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セーラー服と絆創膏  作者: 柚月
セーラー服と海賊
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セーラー服と海賊・12

暖かい、というんだろうか。

胸の奥がまるで日だまりのようにぽかぽかするのを感じたのは、たぶんクウヤやサラクだけではない。


「モテモテね、このお姫様は。」


ふと呟いたサラクの声が聞こえたクウヤは、すかさずサラクを睨み付けて。

あら、ごめんなさいね。なんて言う顔には少しも謝罪なんて含まれてはいない。


「手ぇ、出すんじゃねえぞ」

「あら?アンタのモノじゃないでしょう?」

「女男がふざけた事ヌかしてんじゃねえよ。」

「残念。私、女の子が大好きよ?」

「・・・あ"ぁ?」


火花が見えないのが不思議なくらいの牽制の応酬。

間に挟まれた夜は内容さえ理解は出来ないものの、その殺気さえ感じるやりとりに思わず逃げ出そうかなんて考えていた。


その時。


「あの、」


おどおど、話しかけてきた勇者が一人。


「サラクさん、その子、すげー怯えてるんスけど・・・」


うわ、神だよ神!あーもうありがとう!


なんて、そう思ってるのが目を見ただけで分かるような視線を夜がその声の主に向ければ、目があったその人は可哀想なものを見る目になって。


「俺、部屋まで連れてきますか?サラクさん徹夜してて疲れてると思うし、獅子王に自由に動き回られるのも気に入らねーっスし。」


見た目は夜と同じか僅かに上くらいの年だろう。

黒の短髪をバンダナで押さえつけ、活発そうなつり目の少し下に出来た傷が更にやんちゃそうな印象を与えてくる、少年、と呼べる位のその人物は、へら、と笑ってサラクの腕から夜を救出する。


「っと、悪いねお嬢ちゃん。女の子の扱いなんて知らないから、ちょっと乱暴になっちまうかも。」


相変わらずへらっと笑ったまま、少年は夜を抱き上げた。


「ちょっと、カイ?なーにしてくれてんのよ。」

「なんか、ラチあかないんスもん。とりあえず、この子休ませてやってからでもいーじゃないスか。」


ね?なんて少年らしい悪戯な笑顔を浮かべたカイと呼ばれた少年の顔を見てしまえば、さすがのサラクも何も返せなくなって。

それを確認したカイが歩き出そうとすれば、今度はクウヤが声を上げた。


「・・・夜を、離せ。」

「船に乗ってる間は、俺らが強ぇよ?何にもしねーけど、何かするってなら保障はしねーし。」

「っ、てめえ・・・ッ」

「俺らはアンタには何にもしねーよ。頭に怒られたくねーし?だから、大人しくしとけって。」


言って、返事も待たずに歩き出したカイ。

抱き上げられた夜はちょうどクウヤと目が合う方向を向いていて、今にも飛びかかりそうなクウヤに気付いて慌てて声を掛けた。


「だいじょーぶ、だよ。いざとなったら私もそれなりには暴れられるから。それに、」


それに、さ、


「危なくなったら、頼りにしてる。」


今はまだ大丈夫。だと、思う。

だけどいざとなったらよろしく。



落ち着かせようとしたものなのか、意識してやったのかは分かりはしないが、それでも夜は、安心させるかのようににこりと笑ってクウヤに手を振った。


「強い子ねー。」

「・・・・・・・・・・、」

「あそこまで言われちゃ、今はもう何にも出来ないじゃない、ねぇ?」

「・・・・・・・」

「ちょっと、聞いてんの? 」

「・・・・うっせえよ。」


何度、守られてるのか。

何度、守れないのか。


守ると、言ったのに。



悔しさに、情けなさに、苛立ちに、


握った拳が小刻みに震えて。



それを察したサラクは、スパン、とクウヤの頭を平手で軽く叩いてから歩き出した。


「ホラ、アンタも手当てしてあげるからいらっしゃい。傷だらけのアンタ見たら、お姫様は悲しむわよ?」



別にそれは、クウヤを心配しての台詞ではなく。

ただ、夜を想っての言葉だった。


それに自身で気付いたサラクは堪らず自嘲気味な笑みをその口に湛えながら、後ろからクウヤがついてきている気配を感じながら歩みを進めた。



-------

-----

---



「にしても、お前スゲーな。」

「ぅ、え?」

「だって頭と獅子王の殺り合いだぜ?俺、ぜってー近付きたくもねーもん。」

「私だって近付きたくはなかったですよ。でも、」

「あ、それヤメて。」

「え?」

「敬語。慣れてねーから。気持ちわりー。」


うぇ、と吐き出すようなジェスチャーさえするカイに、夜は思わず吹き出して。


「なんか、話しやすい人だね。」

「どーも。しっかし、ホントお前スゲーよ。だって、俺ら海賊よ?しかも頭にふっ飛ばされといてその仲間と笑って話すか?フツー。」

「だから、」

「いや、聞いてたけどさ。恨んだり疑ったりしねーって。でもそれ、フツーできねーって。」

「できるよー。」


てか出来てるつもりだけど、どう?


悪戯っぽく言って笑う夜に、カイは一瞬だけ間を空けてから爆笑。


「ぶっ・・・はははっ!!!おま、おもしれー!」

「ちょ、失礼すぎる!」

「しらねーよ!はは・・・っやっべ、腹いてー!」

「カイ君、カイ君、私も傷付く心は持ってるよ?」

「うわ、君とか気持ちわりーって。いいよ、呼び捨てで呼べよ。俺もそーすっから。」


ニカっと笑う眩しい程のその笑顔に、夜は困ったようにだが笑みを返す。


「こっちの人は強引だー。」

「女々しいよりマシじゃね?」

「しかもみんな格好いいよー。」

「お?俺も?俺も?」

「ついでに図々しいよー。」

「貰えるモノはなんでも貰えがモットーですー。」

「わぁ、前向きー。」


同じ位の年端だからか、話しやすさに会話も弾む。

カイも同じなのか、次々と出てくる言葉の掛け合いを楽しんでいた、その時だ。


「カイ、何騒いでやがんだ。」


不機嫌絶頂な、低い低い声。


思わず会話は止まり笑顔は凍り。

ぎぎぎ、と音が出そうな首を必死にそちらに向ければ、正しく鬼の形相のセキが壁に寄りかかりながらこちらを睨んでいた。


「カイ、その女、ちょっと貸せ。」

「い、いやー、夜、ケガしてっし、休ませた方が・・・」

「カイ。」

「っ・・・、よ、夜、わりー・・・」


ひきつりながら、小さく謝ったカイ。

震えながら夜をセキに渡すと、カイはその場に立ち尽くす。


「・・・、カイ、だいじょーぶ。」

「え・・・?」

「何かあったら、大声出す。」


ニンマリ笑う夜に、カイははっと弾かれたように顔を上げて、一礼してから足早に踵を返して駆け出した。



「で、何か、用事、ですか?」


しまった、強がった。

気付いたのは、自分の声が上擦ったから。


睨み、攻撃されるように殺気を飛ばされたら、そりゃ誰でも多少なりと怖い訳で。


自分を支えていたセキの手から離れる為に己の手を突っ張って、距離をとる夜。

背中を壁に預けながら、それでも負けないように、とセキの目を睨み返した。



「・・・気に、入らねぇな。」


小さく呻く。


その声が聞こえるか聞こえないかの刹那、夜の体は容易く抱き抱えられ、



ある部屋に、連れ込まれた。


「ようこそ、夜チャン」


俺の部屋へ。




流石に、体中の警鐘が鳴り響いた。





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