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セーラー服と絆創膏  作者: 柚月
セーラー服と海賊
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セーラー服と海賊・11

そのあまりの声に、夜は思わず肩を跳ねさせた。


怒り、よりも、何か焦りさえ感じさせるようなセキの怒声。

恐る恐るそちらに視線を移せば、烈火のような炎を湛えた目が夜を見ていて。


「セキ、」


唯一、だろう。

セキの様子から何かを察したクロが、ゆっくりセキに近付くとその肩を押さえた。


「おちつけ。」

「、るせぇよ・・・っ」


その手を払い除けたのはその瞬間で、弾かれた手に目を見開いたクロ。

しかし動揺など欠片しか見せず、クロはもう一度セキの肩を片手で押さえた。


「セキ。」

「っ、」

「みんなのまえで、とりみだすな。」


それは確実な言葉だった。

肩で息をする程に感情を露にするセキに、部下たちの顔には一様に動揺の色。


ちっ、と忌々し気に舌打ちしたセキは、苛立ちは未だ露にしたままで踵を返した。


「あ、」


と、不意に声を上げたのは夜。


ぴた、とセキの足は止まり、声につられて夜の方に視線を向ける。


「・・・あの、」


言いたいことが分からなかった。

けれど思わず言葉が漏れたのは、セキの言葉が、視線が、全て自分に向けられていない気がしたから。


「あの、」


だけど、何を言ったらいいのか。



勢いで声を上げたものの口ごもる夜に、セキは再び聞こえるように舌打ちをした。


「もっかい、蹴り飛ばされてーのか?夜チャンよぉ・・・」


睨み、威嚇し、再度背を向ける。

夜はもうそれ以上何も言えなくなって、口をつぐんだ。


そして去っていく背中。

追い掛けるように、クロもその後を追う。


「・・・ったく、ガキねー。」

「え?」

「アレでも、気にしてんのよ。流石に、平気で女の子に全力で手を上げるようなゲスじゃないわよ?うちの船長は。・・・あー、手じゃなくて足だったっけ。」



まぁどっちでもいいじゃない、なんて一通りをスラスラと言ったサラクは、腕の中の夜に優しく微笑んだ。



「ごめんなさい、って言うの、苦手なのよ。昔っから。」

「・・・ふ、ふっ」

「なぁに、どうしたの?」

「サラクさんもクロさんも、セキさんと仲良しなんですね。」


だって、二人とも何を話しててもセキさんのフォロー、絶対入れてくるんだもん。


「セキさん、幸せですね。」



こんなにこんなに想ってくれる人って、人生でそうそう会えないですよ。




なんて。

クスクス笑って言う夜にサラクは勿論、周りの海賊達さえも絶句。


近場にいたクウヤもそれは例外ではなく、深々と溜め息をもらしてから、ぐに、とよるの頬を強めにつねった。


「っい・・・ッ!!?!?」

「お前、ホント頼むからもう少し危機感とか自己防衛とか働かせてくれねぇ?いや、ホント、マジで。」

「ふぇ?」

「何で?恨まねぇし怒らねぇし、責めねぇし怖がんねぇし・・・何でもかんでも、何ですぐ受け入れられんの?」


例えば自分がどれだけ傷付いたとしても、この子は笑う気がしてしまう。

例えば自分がどれだけ裏切られても、もしかしたらこの子はまた信じるのかもしれない。


分からないけど、そんな気がするんだ。



それが、ただ、ただ、怖くて。


「お人好しも大概にしとけよ。」


頼むから。



泣きそうな震える声に、夜は一瞬目を見開いて。


それから、


また、笑った。




「信じるのは、難しい。疑うのは、簡単。」


どっかで聞いたような言葉に、確かに間違いはない。



「信じて裏切られるとダメージおっきいけど、疑ってればダメージはゼロ。」


それは間違いじゃないし、それで守れることの方がよっぽど多い。


「でも、」


でも、さ


「信じてもらえないの、悲しいじゃん。苦しいじゃん。私、それが怖くて怖くて仕方ないよ?」


それは、きっと私だけじゃないはずで。


きっときっと、みんな同じはずで。


「同じなら、少しでもそんな思いするのはなくしたいじゃん。自分でも他人でも、そんな思いしたくないじゃん。」



だから、出来る限りは頑張るんだ。


「だから、出来る限りだけど恨まない、怒らない、責めない、怖がらない、」



出来る限り、


「受け入れたい。」



ただの願望。

ただの理想。



だけど頑張りたいんだ、と。

夜は真っ直ぐクウヤを見てそう告げた。


それにクウヤは何も返せず立ち尽くして。

それから、泣きそうな顔を必死に笑い顔にした。



「馬鹿、じゃねえの?」



ああ、そうだ。


俺は、この子の、そこに惹かれたんだ。



無垢な笑顔に、差し出してくれる手に、その暖かさに。


思い出して込み上げるのはただの愛しさだけで、クウヤはつねった夜の頬を優しく撫でた。


「バカ野郎。」

「何回もバカバカ言われると流石に凹むんですが。」

「うるせえよ、馬ァ鹿。」

「わぉ、無視だー。」


そんな様子を見ていたサラクは、気付かれないように苦笑を漏らした。




「・・・あー、もー、」


多分、


いや、きっと、


「アタシ、駄目ねー。」



熱を帯びた胸とその鼓動に何かを察し、クウヤにはばれないように、夜を抱き止める腕に力を込めた。


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