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リズベルト・シンソフィーの冒険  作者: 阿江
第2章 孤児院
49/63

独白

短いです。この部分は直したりするかもしれません。

 

 けばけばしい化粧の男と、人形のように美しい少女を見て、私はクライがミスをしたことを悟った。


 視察に来る人間が、それも孤児院に寄付できるような社会的地位のある人間がいるはずのない(・・・・・・・)私を見つけるのはまずいだろう……。

 私を隠すことが、役目じゃないのだろうか。呆れながら、私は決心する。

 仕方ない、クライに協力しよう。手助けしよう。

 

 許さないし、したくもない。だけど、それ以上にクライを死なせたくない。王弟は任務を失敗したら、死ぬように言ったらしい。

 

 私を監視していることも、どれもこれも被害者はかわいそうだと思うが、それは自分だし、手酷い扱いを受けているわけではない。それにそういう時代なのだ、それが最近分かってきた。人権や平等とか、実現するのは素晴らしいし、日本もとてもいいところだった。だけど、不自然なのだ。人権も平等も。王弟の命令なら誰だって逆らえない。

 彼が責められるべきだとするなら、それはミスに対してだ。


 だけど、とも思う。

 

 私は実際本当に一生許さないだろうと思う。あの母に追い出されたことも、クライにされていることも。けれど何か行動に移すというなら別だ。私は何もしない。

 実際今もする気はない。

 許さない、ということと許せずに復讐する、ということとは別で、使う体力がまったく違う。私は自分が何もしないから、普通は難しい一生許さないということが、実現できるのだ。そういう人間なのだ。

 過去もそうだった。あの友人たちの利己的な思惑に気づいていたけれど、決して口にしなかった。いつも自分の心で軽蔑していた。

 そして許してもいなかった。


 本当に私という人間は心が狭い、狭すぎるのだ。気づいていた。ずっと我慢し続けた。心のうちがどれほど醜くなろうと――醜くなるほど――耐えた。

 いつも被害者ぶっていた。何でこんなに我慢しなくちゃいけないのとか。そんなことを。


 言えばよかった、と思うかもしれない。だけど出来なかった。

 こんなことを言う人がいる――いつも人の都合のいいように扱われる人は、人に嫌われるのが怖くて、何も言えないのだ、と。優しいのではなく、利己的なのだと。ハッキリとモノを言う人はリスクを犯して、自分の意見を通している、と。

 それを聞いたとき、表面上の心では納得した。

 だけど違うだろう、いや絶対に違う、と私は思った。腹さえ立った。この意見を――この意見を言う人間は向こう側の人間だ。絶対にこっち側の人間ではないことが分かった。

 分からない人が言わないでほしい。


 人に優しくすることが、どれほど犠牲を払うか知らない人のだ。

 本当に優しい人は、何をされても怒らない?


 この世に、自分の愛する人でも子供でもない人間に、犠牲を払って優しくして、何も思わない人間がいるはずないだろう。

 優しさにはそのほどによって、犠牲が伴う。

 それを優しさといって片付けられて、搾取される人間が、何も思わないわけないだろう。

 この世に、優しいとか立派で片付けられる人間がいると思っているのだろうか。


 それは優しいで片付けてはいけないことの筈なのに。


 それなのに、一言でも、親切にしたことを優しい(・・・・)人が言えば、ばかげたことに本当に優しい人じゃなかったんだ、と言うのだ。

 こういう人たちは何を思って生きているのか、私には分からない。

 でも何も言わないのは、何も言わないのは………………………………。 


 私は行動を起さない。

 クライに死んでほしくないからだ。そしてたぶん、心の中で今の生活に不満を言う。

 だってそれは仕方ないじゃないか。


 私は本当に親切な人間じゃないのだから。


 そういう人間は、いつもだんだん性質が悪くなっていく。




 

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