セーラー服と操り人形・2
クウヤとセキの間で目を泳がせながら、夜は言われた言葉を頭の中で反復させていた。
二度と、するな、と。
(女の子、に、)
守られるのは、確かにそれは、力のある人間にとっては屈辱的な事なんだろう。
この世界でなくてもきっとそれは同じ事で、思わず口に出してしまった謝罪の言葉は、それが分かっている証拠だった。
だけど、と。
夜はそこまで思考を巡らせてから、セキの体に目線を移した。
「セキ、さん、」
その目に映るのは、見える範囲だけでも傷だらけだと分かるセキの体。
ハクトと最初に対峙した時にはなかったその傷は、恐らくあの断崖から落ちた時についたものなんだろう。
「怒るとこ、違くないですか?」
「あ?」
「だって、その傷・・・」
ならばそれは自分が傷付けたという事で。
例えセキが強いことを少しは目の当たりにしていたとしても、大丈夫だ、なんて確証もまるでないままに突き落としたのだ。
普通ならまず、そこに怒りが向くのでは、と。
夜がそう問いかければ、セキは呆れながら夜の頭を小突いた。
「ンな小せぇ事を気にする男に見えんのか、この俺が。」
「え、・・・?」
「屁でもねぇよ、あんな岸壁。アレで死ぬような弱ぇ男に成り下がるつもりはねぇよ。」
だから、と。
夜の頭を小突いた手が今度は夜の目元に移動して、その指先は不器用に目尻を拭った。
「泣く程の事でもねぇからンな顔してんなよ、夜ちゃん。」
言われて気付いたのは、己が目に涙を湛えていたという事。
セキの指先を僅かに湿らせたその滴に夜が気付いた時には、セキの手は夜から離れていて。
「・・・獅子王、俺が泣かせたワケじゃねぇだろ。ンな殺気立った目で見てんじゃねぇよ。」
「・・・」
「余裕ねぇな。夜ちゃんに嫌われるぜ?」
「煩ぇな、満身創痍の癖して・・・っ」
「夜ちゃん、獅子王が怖ぇよー。」
「夜に話を振るんじゃねぇ!!」
夜を間に置いて飛び交う会話。
最初は目を瞬かせていた夜だったが、少し間を空けてから思わずその口許が緩く弧を描いた。
「ふ、は・・・っ」
その声に反応してクウヤとセキはほぼ同時に夜に視線を移した。
そして見えたのは、可笑しそうに笑う夜の顔。
その顔に、思わず高鳴ったのはどちらの鼓動だったのか。
その幸せそうな笑みを見てしまえば毒気はあっさりと抜かれ、再度視線を合わせてから溜め息を吐き出すクウヤとセキ。
そして、まだ笑い続ける夜をクウヤが肩に担ぐと、目前まで近づいた船に向かって足を進めた。




