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セーラー服と絆創膏  作者: 柚月
セーラー服と嵐
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セーラー服と嵐・2

夜が借りているクロの船室まで戻ったのはそれからすぐの事。

いつの間にか片付けられていたその部屋に入った夜は、小さく微笑みを漏らした。


「クロさん、かな。」


たぶんそうだろう。明日ちゃんとお礼しなきゃ、と思いながら、ベッドに横になる夜。

目を閉じると、甲板の方から聞こえてくる騒ぎ声が妙に心地よく。

それを子守唄に、夜はゆっくりと眠りに落ちた。



ーーーーーーーー

ーーーーー

ーーー



クークー、と。

カモメのような海鳥の鳴き声を感じて夜が目を覚ましたのは日が昇り始めの早朝。

まだ僅かに薄暗い中、寝惚けた目を擦りながら体を起こした夜は辺りを見回しながら状況を思い出す。


「・・・、」


ああ、何だか色々あったな。

夢かと思ってはみたけど、夢じゃないみたいで。


夜はベッドから起き上がって着替えると、覚えのある廊下を歩きながら甲板へと向かった。


「皆、いつまで騒いでたんだろ・・・」


でも流石にもう寝てるよね、なんて思いながら甲板へと繋がるドアに手をかけた夜は、半分ほどドアを開けてから静かにそのドアを閉じた。


「・・・うん、ダメだこの大人達。」


溜め息を吐き、もう一度ドアを開けてみても結果は変わらず。

そこには酔い潰れ雑魚寝する、恐らく全乗組員であろう男達の姿があって。


酒樽に抱き付く者、大の字で寝転がる者、更には互いの襟首を掴み合ったまま寝ている者さえもいる。

その光景に呆れて苦笑いを漏らした夜に、ふと聞こえた一つの声。


「く、っそ・・・飲み過ぎた・・・」


頭痛ぇ、と呻くその声は、聞き覚えのある男の声。

その声が聞こえる方へと夜が静かに近付けば、やはり想像通りの人物が頭には手を当てながら険しい顔で壁に寄り掛かりながら立っていた。


「あー・・・クソ、ッ」

「どんだけ飲んだんですか、セキさん。」

「あ゛?」


夜が困ったように笑いながら声を掛けたのはその直後で、まさか誰かがいるなんて思っていなかったセキは思わず表情を固まらせた。


「お前、何して・・・」

「流石に早く寝ましたからね、早起きしちゃいました。」

「いや、そうじゃなくて、」

「え?」

「だから・・・っ」


声を荒げられて目を丸くした夜。

それに気付いたセキは慌てて言葉を止めて、それから夜に近付くと夜を見下ろしながら小さく呟くように言葉を続けた。


「怪我は、その・・・痛くねぇのかって」


そう聞いてんだよ。


苦虫を噛み潰したような顔で絞り出した台詞に、夜は一瞬唖然として。

それからくしゃ、と笑みをはっきりと顔に滲ませてから頷いた。


「サラクさんのおかげで、もうバッチリ平気です。」

「・・・そうかよ。」


ぷい、と顔をそらしながらぶっきらぼうに言うセキに、夜は更に笑みを深くして。

それが気にくわなかったのか夜を睨み付けたセキだったが、次の瞬間には夜の笑顔に怒気を抜かれてしまって。


「お前、あんまりそんな無用心な顔してんじゃねぇぞ。」

「無用心、て・・・?」


意味が分からず首を傾げた夜に、セキが盛大な溜め息を吐きかけた、その時。




「あれ・・・?セキさん、アレ何ですか?」




朝霞の海の彼方。

僅かに見えた影に夜が気付き、セキに問いかけたその刹那の事。


凄まじい衝撃と共に揺らいだ船。


「っ、っ・・・!!!??」


夜が堪らず体を床に投げ出しそうになり、衝撃に備えて目を閉じる。


と、


「っぶねぇな・・・ッ!!」


とん、と。

軽々と抱えられた体はあっという間にセキの肩に担がれて。

いきなりの事に目を白黒させる夜を横目に、セキは仲間達が雑魚寝していた甲板へと駆け足で向かった。


「野郎共!!!!敵襲だ!!!!!」


空気を切り裂く、怒声。


その声に慌てて飛び起きた船員達は各々の配置へと駆ける。


「大丈夫か、夜ちゃんよ。」


それを見てから夜に声を掛けるセキ。

夜は訳も分からず首を縦に振りながら、視界にはっきりと映る所まで近付いてきた一隻の船を見た。


「・・・鳥?」


高らかに掲げられたその船の旗には、何らかの鳥を象った紋章のような絵が入っていて。


それを口にした夜に反応したセキは、己もその船の旗に視線を移してから抑揚のない声で吐き捨てるように呟いた。


「っ・・・海軍かよ・・・ッ!!」


その声に、夜が聞き返すよりも早く。

夜の体は床に下ろされ、まるで背に庇われるかのようにセキの後ろに追いやられ。


そしてセキは、夜ではない人物に声を掛けた。


「てめぇも暇だろ?ちょっと手ぇ貸せよ、獅子王。」

「お前が俺に頼み事かよ。」

「どうせ負けりゃてめぇも道連れだ。夜ちゃん守りたきゃ気張れや。」

「は・・・っ、上等だ。」


夜の目に映るのは、獅子と鬼の後ろ姿。

相対している時は恐怖さえ感じるそれも、肩を並べればとてつもない安心感を与えてくれて。


その背を見ながら、夜はなんとか自分の足で踏ん張りながら立ち、そして向かい来る"敵"・・・即ち、海軍と呼ばれた船を見据えた。



そして間もなく、


戦闘の開始の号砲が、高らかに鳴り響いた。


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