表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リズベルト・シンソフィーの冒険  作者: 阿江
第1章 リヘルトという少年
2/63

獣人メイド

 


 産まれてから半年たった。今一番天に向かって言いたいのは、獣人(じゅうにん)最高! というセリフだ。

 

 他の些事はあとで詳しく説明するとして、とりあえず私専属のメイドが可愛すぎる。はじめて見たときは衝撃だった。だって顔に、頭に獣耳がついている。何かの人体実験だと思ったくらいだ。正直に言えば最初は気持ち悪かった。今はそんな自分を恥じているくらいだ。

 獣人は顔が微妙に獣で、犬に似ている。特段、犬や猫が好きだった覚えはないし、たぶんどうとも思っていなかったのだが、人間が犬に似ているという矛盾が癖になる。


 私はこの世界に生まれてあの少女が言っていたセリフ『大丈夫。その世界ではかなり良い条件をつけてあげる』という言葉の真意が微妙に読めないでいた。


 私が考える良い条件というのは、まず家庭環境。それは裕福かという問題ではなく、両親の人格的なことに由来する。それなりに頭が良くて、ある程度の愛情を子供に与えることが出来るか。それが満たされていると、良い条件というのも理解できる。


 あとは容姿だ。特別に美しくなくていいから、最低限の顔面偏差値は得ていたい。まあこれは別にいい。


 あと考えられるのは頭の良さだ。昔の自分も結構頭が良かったのだけど、今生ではもう少し記憶力があがって欲しいなと思っていた。


 最後の二つはまあ無理だろうなと、半場諦めていたけれど、なんというか、いろいろな意味で全てが外れながらも擦れていた。私の望みから。


 私が生まれたのは、中世の西洋のような、どことなく現代の匂いもする、そんな世界だった。私が暮らす国では議院内閣制とか、大統領制などはとられていない。理系なので政治経済は微妙にほったらかしでよく分からないのだが、なんというか封建制? そんな感じがする。

 

 王などと呼称される存在がいるので、絶対王政かと少し怯えていた。絶対王政というと命が軽そうで怖い。

 しかし聞いたところによると、貴族の権力もやけに大きいそうなので、封建制? なのかとも思う。

 

 テスト勉強は暗記するだけだったしな、と少し落ち込む。なんというか私には応用する力というものが決定的に欠けている。しかし高校2年ってこんなものだとも思うんだけど。


 そして、私が生まれたのは商人の家だ。商人といっても、その上には大が付く。身の回りを見る限り、かなり私の生まれた家は儲かっているのだろう。父親は一度見たことがあるのだが、神経質そうな顔をしていた。かなり頭が良いというのは見ていても分かる。黒髪がかかっている目の思慮深さは50代にも見える。マイナスポイントは漂う変態ぽさだ。

 


 正式な妻は一人で、他に妾を三人囲っている。私は妾のミレルギーという金髪の美女から産まれたらしい。今までに一度しか会っていない。

 そう私が今問題視しているのは明らかに育児放棄されているということだ。よく考えれば、自分の精神年齢を気づかれないようにしなくてもいいというのは楽なのだろうけど。


 容姿にもいくつかの問題がある。

 うん。

 まず、私は期待していた。金髪の美女から産まれた私も、もしかしたら金髪になるかもと。両親に隠れてハーレクインを読んだこともあったし、ちょっと金髪に憧れてた。いや普通の女子なら金髪に憧れる。 だから、自分の髪が明らかに『白』だと知ったときのショックは酷かった。

 

 しかも、目が黒という最悪の組み合わせ。獣人メイドに鏡を見せられながら髪を梳かされて、衝撃を受けた。まるで老婆だと。まま顔立ちは整っているので、最悪の事態にはなっていないのが救いだ。


 頭は今のところ、そう良くなっていないのが分かる。現状維持という言葉がふさわしい。しかし、学生になる頃には脳内年齢は20を越えているだろう。記憶力が悪くなっていなければいいのだが。

 


 いくつかの不安要素を抱えながらも、少しずつ私はこの世界を知っていこうと努力していた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ