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セーラー服と絆創膏  作者: 柚月
セーラー服と海賊
29/50

セーラー服と海賊・17

「ねー、クウヤ君クウヤ君。」

「んぁ?」

未だに顔を向けないどころか顔を隠すために夜の居るベッドの布団に顔を埋めたクウヤに、夜が声を掛ける。

それに声だけ返すクウヤに夜は思わず笑いながら、更に言葉を続けた。

「セキさんって、昔っからの知り合い?」

「あー・・・」

「何だよ、歯切れ悪いな。」

「まぁ、あんまいい話じゃねぇんだよ。アイツとの関係っての。」

「・・・・・・ありゃ、答えてくれるとおもわなかった。」

聞いたものの返答が返ってくるとは思っていなかった夜は、驚いた声を上げて。

それに苦笑しながら顔を上げたクウヤは手を伸ばして夜の頭をぐしゃっと撫で、それにはにかみながら顔を赤面させた夜。

「何でみんな頭を撫でるのさ。」

「何でって、お前がンな可愛い顔するからだろーが。」

「・・・、またそーゆーこと言う。」

「本音。」

目を細め、片方の口角を上げるその顔は正しく妖艶。

色を帯びたその顔を見た夜はとても平常心ではいられない。

慌てて顔を反らした夜に気付いたクウヤは、ぎし、とベッドに手を付けながら夜に近付いて。

「夜?どうしたんだよ?」


低い声。

腹の底に響く、深い重低音。


ぞく、と背筋に走った寒気にもにた感覚に、夜は堪らず肩を竦めた。

「っ、や・・・っ」

「よーるちゃん?」

「ぁ・・・ッ、」

追い討ちを掛けるように声を掛けるクウヤ。

夜は更に体を硬直させるが、クウヤはお構いなしに顔を夜の方へと近付ける。

「こっち向けよ。」

ぐいと肩を掴まれ、振り向かされたその顔は面白い位に真っ赤で。

悪戯心が疼いたんだろう、クウヤは更に顔を近付けた。

「あんまり可愛い顔してると、」


何するか分かんねぇぜ?


口元の笑みを見ればからかっている事は分かるはずだが、今の夜にはそんな余裕すらなく。

思わず、本当に思わず、小さな声を漏らした。


「何で何度もこんな目に・・・っ」


ぴたり、時が止まったのはその時。


「・・・え?」

夜が不思議に思って声を出しクウヤの顔を見た瞬間、夜は堪らず凍りついた。


「・・・何度も・・・?」


からかうために出していた声とはまるで違う、恐ろしい殺気の篭った低音。

夜が驚く暇も与えず、クウヤは夜の体をベッドに沈めるとその上に覆い被さった。


「何度も、って?」

「っ、ひ、・・・ッ」

耳元に近付けた唇で、同じ低さのまま問いかけるクウヤ。

恐怖と焦りで悲鳴に近い声を夜が上げても、クウヤは一向に退こうとさえしない。

「答えろ、夜。」

その声には、その目には、明らか過ぎる程の怒りの色。

それを流石に感じ取った夜は、首を横に振りながら言ったことを否定しようと声を上げた。

「ち、ちが・・・っ、あの、ッあれは・・・っ」

「あれ?あれって何だよ。」

売り言葉に買い言葉。出てくる台詞は全て状況を悪化させていく。

どうしようもない恐怖で喉元までも震わせる夜は声を発する事さえも困難になって、それを見たクウヤが知っている限りの名を上げ出した。

「クロか?・・・船医?それとも、あのガキか?・・・・・・それか、」


セキ、か?



その名を聞いた瞬間、思わず跳ねた夜の体。

真実を見透かそうとする目に誤魔化しなんてまるで効かず、確信を持ったクウヤは殺気をその金の目に色濃く滲ませた。


「ちが、ちがう・・・っクウヤ、あのね、」

「庇うのかよ?」

「そうじゃなくて・・・!」

「・・・なぁ、夜、」


俺はそんな、出来た人間じゃねぇんだよ。


自分のモノでもない女に向かって嫉妬心を燃やす己に、心のどこかで嘲笑していた。

けれどそれすら抑え込んで、溢れんばかりの憎悪が胸に沸いてくる。


低い声と共に近付けた顔は、もう僅かしか距離を開けてはいなかった。

至近距離で見る夜の目には涙の膜が張っていて、怯える口元は震えてさえいる。


それに、浮いた罪悪感。


けれど同時に憎悪を抑えこめれないと気付いていたクウヤは、夜の顔の横に勢い良く拳をめりこめせた。


「っ・・・ひ、ッ」


上がったのは悲鳴。

溢れたのは涙。

聞こえたのは、嗚咽。


「夜・・・夜、」


守りたいと言った自分が、どうしてこの子を泣かせているのか。


夜の泣き顔に僅かに冷静さを取り戻したクウヤは、自分さえ泣きそうな顔をしているのにも気付かずにそのまま硬直した。


その時だった。


「・・・トチ狂ってんじゃねぇよ!」


怒声に近い声が聞こえて、それに反応するが早いか夜の上から吹っ飛ぶクウヤの体。

勢い良く飛んだそのままに体は壁へとぶつかり、置かれていたランプなどを巻き込んで凄まじい音を立てて床に落ちた。

「、っ・・・!?」

「ガキか、てめえは。」

夜が上体を起こして目を見開いたのは、そこに居たのがセキだったから。

吹き飛ばされたクウヤも、おそらく蹴られたんだろう腹部を押さえながら壁に寄り掛かって座った状態で体を起こしながら、セキの方を見て僅かな驚きをその目に湛えていた。


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