セーラー服と異世界・7
「いやぁ、悪ぃ悪ぃ。可愛い子はどーにも抱き締めたくなっちまうんだ。」
がしがしと夜の頭を乱暴に撫でながら、酸欠のせいで若干の涙目になっている夜に眩しい程の笑顔を浮かべる美女。
彼女がこの店の主らしく、夜の頭から手を離すと店の奥からかなりの量の服をかかえて戻ってきた。
「最近はどーにも厳つい男連中ばっか見てたせいで、つい、な。悪かったよ。」
「そ、そんな謝る程の事じゃ・・・」
全然大丈夫ですよ。
そう言って夜が笑えば、美女は一瞬だけあ然としてから豪快に笑い出した。
「あんた、いい子じゃねぇか!ますます、このガキには勿体ねーなぁ!」
「やらねぇぞ。」
「ちっ・・・」
心底恨めしそうにクウヤを睨んだ美女は、持ってきた服を一枚ずつ手に取ると、夜に合わせてはまた他のものを、を繰り返し始めた。
「わ、ゎ・・・っ」
「ちょっとだけ大人しくしてな。アタシがあんたに最高に似合う服、選んでやるから。」
「あ・・・ありがとう、ございます。えっと・・・」
「あぁ、自己紹介がまだだったね。アタシはツィーリってんだ。」
「ありがとうございます、ツィーリさん。私、夜って言います。」
「ヨル、な。覚えとく。さて、ヨル。」
ちょっとこいつを着てみてくれねーか。
そう言って差し出されたのは、民族衣装のような不思議な模様が入ったシャツに、黒の短パンだった。
「ほんとはスカートがいいんだが、このケダモノが側にいるんじゃすすめられねぇからな。」
バッチンと音がなりそうなウィンクをしながら言うツィーリに夜は思わず笑みを漏らしながら、受け取った服を抱えて試着室と思しき部屋へと入っていった。
「で?神様に喧嘩売りに行ったはずが、なんで女の子連れて戻って来やがったんだ?しかもたったの2日で。」
「2日だけしか経ってねぇのか。」
「どーゆー、意味だ?」
ツィーリの目が細くなり、クウヤをじっと見据える。
クウヤが口を開いたのは数秒の間を開けてからで、その口からは自分の身に起こった事が嘘偽りなく告げられた。
「信じられねぇなら、それでいい。」
「はっ・・・信じるつもりがねぇならハナから話なんて聞かねぇよ。てめぇは嘘だけはつかねーだろーが。」
信じてやるよ。
ツィーリの言葉は意外だったらしく、目を丸くするクウヤ。
そんなクウヤを鼻で笑い飛ばしてから、ツィーリは夜の入った試着室に目線を移した。
「つまり、あの子はこの世界の人間じゃなくて、何にも知らねーんだな?」
「・・・あぁ。」
「こっちでのてめぇの事も、何にも知らねぇって事か。」
「・・・・・・、あぁ、そうだ」
「キツい思い、するぜ?」
そのツィーリの声は、どこか泣きそうな程に悲しそうだった。
誰が、とも
何故、とも
言わなかった。
けれどクウヤは理解した。
その言葉が何を言っているのかを。
理解して、目を静かに伏せた。
「・・・あぁ、そうだな。」
小さな小さなその声は、ツィーリにだけ届いて消えていった。




