ。友だからって油断してたら痛い目みるぜ。」
そうしていると試合開始のベルが鳴り、決勝が始まった。
「ちぇ~。結局セルは打ち負かせなかったか~。」
「来年も挑戦待ってるよ。」
そう言いながら闘技場を後にしようとすると、後ろから声をかけられた。
「2人とも。今、いいかな?」
「あ、ルドラー教官。」
「いいですよ。何用でしょうか?」
2人に声をかけたのは、ルドラー・アイルゼン。このファルディアで5本の指に入ると言われている騎士で、その流れるような背中まで伸びる銀髪と剣さばきから『銀龍のルドラー』とまで言われる現代の名将軍だった。
ルドラーもこの学校の卒業生で、時間があればここで教官として未来ある騎士たちを育てているのだ。
「決勝まで残った2人に、ご褒美の時間だ。ついてきてくれるかい?」
その言葉に、2人は顔を見合わせて「よし!」と言い合いルドラーについていきます。
2人が連れてこられたのは、闘技場の外にある不思議な建物だった。
ルドラーはその建物に着くと、2人に向き直ってこう口添えをした。
「知ってると思うけど、ここで見たものは他言無用で頼むよ。もちろん、ここで見せるご褒美についてもね。」
その優しい表情から出される注意を聞き、3人は中へと入っていきました。
何個かのドアを素通りして、1番奥にある大きなドアを開けると、そこには1つの剣が立てかけられていた。
「教官……これって…」
セルが興奮を抑えるようにルドラーに聞くと、少し微笑んだルドラーが説明をしだす。
「セルバルの思っての通りだよ。これは「『銀光の聖剣』グレースマヤリース」だよ。」
そこにあった剣は、騎士学校生なら絶対に見たがるであろう伝説の五つの武器の1つだった。
「もちろん。君たちに見せたらしっかりと保管するから盗まれる心配はないよ。」
ルドラーがそんなことを言ったのは、ルイが少し不安な目でルドラーを見たからで、それを聞いたルイは安心したようにまた剣を見直した。
触れることはできないが、やはり伝説の剣と言うだけあり、見取れてしまうような美しさがあった。
しかし、セルは少し奇妙な感覚を感じていた。
(なんだろう…この剣を見ていると…なんか懐かしい感じがするような?)
しかしその感覚の原因は分からず、その場は考えすぎということで流した。
その後は結局2人は剣を10分ほどまじまじ見ると、気が済んだと言って元来た道をルドラーの先導で帰った。
いつもの道に出ると、もう街頭には光が灯っており、空も橙から夜の藍色に変わりかけていた。
「こんな時間まですまなかったね。」
「いえ。いいものを見せてもらって嬉しかったです。」
そう言うと、ルドラーはすぐに学校側に戻っていき、セルたちもそれぞれの帰路についた。
「はあ~。やっとついた~。」
セルは寮に着くなりそう呟き、服も着替えずベットに倒れ込みます。
(それにしても、あの剣を見たときの感覚はなんだったんだろ?)
セルが剣を見たときに感じた懐かしさ。それはどこか故郷においてきた母親と義妹と久しぶりに再会したような温かみのある感覚だった。
そうこうしていると、セルの最大の敵である眠気が襲ってきて、抗うことをせずにそのまま眠りについた。
「……んっ…。」
睡魔との戦いで無血開城したセルの体だったはずだが、自然と目が覚めていた。
窓の外を見るとまた月が顔を出しており、街灯も光が弱められていた。
「なんでこんな時間に…。いつもなら朝まで起きない自信があるのに。」
そう言ってもう1度眠ろうとするが、今度はどこからか声が聞こえてきた。
『…セルバル……早く来て…』
「…?なんだ?」
いきなり聞こえた声。それは流石にやばいと思いセルは体を起こすと、頭の中で1つの思いが芽生えた。
頭に浮かんできたのは、夕方見たあの伝説の剣。
「なんであの剣が…?でも、行かなきゃ…。」
するとセルは素早く来ていた制服を脱ぎ、ある程度シワを伸ばしてから部屋を出た。
向かうのは、あの奇妙な建物だった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。著者です。
今回は序盤の序盤。ゲームならまだプロローグも終わってないんじゃないかってぐらいな書き方してました。
実際今回のあとにまだまだくっつけるつもりでしたが、そんなに長々書いても疲れるだけだし、区切ることにしました。やっぱ読むなら4000字以内!
てなわけで、ここも長々書いてても仕方ないのでここら辺で。読んで下さりありがとうございました!
(次回からあとがきにてプチキャラ紹介をする予定です)