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リズベルト・シンソフィーの冒険  作者: 阿江
第1章 リヘルトという少年
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名付け師と母の会話


 『転生少女の前日談』、ほんとに前日談だけなのに読んでくださった皆さんありがとうございます。


 えー本編ですが、主人公はちょっと性格が変わっています。


 

 ある少女と話し終わった途端、耳元で『さよなら』と聞こえた。




 

 鼓動の音が聞こえる。トクントクン。


 前世の出来事が思い返される。私の妹、私の好きだった人。


 ああ。

 転生するんだったな。

 じゃあ今はお母さんのお腹の中にいるんだろうか?

 すごいファンタジー。今のうちになんか願っとこ。

 

 なんというか、次の生では平穏無事に過ごせますように。私も少し性格の改善を図ってみるから。

 そう! もう少し明るい性格に。











『健康じゃなくて良い、優しくなくてもいいから、美しく生まれてきてね』


 













 薄っすらと目を明ける。口がえぐえぐと開く。口からほとばしる様な叫びが漏れた。目がまったく見えない。しかし人間の暖かさは近くに感じる。

 うんっと身体を動かしてみようとして失敗する。身体を動かすのはしばらく無理そうだ、などと思っていたら身体に暖かい感触があった。


 柔らかいくせにどこか硬くて。それでいて、守ってもらえるような。ああ今、私赤ちゃんなんだ。心から実感するような。そんな、安心感だった。








「ミレルギー様、この子のお名前の候補は三つです。お選びください」


「三つ? 少なくない?」


「いえ、付けられる名前はこの数よりも幾多多くなります。ですがミレルギー様。ご息女に見合う名前はこの三つ以外では辞めておいたほうがよろしいでしょう」


「そう、貴方が言うんだったらそうなのでしょうね。で、その中で格が一番上の名前は?」


「リズベルト、これがよろしいでしょう」


「……男の名前じゃない」


「真名をこれにし、一般にはリズと名乗らせればよろしいでしょう。そうすれば、他からはこの子供の真名はリゼンダと勘違いしてくれます」


「はあ貴方は本当に話を聞かないわね。分かったわ……この子の真名はリズベルト、それでいいわ」


「ミレルギー様、皮肉なものですなぁ。貴女様の真名ミレルギークエンから【高潔なる人格者】が産まれるとは」


「……五月蝿いわね。妊娠後で疲れてるの、もう帰って頂戴」


「くくく、無礼をお許しください。ミレルギー・シンソフィー様。

 ただ、よろしかったら、一言この老人の忠告を聞いてはいただけませんか」


「帰りなさい。二度も言わないわ」


「後悔なさいますよ。この娘を殺そうと思うほどには」


「……なに?」


「さてミレルギー様【高潔なる人格者】、この真名をもつ人物をご存知ですかな?」


「……隣国の孤高宰相ぐらいしか思いつかないけれど」


「リズベルト、この真名は非常に格が高い。名づけられた例も、実のところこの100年で4例だけです。名づける条件もかなり厳しい。ですが、この名前は名付け師の間では呪いの名として高名なのです」


「なんですって? どういうことリズベルトは……」


「戸惑いますわな。先ほど、貴女様がおっしゃった、思いつく限りでは孤高宰相しかリズベルトはいない―――。これほどまでに格が高い『名』であるはずが、表舞台に立っていない。これはねリズベルト、この名が才能値以外の条件があるからなのですよ。


 人の運。人との繋がりの運。これが徹底的に悪い。まわりが悪い場合もありますがね、本当のところ、私たち名付け師が囁きあう真実は違います。狂わせるのです、人間を。いるだけで、話すだけで周りが狂い、勝手におかしくなっていくのですよ。だからこそ孤高宰相は成功なさったのです。周りから断絶し、『孤高』であったがために。

 リズベルト―――くくくっ本当に不思議ですなあ」


「なっ! そんなことがっ」


「あるのですよ。100年のうち3例は周りによって滅ぼされた。同時に周りも滅ぼされた。これはね『呪いの名』いや『滅びの名』のですよ。

 ミレルギー様のことは産まれたときから知っております。貴女様が野心を持ちこの家に輿入れしたとき協力したことも覚えております。ですから、これは老人の切実な忠告です。

 決して関わってはいけません。

 努々(ゆめゆめ)忘れなさいますな。分かりましたな」


「……そう。私も自分の子供ぐらい可愛がりたかったけれど、無理そうね……。

 貴方の言うことに今まで間違いはなかったわ」


 


 眠い、何かしら話しているのは聞こえるが、意識を集中できないので内容が頭に入ってこない。

 まあいい。とりあえず、寝おう。

 起きたとき考えよう。これからのこと、今までのこと。





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