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セーラー服と絆創膏  作者: 柚月
セーラー服と嵐
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セーラー服と嵐・4

何故そんな行動に出たのか。

セキの姿を唖然と見送ったクウヤは、目を見開いたまま硬直した。


「、・・・な、んで、」


敵意こそあっても、助ける道理は何もない。

まして荒れ狂う海の中へ、縁もゆかりも、情すらも沸く時間などありはしない人間を助けに飛び込むだなんて事は、到底想像もしていなかったのだ。


「すこし、」

「あ?」

「すこしだけ、アイラににてるから。」


あの男はきっと、その理由だけあれば命を捨てる。



轟音に近い嵐の中、どこか悲しそうなクロの声が静かに響いた。



ーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーー

ーーーーー



場所は変わって、其処は荒れ狂う海の中。

飛び込んだセキは、うねり、渦を巻き始めた波の中を夜を探して泳ぎ進んでいた。


何で、こんな事をしているのか。


不意に思い浮かんだ疑問に、セキは自分自身に向けて嘲笑を浮かべた。

そして改めて目を凝らし、薄暗い海中を見渡す。


探すのは、たった一人の少女。

それがどれだけ至難な事かなどセキは身をもって知ってはいたが、それは諦める理由になどはならなかった。



否、無意識に動く体を止める術を、セキはもっていなかったのだ。



その、時だった。


「っ・・・!!!」


波間の僅かな隙間に、微かに光った何か。

それを目にしたセキが全速力でそちらへ近付けば、だんだんと鮮明に見えてきたのは波に弄ばれながらも水面に浮かぶ華奢な体。


「夜ちゃん!!!!!」


叫んだ声は、嵐を切り裂くように響いて。

けれど反応しない体に、一瞬で血が冷たくなったような感覚に陥った。


近付こうにも波が邪魔をして中々近付けずにいるセキを嘲笑う様に沈んでいく夜の体。




もう、なにふり構ってはいられなかった。



冷えた血を沸騰させるかのように全身に力を込めたセキは、


"人間では"あり得ない程のスピードで、沈んでいく夜の腕を掴んだ。



ーーーーーーーーーーー


ーーーーーーー

ーーーーー


「っ、け、ほ・・・ッ」


どれくらい経ったか。

急に肺に空気が入った事で噎せた夜は、重い瞼をゆっくりと開けながら意識を取り戻した。


「生きてるか?」


不意に掛けられた声は間近から聞こえて。

覚醒し始めた頭で現状を理解し出した夜の視界の一面には、セキの顔。


「セキ、さ・・・?」


名を呼べば、安心したような笑顔を浮かべたセキ。

それに夜自身も安心したのか薄く微笑みながら、自分の身に起こった事を思い出した。



荒れ馬のように激しく揺れた船上。

気付いた時にはもう体は宙を舞っていて、直後叩き付けられた海面。

衝撃で息さえ出来ず、開けた口からは容赦なく海水が流れ込んできて。



死ぬ、と



思った、その時。


『夜ちゃん!!!!』


名を呼ぶ声が聞こえて。

けれど体は波に飲まれ、瞬く間に海面が頭上へと遠ざかり。


そして、

そして、



「手、を、」



強く強く、決して離さぬ様にととにかく強く


「握って、」


くれたのは、



「セキさん、だったんだ。」


ありがとうございました、と言った声は嗚咽で震えて涙で掠れて。


今さらカタカタと震え出した体を、セキは思わず抱き締めた。



「そんな声で、礼なんざ言うんじゃねぇよ。」


ヤバい、ヤバい、ヤバい。


堪らなく、守りたくなるじゃねえか。



そんな言葉を、セキは飲み込んだ。


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